アンドレア・カルダレッリ率いるFFFレーシングが活動終了を発表

 ランボルギーニのGTマシンで数々のタイトルを獲得してきたFFFレーシングの活動終了が、同チームのソーシャルメディアで明らかにされた。

 中国人実業家であるフー・ソンヤンがオーナーを務め、アンドレア・カルダレッリのACMグループが運営してきた同チームは、アジアのGT3シーンから飛躍し、ヨーロッパにおけるランボルギーニのトップチームのひとつへと上り詰めていた。

 そのもっとも顕著な成績は、2019年にカルダレッリとマルコ・マペッリによりGTワールドチャレンジ・ヨーロッパのエンデュランス、スプリント、そして複合でのドライバーズタイトルを独占したことである。

 また、2018年のGTWCアジアと2019年のGTWCヨーロッパ/スプリント・カップのプロ/アマ、2020年のロード・トゥ・ル・マン、2019年のFIAモータースポーツ・ゲームスを、日本からのエントリーにより制している。

2020年ル・マン24時間のサポートレースとして開催された『ロード・トゥ・ル・マン』のGT3クラスを制したアンドレア・カルダレッリと濱口弘

 FFFは2021年シーズンを最後にGTWCヨーロッパでの活動をいったん休止、その後のGT3レースへの復帰を意図していたが、それは恒久的な活動停止へと変わってしまった。

 同チームはまた、ランボルギーニ・スーパートロフェオ・ヨーロッパに1年間参戦し、そこではモトGPライダーのダニ・ペドロサを含む複数のマシンを投入していた。

 チームのソーシャルメディア上の声明は以下の通りだ。

「これは素晴らしい旅だった。おかげで、我々はとんでもない結果を達成することができた。我々はすべてのスティント、すべてのラップ、すべてのコーナーを楽しんだ」

「レース活動の終了発表に際し、ドライバーからエンジニア、メカニックからファンまで、これまで我々を支えてくれたすべての人に感謝したい。あなた方は、より野心的な目標に向かって後押しすることで、我々をサポートしてくれた」

「最高のライドだった。我々と同様に、みなさんも楽しんでいただけたなら幸いだ」

■「複数の要因からの決定」とカルダレッリ

 共同創設者で、チーム代表も務めてきたカルダレッリは「これは複数の要因からの決定だ」と語っている。

「チームはフー(・ソンヤン)の所有で、僕らは2014年にチームを設立した。僕らの目標は、どのプログラムにおいても、常にファクトリーからチームをバックアップしてもらいたいということだった」

「ランボルギーニ内には、短中期的な将来において、僕らのためのスペースがないことがなんとなく分かった。だから、今年の1月1日でチーム運営を終了することにしたんだ」

「僕自身はLMDhにおいて多くのレース活動に深く関わっていくことになるし、(FFF)チームの日常運営において僕の存在が非常に重要であることも分かっていた」

「僕としては、かなりハードになり始めたんだ。それも大きな要因のひとつだ。活動停止は、複数の要因による決断だったと言える」

 カルダレッリは、ミルコ・ボルトロッティ、テストドライバーのロマン・グロージャンとともに、2024年のランボルギーニLMDhプロジェクトに参画することが決まっている。カルダレッリは、FFFが将来的にランボルギーニとのプログラムを「拡大したい」と考えていたと述べたが、契約には至らなかったという。

 なおランボルギーニは、WEC世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権で2024年に始まるLMDhプログラムに向け、アイアン・リンクスとパートナーシップ契約を結んでいる。

 カルダレッリは、「この決断は、LMDhプログラム(の提携先確定)によるものではないと思う」と示唆した。

「2021年から2022年の間に起こった多くの出来事の結果、僕らは近未来のプログラムを組み立てることができなかったのだと思う。今後3年の間に何か面白いことがなさそうならば、僕らは何かを始めることを検討しないことになっていたんだ」

「他のマニュファクチャラーに行くのは嫌だと判断したんだ。FFFが入り込む余地が(ランボルギーニ内に)ないとなったら、活動を続けることはできない」

「ここ数カ月間、(ランボルギーニのモータースポーツ責任者である)ジョルジオ・サンナとずっと話をしていた。僕がこの(LMDh)プログラムの重要な一員である以上、僕の努力を分割し、ひとつのことにのみ集中するのはフェアではないと思うんだ」

2024年のランボルギーニLMDhドライバーに選出されたアンドレア・カルダレッリとミルコ・ボルトロッティ

 カルダレッリによれば、FFFのスタッフには事前に運営停止が通達されていたという。FFFが2021年末にGT3から手を引いた際、メンバーの一部はGTWCヨーロッパのパドックで別のチームへと移っていた。

「僕らは常にメカニック、エンジニア、オフィスの人々と非常に密接な関係を保とうとした」とカルダレッリ。

「突然の決断ではない。一夜にしてこうなったわけでもないんだ。僕らは事前に彼らに知らせ、彼らが継続し、ランボルギーニファミリーに広まるよう手助けもしようとした」

 カルダレッリはFFFでの日々を振り返り「これは、文字どおり1日で作り上げたものなんだ」と語った。

「僕とミスター・フーとで車に乗っているときに、ゼロからやってみようと思ったんだ。それまで、そんなことはしたことがなかった。当時、僕はトヨタのファクトリードライバーで、毎日レースをしていたわけではないので、自由な時間がたくさんあったんだ」

「本当にゼロからのスタートだった。この短期間で成し遂げたことは、いい思い出になると同時に、僕やみんなに多くのことを教えてくれた」

「経験や知識というのは、長い時間をかけて蓄積されるものだ。だから、あの短い期間に多くのことを成し遂げられたことをうれしく思う」

「チーム内の雰囲気は、いつもとてもよかった。誰もが同じモチベーションを持っていた。また、ヨーロッパに戻ったときにサポートしてくれたオレンジ1のように、多くの協力者やパートナーの存在もあった。それは、パズルの重要なピースのようなものだった」

「僕らにとっては初めてのことだったけど、最初から信頼関係で成り立っていた。だから、それを実現できたことを誇りに思う」

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