長崎に新たなギャラリー 長与出身の洋画家・辻本さん開設 プロの作品発信、後進育成も

新しいギャラリーで語り合う辻本さん(左)と權藤さん=長崎市、Tol.GALLERY

 長崎を拠点に活動する洋画家の辻本健輝(けんき)さん(33)が今月、長崎市浜口町に「Tol.GALLERY(トル・ギャラリー)」を開設した。プロの画家が自身でギャラリーを運営することは比較的珍しく、ビルの小さな空間を生かし、多様なアーティストの魅力を発信できる場を作り上げた。プロの世界を目指す人々も支援していく考え。「実験的な段階だが、芸術に関する地域の課題を一つ一つ解決したい」と意気込む。

 辻本さんは西彼長与町出身。高校卒業後も県内で油彩画の研さんを積み、現在は国内外のギャラリーや展覧会で活動。絵画教室も主宰している。
 開設のきっかけは理想的な展示環境の不足感だった。市内には誰でも気軽に展示ができ、さまざまな人が立ち寄る魅力的なギャラリーがある一方、本格的な設備とプロの作家の作品販売を後押しするなど、高度な専門性がそろう場所がほとんどないように感じていた。自身も中央で少しずつ経験を重ねて人脈を広げた。「長崎出身で国内外で活躍するアーティストが展示場所に困るとも聞いた。自分が良いと思う人を良いと思う環境に呼びたかった」とする。
 そのために選んだ場所は約10平方メートルの一室。広くはないからこそ展示する人がたくさんの作品を用意する負担が和らぎ、見る人が作品に没入できると考えた。さらに作家の“色”を最大限に引き出すため、有志の協力で真っ白な空間に仕上げた。
 今月開いたトル・ギャラリー初の展覧会は、本県出身のアーティスト、ジュエリーデザイナーで、作品がパリコレクションで使用されるなど実績を重ねる權藤駿(ごんどうしゅん)さん(34)が、祖父母との温かな記憶を題材にした立体作品を披露。權藤さんは「これくらいの空間だと伝えたいことが明確に届けられる」と満足感をにじませた。
 今後はいろんな作家を招いて市民にプロのアートに触れてもらう機会をつくりながら、プロを目指す人々には貸しギャラリーとして利用してもらう。辻本さんは「自分で自分をプロデュースし、集客するのがアーティストだから」と後進の挑戦を後押し。「芸術への関心の低さなど地域の課題はあるが、長崎にゆかりのある作家と一緒に頑張ることで恩返しができるはず」と語った。
 所在地は同市浜口町3の11の2階。問い合わせは同ギャラリー(tol.gallery.ngs@gmail.com)。

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