主演は男闘呼組「ロックよ、静かに流れよ」冬に公開されたアイドル映画のベストテン!  冬休みにカブっていなくても思い出深かった “冬映画”

昭和の “3学期” に公開されたアイドル冬映画10選

夏休みや正月といった学生の長期休暇に合わせて公開されることの多かった “アイドル映画”。しかしながら学校のある時期にも結構多くの作品が公開されていました。今回は1月から3月上旬の3学期に公開された映画から10作品選んでみました。

第10位:ザ・サムライ THE SAMURAI

1986年2月15日劇場公開 配給:東映
原作は『週刊ヤングジャンプ』連載、春日光広の人気マンガ。腕は立つが極度の女体アレルギー、少々目立ちたがり屋がタマにキズと言う血祭武士を中心に、名門(?)嵐山高校を舞台に、破天荒なアクションとサービス過剰な桃色旋風を爆笑の連打で描く青春大型喜劇。

主演にはジャニーズ事務所から1985年にソロレコードデビューした中村繁之。共演は第3回ミス・セブンティーンコンテストにて、網浜直子とダブルでグランプリを獲得した松本典子、光GENJI・大沢樹生。主題歌は中村繁之「雷魂」(作詞:吉元由美、作曲:都志見隆、編曲:大谷和夫)同時上映は古村比呂主演『童貞物語』。

第9位:泣き虫チャチャ

1987年2月21日劇場公開 配給:松竹
昼はミキサー助手として安月給でこき使われ、夜はディスコキングとして華麗なブレイクダンスを披露しているチャチャこと千秋(風見慎吾)。恋人はるみ(鳥居かほり)やオカマバーで働いている勝(竹中直人)と楽しい日々を送っていた。ある日田舎に帰ることになるが…。

山田洋次原作なのに、数館規模であまり宣伝されないまま公開。観た人は少ないかな!? 主題歌は風見慎吾6枚目のシングル「泣き虫 “チャチャ” の物語」(作詞:大津あきら、作曲:山梨鐐平)。

第8位:父と子

1983年1月15日劇場公開 配給:東宝
1981年『連合艦隊』でスクリーンデビューした中井貴一の映画第2作目。高校生の高志は、些細なことから担任教師をナイフで傷つけ放校処分となる。突然の出来事に驚く父・竹一。移動書店を生業とする竹一は高志と一緒にルートバンで父と子の絆を求める旅に出る。朝日新聞に連載された水上勉の同名の小説を映画化。父親役に小林桂樹。旅の途中で出会う若い娘・トメ子に三原順子。

この年映画では、紺野美沙子、松田聖子、杉田かおると共演が続きます。詳しくは以前書かせていただいたコラム『ふぞろいの林檎なんかじゃない?中井貴一は松田聖子とも共演した正統派アイドル俳優!』をご覧いただけましたら。

第7位:愛の陽炎

1986年3月1日劇場公開 配給:松竹
1982年ミスマガジンコンテストの初代グランプリを受賞。1983年「微熱かナ」でアイドル歌手としてデビュー。1984年テレビドラマ『不良少女とよばれて』の高視聴率を記録して、“不作の83年組” から抜け出した伊藤麻衣子が初映画に選んだのは『幻の湖』橋本忍脚本作品。

奥武蔵飯能市。製材所で働くルミ子(伊藤麻衣子)は、出入りの運送の運転手・岩松(萩原流行)という結婚を約束した恋人がいる。しかしながら岩松には弘江という女房がいることが分かった。「あん畜生! ぶっ殺してやりたい」と泣くルミ子に、おばあちゃんがこの地に代々伝わっている “呪い釘” を教えてくれた。白装束にローソクを頭に立てて神社でわら人形に五寸釘を打ち込む―― って、これをアイドル映画と呼べるのだろうか……。

主題歌は本人歌唱「愛の陽炎」(作詞:売野雅勇、作曲:鈴木キサブロー、編曲:山川恵津子)、「奥秩父子守唄」(作詞:橋本忍、作曲:福島新一、編曲:山川恵津子)。同時上映は名作『砂の器』。

