夫の会社が家宅捜索で三浦瑠麗に説明責任 自分の会社と夫の会社のつながり、夫のビジネス「太陽光発電」を後押しする発言

「山猫総合研究所」HPより

「東京地検、三浦瑠麗氏の夫代表の会社捜索」──。昨日20日に報じられたこのニュースが、ネット上で大きな関心を呼んでいる。

報道によると、東京地検特捜部は三浦瑠麗氏の夫・三浦清志氏が代表取締役を務め、太陽光発電ビジネスを手掛ける投資会社「トライベイキャピタル」や自宅などを家宅捜索。共同通信は〈トライベイキャピタルの代表は、都内の別の会社の代表に兵庫県での太陽光発電所の建設計画を持ちかけ、建設の見込みがないにもかかわらず、出資金およそ10億円をだまし取ったとして、この代表から告訴されていた〉と伝えている。

この報道を受けて、清志氏の妻である瑠麗氏も自身が代表を務めるシンクタンク「山猫総合研究所」のHPでコメントを公表。〈私の夫である三浦清志の会社が東京地方検察庁による捜索を受けたという一部報道は事実です〉と認めた上で、〈私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないことではございますが、捜査に全面的に協力する所存です〉とした。

ご存知のとおり、瑠麗氏は『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)や『めざまし8』『ワイドナショー』(フジテレビ)などテレビでもおなじみのコメンテーター・論客であり、SNSや雑誌などでは華麗な日常を披露してきた。ところが、夫の会社が10億円の詐欺容疑で家宅捜索が入ったと報じられ、大きな話題になったようだ。

だが、今回の「10億円の詐欺容疑」については以前から、会員制情報誌である「ZAITEN」や「FACTA」、ニュースサイト「HUNTER」など一部メディアで取り上げられており、マスコミの司法担当者のあいだでも密かに注目を集めていた。

「今回、トライベイキャピタルが家宅捜索をされた兵庫県の太陽光発電所の建設計画をめぐっては、トライベイキャピタルと投資した会社の間ですでに民事訴訟になっていました。民事はトライベイが起こしたのですが、そのなかで、訴えられた投資会社がトライベイキャイタルを詐欺罪で刑事告訴すると宣言していた。そのため、一部のメディアは検察の動きに注目していたのですが……」(大手紙司法担当記者)

では、一体、トライベイキャピタルをめぐる「10億円の詐欺」疑惑とはどんなものなのか。

まず、三浦清志氏の経歴から振り返ろう。清志氏は東京大学教養学部を卒業し、外務省に入省。東大の4年生だった瑠麗氏と結婚した。2年で外務省を退職した清志氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーやベインキャピタルなどを経て、2014年にトライベイキャピタルを共同設立し、現在は代表取締役に就任している。

●三浦瑠麗の夫“太陽光発電所建設めぐる10億円詐欺疑惑”の中身とは?

今回の「10億円の詐欺」疑惑の発端は2019年に遡る。「ZAITEN」2021年10月号の報道によると2019年1月ごろ、トライベイキャピタルは前出の投資会社「META Capital」(以下、メタ社)に兵庫県福崎町のメガソーラー発電所への投資を勧誘。このとき、トライベイ側は「周辺住民の同意はほぼ取れている」「太陽光発電所の権利や土地の所有者とも話がついている」などと説明していたという。この勧誘を受け、同年6月、メタ社は関連会社を通じ、トライベイキャピタルが用意した合同会社「STC3」に10億円を出資。〈将来、出資の8割相当分をトライベイ社が10億円で買い戻す約束〉だったという(「FACTA」2021年10月号)。

だが、その後も開発は進まなかった。トライベイキャピタル側は発電所の土地や権利を所有する京都市の会社から権利を5億円で買い取る契約を交わしていたものの、2019年2月にこの契約はご破産に。土地の所有権は2019年2月末には大阪の業者へ移っていたというのだ。メタ社が10億円の出資をおこなったのは、契約解消から約4カ月後のことだ。

そして、土地の権利がトライベイキャピタル側の名義になっていないことをめぐり、2020年5月にメタ社とトラブルに発展。10億円の出資を受けた当時、トライベイキャピタル側はメタ社側に資金調達の手数料である1億800万円と、余剰資金の2億円を還流・返金しているが、開発が進んでいない現在も残りの約6億8000円はトライベイキャピタル側に流れたままだという。そのため、メタ社側が詐欺罪で刑事告訴し、今回の家宅捜索に発展したというわけだ。

これまでも、資金繰りが苦しくなった企業が追い詰められて、詐欺的な手口で融資を受け、立件されるという経済事件は結構あったが、経緯を見るかぎり、今回もその典型といえる。

しかし、一方で、前述したように、トライベイキャピタル側は逆に、メタ社に対して民事訴訟を起こしている。

「実際、検察は民事訴訟の決着がはっきりするまで動かないのではないかと言われていた。それが、いきなり特捜部が家宅捜索したということで、司法記者の間では、特捜部が何か決定的な証拠を掴んだのではないか、という見方が広がっています。しかも、メタ社は、昨年亡くなったソニー元会長の出井伸之氏が創業時から取締役に就いてきた会社で、元東京地検特捜部長である大鶴基成弁護士が顧問に務めている。そうした後押しもあって、本気で立件に向けて動いているのでないかと言われていますね」(前出・大手紙司法担当記者)

