400万の新車購入希望の43歳会社員男性「現金貯金が少ないがローンで買って大丈夫?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。 今回の相談者は、43歳、会社員の男性。400万円の新車を購入希望の相談者。月5万円のローンを組んでやりくりできると考えていますが、現金貯金は心もとない状態。新車購入は現実的でしょうか。FPの秋山芳生氏がお答えします。


すぐ使える貯金はほぼなし。それでも400万円の車をローンで買っても大丈夫なのでしょうか。

6年前に会社に大きなダメージがあり、手取りが200万円ほど減ったため、妻はパートに出たり、貯金を切り崩したりして生活しておりました。3年程前から以前くらいの手取りに戻りましたが、なかなか貯金はできませんでした。妻が2022年11月から正社員となり世帯合計収入が今後は50万円くらいになります。

そこで、車も10年になるので、400万円の新車に買い換えを考えております。納車の予定が8カ月後なのでそれまでに70万円くらいは貯めて、残りは銀行のローンで、6年払いの月5万弱の支払いになるようにしたいと思っております。うちの家計の状態で、老後、子供の進路などを考えた上で、月5万円のローンは身の丈に合ってないでしょうか?

【相談者プロフィール】

・男性、43歳、会社員

・妻50歳、会社員(2022年11月から) ・子ども 8歳

・住居の形態:持ち家(マンション・千葉県)

・毎月の世帯の手取り金額: 50万円(夫30万円、妻20万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:170万円(夫110万円、妻60万円)

・毎月の世帯の支出の目安: 41万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費: 8万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2万3,000円

・保険料:3万6,000円

・通信費:1万5,000円

・車両費: 4,000円

・お小遣い:1万円

・その他:10万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:4万5,000円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):15万円

・現在の投資総額:つみたてNISA100万円/終身保険(年払い保険料33万円、積立利率1.85%、あと6年で払込終了)現在400万円くらい/学資保険(月払い1万5,000円) 60万円くらい

・現在の負債総額:3,350万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの秋山芳生です。今回のご相談は43歳の会社員の方で、6年前に手取り収入が200万円減ってしまったそうです。8歳のお子さんが小学生に上がられて落ち着いてきたこともあり、年上の妻(50歳)は昨年の11月から会社員として働きにで始めました。

10年経過した自動車の買い替えで「新車400万円」を検討していますが「身の丈に合っているか」不安なご様子。自動車は“3大浪費”とも言われ、持っているだけでもお金がかかってくるものです。家計の状況、今後の教育費、住宅費などの他のライフイベントも視野に入れながら、「新車購入」が果たして現実的なのかどうかを一緒に考えていきたいと思います。

ボーナスの使途は赤字の補填??

まず家計の状況を確認していきましょう。

・毎月の手取り収入が50万円
・毎月の支出が41万円
・毎月の貯蓄が4万5,000円

差額の4万5,000円は、投資に回っていると思われます。

ただし、ボーナスからの貯蓄が0円となっています。妻のボーナスはまだ入っていないと思いますので、夫のみ110万円だけだと考えても計算が合いません。おそらく、毎月の支出で赤字になっていて、その埋め合わせをボーナスでしている状態ではないかと思います。

家計改善や資産形成をする上で、「家計を把握すること」が全てのはじまりであり、最重要項目になります。まずは、しっかりと家計簿をつけて、「何に、いつ、いくら使ったか」を把握できるようになりましょう。家計簿アプリなどもあるので、家族の収支をしっかり把握できる体制をつくることが重要ですね。

個別の支出、見直しのポイントは?

続いて個別の支出をみていきたいと思います。

◆住居費 12万円
住居費が12万円とあるので、仮にマンションの管理費修繕費で2万円かかり、住宅ローンの返済額が10万円だとします。仮に変動金利で0.5%だとすると、残債3,350万円から逆算すると約30年2カ月の返済期間がありますね。現在43歳ですので、73歳の終わりに住宅ローンの完済となります。

定年を65歳とすると、その後も住宅ローンが残り支払いが継続していきます。7つ上の妻はその時は80歳になっているので体力的に働くのが厳しくなっていると思われます。

金利が0.5%よりも高い場合、返済期間はさらに長くなります。他の金融機関と金利差がある程度あれば、住宅ローンの借り換えなども可能性があるので、複数の金融機関に相談してみると良いでしょう。

◆食費 8万円
家族3人で8万円は少し高いように思います。家計簿をつけて、週あたりで予算をもうけてコントロールしていくと良いでしょう。また、ふるさと納税などを活用して、お米や食材を揃えることでも工夫できるでしょう。