第6位:クララ白書 少女隊PHOON

1985年2月9日劇場公開 配給:東宝
アイドル映画には、人気が出て映画と言う王道パターン以外に、デビューのプロモーションを兼ねた映画も結構作られていた。岡田奈々、大場久美子、松本伊代を輩出したボンド企画から巨額のプロモーション費をかけ売り出された少女隊(安原麗子、藍田美豊、市川三恵子)。彼女たちに用意されたのは、氷室冴子女史によるコバルト文庫の金字塔『クララ白書』『アグネス白書』の映画化。寄宿舎付きのカトリック系名門女子校で出会った個性豊かな三人娘による青春ストーリー。

当時梅田劇場で見たのですが、少女隊の歌って踊るシーンしか思い出せず。今回配信で見直してみて、ドラマ部分やお色気要員等があることを確認。しかしながら、オープニングの「お元気ですか? マイフレンド」(作詞:小原丈二、作曲・編曲:都倉俊一)、中盤ドーナツ騒動後の「FOREVER ギンガム・チェックStory」(作詞:亜伊林、作曲:都倉俊一、編曲:John D'Andrea、David Wheatly)、そしてラストの「MAGOKOROダイナマイト」(作詞:大津あきら、作曲・編曲:都倉俊一)がそれぞれしっかりしたPV映像で印象強く。

監督は近藤真彦主演『青春グラフィティ スニーカーぶる〜す』や松田聖子主演『プルメリアの伝説 天国のキッス』の河崎義祐。同時上映は吉川晃司主演『ユー★ガッタ★チャンス』。

第5位:青春グラフィティ スニーカーぶる〜す

1981年2月11日劇場公開 配給:東宝
1979年『3年B組金八先生』で注目されたジャニーズ事務所の “たのきんトリオ”。彼らの初映画は、東宝で1980年正月に山口百恵引退記念作「古都」が鎮座していたからか(?)オフシーズンの2月公開に。

昌也(近藤真彦)、洋一(野村義男)、敏夫(田原俊彦)は定時制高校に通う三人組。シンガーソングライターを夢見る昌也、カメラマンを夢見る洋一、そして野球部のピッチャーとして甲子園に出場することを夢見る敏夫。昌也が起こした交通事故の損害賠償の金を工面するため敏夫は甲子園の夢を捨て借金、暴力団の仲間にひきずり込まれる。

当初誤解もあったものの、敏夫のことを後悔する昌也は、敏夫の残した詞 “スニーカーぶるーす” に曲をつけ、ラジオ局のコンクールに出場。決勝進出を決めた日、行方の知れぬ敏夫に呼びかけるが…。

公開初日2月11日は祝日と言うこともあり期待通りの大ヒットスタート。客層の8割を占める10〜15才のミドルティーンが始発電車で押し寄せ、各地朝7時から上映を繰り上げたとか。当時13才だった自分も、友達と友達のお兄さんの車で、朝早く駅前のテアトル郡山まで送ってもらった記憶が残っている。

1980年12月に発売された主題歌「スニーカーぶる~す」(作詞:松本隆、作曲:筒美京平、編曲:馬飼野康二)もデビュー・シングルながらオリコンウィークリーチャート初登場1位、累計売上104.7万枚の大ヒット。

同時上映は加山雄三芸能生活20周年記念『帰って来た若大将』。どう考えても2本立ての相乗効果の薄そうな…。ちなみに当時の盛り上がりについては 『たのきん初主演映画「スニーカーぶる~す」は若大将と同時上映だった!』で。

第4位:すかんぴんウォーク

1984年2月11日劇場公開 配給:東宝
渡辺プロダクションの渡辺晋社長が、新人タレント・吉川晃司を映画で売り出そうと企画を立案し、ATG社長・佐々木史朗に相談。監督の大森一樹、脚本の丸山昇一に「吉川晃司を主演にしたスター誕生映画を」と発注した作品。

演劇界を志して広島から家出して、東京・晴海にバタフライで上陸する高3の民川裕司(吉川)。アルバイト先の同僚でロッカーを目指す吉夫(山田辰夫)。夢に挫折しながらも、それぞれの成功をつかんで行く姿を、彼らを取り巻く大人達の姿と対比しながら描く辛口のサクセスストーリー。詳しくは『1984年のアイドル革命!吉川晃司「モニカ」と主演映画「すかんぴんウォーク」』で。

