世界的健康ブームは「トイレテック」と「脳テック」 “自称健康マニアアナ”が見た世界最先端テクノロジー⑤

トイレがあなたの健康をチェック

あなたのオシッコを毎日、分析します―。トイレが自動で健康検査してくれて、結果がスマホに届くとしたら、あなたは利用しますか。世界最大のイノベーション展「CES」を見た自称・健康マニアアナウンサー牧野克彦がリポートします。

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約90秒で結果が出るそうです

来るか、トイレテックブーム

今回目立ったのが、トイレとテクノロジーを掛け合わせた「トイレテック」。アメリカやシンガポールなど、さまざまな国の企業がブースに便器を置いてPR。米・サンフランシスコのVivoo(ビブ―)社提案のトイレは、便器の前に小型の分析器がついており、オシッコをした後、90秒待つと尿内の成分が分析され、結果と健康のため為のアドバイスがスマホに届くそうです。

年間契約で1か月あたり利用料20ドル(約2,550円)程度という「健康のためなら」と思わせる絶妙な設定。結果報告と一緒にサプリメントの購入を促すなど企業にとって収益を得るポイントが複数仕掛けてあります。

尿検査は多くの不調を知ることができる大切な検査なので、自宅で日常的にチェックすることで、発症前の小さな異変を発見できるといいます。商機を見た世界各国の企業がこの手の商品開発を手掛けはじめていて、今後大きな「トイレテック」ブームになりそうです。

微弱電流が脳のトラブルに働きかける

もう一つのブームは「脳テック」。デジタルヘルス分野で勢いがある韓国の「Ybrain」は、微弱電流を脳に流して鬱病・頭痛の改善・脳のリフレッシュを行うという額に付ける電極等を展示していました。すでに韓国では医療機器として実用化されていて、今後ドイツ、アメリカでの展開予定があるそうです。

私も着用しましたが、想定以上に強い電流が頭に流れ、思わず叫んでしまうほどでした。電気風呂に入った時と似た「ピリピリ」感を脳の周辺だけで感じるという不思議な感覚です。時差ボケの頭が15分ほどでスッキリしましたが、この感覚は好き嫌いが分かれそう。同社は今後、記憶力向上など教育分野への展開も見据えているそうです。

脳波操り深い眠りへ

同じく韓国のLGは寝ている間の「脳波」をコントロールするカナル型イヤホンを展示。人間の脳波は眠りの段階によって、アルファ波やガンマ波などに変化しますが、段階に合わせた適切な音楽を流してより深い眠りへと誘い、睡眠の質を上げるそうです。

寝ている間も音を聴いていて、耳は疲れないのか心配になりますが、睡眠の視点ではいいとのこと。これまでデジタルヘルスといえば心拍数や血中酸素濃度を測る技術が多くありましたが、今後は脳へ働きかける技術が普及しそうです。

疲れた心をロボットが癒やす

コロナ禍の影響で心の問題を抱えてしまう人が世界中で増えていますが、日本発で注目されたデジタルヘルス商品もありました。ロボット開発のユカイ工学(東京)が博報堂、JTとともに開発した呼吸誘導型ロボットクッション「fufuly(フフリー)」。

CES2023イノベーションアウォーズを受賞したこの商品は、生き物同士が触れ合っているうちに呼吸が同調していく「呼吸の引き込み現象」に着目。ロボットクッションを抱えるだけでこの現象が人間に起きるそうです。

抱えるとクッションがゆったりとしたリズムで膨らみ、縮んでいきます。2~3分持っていると自然と自分の呼吸がこのリズムに同調、深く吸ったりはいたりするようになり、クッションの柔らかな抱き心地とともに心地いい感覚に包まれました。と、同時にロボットに人間がシンクロさせられてしまう現象に驚きました。

仕事の合間にこのクッションを抱えて「質の高い休憩」をしてもらいたいという想いが込められたこの商品、今年中にクラウドファンディングを実施したいとメーカー側は意気込んでいます。

精神的な問題は人との触れ合いでしか解決できないと思っていましたが、デジタル技術の進歩によってさまざまな選択肢が増えているようです。

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