◆保険料 3万6,000円
保険は貯蓄系の保険に多くの出銭がありますね。終身保険は、積立利率1.85%であれば実際の利率は1%以下だと思います。現在の解約返戻金がそれほどマイナスでなければ解約して、その分投資に回したほうが資産形成上は有利になる可能性があります。ただし、お子さんの学資として考えているのであれば、無理に投資に回さず継続しても良いでしょう。

◆通信費 1万5,000円
通信費は、携帯代金が2台分と、家のインターネット通信費、NHKの費用などでしょうか。高すぎるということもないですが、格安SIMなどを活用して今よりも少しでも安いものを選ぶとよいでしょう。少額でも固定費を見直せると生涯に支払う金額は小さくできるので検討いただいた方が良いと思います。

買おうと思えば買えないことはないけれど

続いて、お悩みの新車の購入についてですが、結論から言うと、家計の無駄を改善した上でも、400万円の新車購入は厳しいでしょう。

今後は妻が働きにでられたことで、家計は少し楽になると思います。また上記の家計改善も実行すれば貯蓄ができる家計になっていくと思います。買おうと思えば、買うことは可能です。

しかし、現在は現金貯蓄が15万円しかなく非常に不安定な状態です。生きていれば様々な想定外のリスクがあります。職場環境の変化により給料が少なくなることもあるかもしれません。体調を崩して想定していた収入が得られなくなるかもしれません。そうした状態にも備える「生活防衛費」として、生活費の6カ月分は現金の確保を優先すると良いと思います。

一度上がった生活水準を下げるのは大変

6年前に200万円ほど収入が減り、現在はほぼ元の水準に戻りつつあるとのことですが、相談者様はまだ、「収入が高かった状態」の価値観を引きずっている可能性もあります。英国の歴史学者・政治学者パーキンソン氏が提唱した「パーキンソンの法則」の第二法則では、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というものがあります。そして、一度上がった生活水準は意識しないとなかなか下げられないものです。

一度自分の支出状況を客観的にみて、「本当に必要なのか」「見栄や欲で欲しいだけなのか」を考えてみましょう。

もちろん、新車が「必要」で、生活防衛費もしっかりと確保できた上で、将来の学資・老後資金も設計できていれば全く問題ありません。夫婦の収入を合わせれば買うことはできます。相談者さまの価値観が、車が生きがいであり、車のために生きているということなら、車を優先するという考え方もいいでしょう。

ただ、ファイナンシャルプランニング全体を見た時に、教育費・老後・住宅など(学資、老後、介護、修繕費など)のコストがこれからもかかることになるので、かなり厳しい状況だと思われます。

お金が貯まる人になるためには

お金の貯まらない方には2つのパターンがあります。

一つは、収入より支出が多かったり、収入が少ないために「貯蓄」ができないパターン。もう一つが、収入はしっかりあるものの、「負債」を買ってしまい、支出が増えていくパターンです。

ロバートキヨサキ氏による名著『金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(筑摩書房)では、「資産とは、あなたのポケットにお金を運んでくれるもの」「負債とは、あなたのポケットからお金を奪っていくもの」と定義しています。

お金持ちになるには「資産」にお金を払っていく必要があります。資産は自分に収益をもたらしてくれるもので、資産を得るためにお金を使うと資産がお金を呼び込んでくれます。

「負債」にお金を払い続けるとは?

一方「負債」にお金を払い続けると、さらなる支出が積み重なっていきます。住宅は資産と考える方もいますが、住宅の資産価値は購入時より下がるのが常です(物件によっては上がるものもあります)。少なくとも建物の老朽化は資産価値を減らしていきますし、固定資産税や、管理費・修繕費、数十年住んだ場合の水回りやフローリングの大型修繕、などを考えると、今後も出費がかさんでいくでしょう。

自動車も負債になることが多いです。一部の車を除き、新車は購入した時点で数十%は再販価格(リセールバリュー)が低くなります。新車は、新車プレミアムとして販売にかかる営業費用や広告費用がのっているからです。そして、購入後もガソリン代、駐車場代、自動車保険、車検、税金、修理費などのお金がでていきます。もちろん自動車が必要であれば自動車を持つことに問題はありません。ただし「負債」となりうることを理解した上で、その負債にどれだけのお金を投下する必要があるのかを十分に考える必要があると思います。自動車の乗り換えが必要であれば、リセールバリューが新車ほど下がらない中古車を検討してみてはいかがでしょうか?

価値観に照らし合わせて見極めを

資産を買っているのか、負債を買っているのかを見極めるとともに、何が大切かを決める「価値観」を持つことが重要です。

教育費、老後費用、住宅にかかる費用をしっかりと考えた上で自分の価値観と照らし合わせて、「400万円の新車購入に本当に価値があるのか?」「人生の優先順位として他のライフイベントより高いか?」などを考えてみると良いでしょう。

どこか参考になれば幸いです。

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