●三浦瑠麗と問題のトライベイキャピタルの関係は? 三浦瑠麗は説明すべき

今後、捜査がどのように進展するかは推移を見守る必要があるが、気になるのは、三浦瑠麗氏の姿勢だろう。

前述したように、瑠麗氏は〈私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないことではございますが、捜査に全面的に協力する所存です〉と述べているが、これで説明責任を果たせたといえるのだろうか。

もちろん、夫と妻は別人格であり、夫の経営する会社が犯罪をおかしていたとしても、その会社と何の関係もないのであれば、妻が謝罪したり道義的責任を感じる必要はない。

しかし、瑠麗氏の場合は、“なんの関係もない”と言えるのだろうか。

瑠麗氏は、〈平和のための課題に加え、内外の政治経済・社会問題の調査分析や政策提言〉(HPより)をおこなったり〈社会的な啓蒙活動を使命〉とするシンクタンク「山猫総合研究所」という会社を設立。現在はその代表者でもあるが、この「山猫総合研究所」の所在地は、問題になっている夫のトライベイキャピタルと同一の場所にある。

しかも、「山猫総合研究所」は、以前まで清志氏も代表取締役として名を連ねていた。登記では清志氏が退任したのは2019年3月となっているが、トライベイキャピタルがメタ社に出資を持ちかけたのは同年1月。つまり、今回特捜部が家宅捜索した案件が進んでいるときに、清志氏はまだ山猫総合研究所の代表取締役だったということだ。

また、前述した山猫総合研究所とトライベイキャピタルの同一の住所の現在のオフィスは、2018年12月に竣工。登記では山猫総合研究所が2019年3月1日に同住所に移転、つづけて同年10月31日にトライベイキャピタルが移転している。

2019年3月1日に開かれた「(株)山猫総合研究所代表就任&新オフィス披露カクテルパーティー」に参加した山本一太・群馬県知事(当時は参院議員)は、自身のブログで〈元外務省職員で、現在は投資ファンドの代表を務めるご主人にも、初めてお目にかかった。実物は、Facebookの写真より更にカッコ良かった!〉と綴っている。

さらに、清志氏が取締役を務める、エネルギー事業の企画・開発をおこなう「トライベイ」も所在地が同住所に登記されているだけでなく、やはり清志氏が代表理事となっていた「一般社団法人エネルギー安全保障研究所」も同じ住所が所在地となっていた。この研究所では、瑠麗氏の妹が理事に就任していた(同研究所は2020年末に解散)。

こうした接点を見ていると、両社は「無関係」というより、ファミリー企業かグループ会社的な関係だったような印象さえ受ける。いずれにしても、瑠麗氏は資本関係や経営者の重複も含めて、両社がどういう関係にあったかをきちんと説明すべきではないか。

●政府の有識者会議メンバーとして太陽光発電を後押ししてきた三浦瑠麗

もうひとつ、瑠麗氏には説明すべきことがある。それは、今回、問題になった清志氏のビジネスである「太陽光発電」について、瑠麗氏がそれを後押ししていたことだ。

本サイトでも指摘してきたように、瑠麗氏は2020年に菅義偉政権が新設した「成長戦略会議」の有識者メンバーに抜擢されたが、同会議で瑠麗氏は荒廃農地の太陽光発電への転用や規制の緩和など、太陽光発電の推進を強く主張してきた。

そのため、今回の報道を受けて、SNS上では「利益相反ではないのか」と指摘する声が上がっているのだ。

もちろん「原発から太陽光発電など再生可能エネルギーへの転換」は、まっとうな主張であり、それ自体には何の問題もない。しかし、ふだんは自民党政権の政策をアクロバティックな論理で無理矢理に擁護している瑠麗氏が、この政策については自民党保守派とはかなりズレのある主張をしているというのは、違和感をもたざるをえない。

また、仮に瑠麗氏が夫の事業と関係なく、太陽光発電への転換が正しいと考えていたとしても、瑠麗氏は報道番組や情報番組、新聞などで評論家として発言し、安倍政権以降、政権のブレーンとして重用されてきた。そんな人物が自分や家族が関係している事業をめぐる政策について一方的な発言することは、倫理的に考えてありえない行為だ。

もっとも、瑠麗氏のこうした責任は、マスコミで大きく取り上げられることはないだろう。いまや瑠麗氏はテレビはもちろんのこと、新聞でも朝日から産経までがご意見を拝聴している“大先生”。その倫理的な責任を追及することなんてできるはずもない。

それは、「週刊文春」(文藝春秋)や「週刊新潮」(新潮社)といったコワモテ週刊誌も同様だ。

「三浦氏は文藝春秋から多数の著書を出版しており、月刊誌『文藝春秋』の常連で、『文藝春秋digital』では三浦氏のオンライン対談イベントを主催するなど深い関係にある。また、『週刊新潮』では連載を持っているだけでなく、著書『孤独の意味も、女であることの味わいも』などの版元も新潮社。動くことはまずないでしょうね」(週刊誌記者)

メディアの動きはどうあれ、三浦瑠麗氏には説明責任を果たすことを強くのぞみたい。
(編集部)

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