主題歌は劇中では民川裕司のデビュー曲「Thanks」として唄われる「モニカ」(作詞:三浦徳子、作曲:NOBODY、編曲:大村雅朗)。

同時上映は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』。大森監督と吉川はこの後民川裕司主演で、1985年『ユー★ガッタ★チャンス』、1986年『テイク・イット・イージー』の三部作を作りました。

第3位:愛・旅立ち

1985年1月26日劇場公開 配給:東宝
“花の82年組” のトップでありながら、映画出演には慎重だった中森明菜。主演映画をめぐり大手映画会社をはじめ激しい争奪戦が展開され勝ち取ったのは、デビュー時からアプローチをかけ続けていた山本又一朗プロデューサー。明菜サイドから『初めてやる映画に対し、自分よりもっと大きな存在が作品を背負ってくれ、その脇で出演するなら』という希望があり、メリー喜多川さんのところに話を持っていき、俳優として歌手として乗りに乗っていた近藤真彦との共演が実現。

元々は『太陽を盗んだ男』の長谷川和彦監督の超能力者を描く全然違う内容の企画だったものの予算がかかりすぎ、双方の事務所から「長谷川監督も悪くないけど、マッチの映画(『ハイティーン・ブギ』)を撮ったことのある舛田利雄監督なら心配ない」という意見が上がり、このような経緯で作品が『愛・旅立ち』だ。

交通事故で友を死なせてしまい、生きていくことへの望みを失った青年・誠(マッチ)。不治の病におかされ、死の恐怖におびえる定時制高校に通う少女ユキ(明菜)。運命の糸に引き寄せられた二人は、たちまち恋に落ちる。燃え上がる愛の力は奇跡を呼び起こし、一度は力尽きたユキを死の世界から救い出すのだが…。

―― といったストーリーで、王道のアイドル映画。しかしながら、映画冒頭宇宙空間に光り輝く母親と赤ん坊の会話から始まり、中盤ユキの目の前に愛読書の「怪談」に登場する “耳なし芳一” が出現したり、ユキが心臓停止とともに幽体離脱したり、大地震が起こりユキが生き返ったりと超自然現象が多発。

そう、舛田監督は1973年『人間革命』、1974年『ノストラダムスの大予言』の監督でもあった。“超自然現象の話は面白いから当時流行っていた丹波哲郎のベストセラー『死後の世界の証明』的なものを若者向けにやろう” と。結果、スピリチュアルムービーになるべくしてなってしまう。とは言え、配給収入11.7億円とヒットした。地方併映は、『うる星やつら3 リメンバー・マイ・ラブ』。

第2位:スケバン刑事

1987年2月14日公開 配給:東映
1985年11月から1年間続いたテレビドラマ『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』。2代目スケバン刑事・麻宮サキを解任され普通の女子高生・五代陽子に戻り平和な学生生活を送っていた。4か月後(ちょうど映画公開の1987年2月)、ある男子学生(坂上忍)の落とし物を拾ったことから、孤島の学園・地獄城で計画されているクーデター事件に巻き込まれる。

お京(相楽ハル子)や雪乃(吉沢秋絵)、そして同時期テレビドラマ『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』が放映中だった風間三姉妹(浅香唯、大西結花、中村由真)が終結。新超密度合金製ヨーヨーを持って地獄城攻略に向かう。

1986年12月に本作品のテレホンカード付きの前売り券1万枚を売り出すと即日完売。これに驚いた岡田茂東映社長が一作目の公開前に東映で南野の2作目、3作目の映画製作を決めたというだけあって、映画館には男子中高校生が押し寄せ配給収入6.3億円とヒット。

主題歌・南野陽子「楽園のDoor」(作詞:小倉めぐみ、作曲:来生たかお、編曲:萩田光雄)は自身初のオリコンウィークリーチャート1位を獲得。同時上映は『カンフーキッド 好小子』という台湾映画。

第1位:ロックよ、静かに流れよ

1988年2月20日劇場公開 配給:東宝
ジャニーズ事務所からバンドでレコードデビューを予定されていた男闘呼組。彼らが演じたのは、長野県に住む4人の高校生。その一人の母・吉岡紗千子原作、実話の映画化。

家庭の事情で母と妹とともに東京から長野県松本市へと引っ越してきた高校生の俊介(岡本健一)。転校早々、ツッパリの ”ミネさ”(成田昭次)から喧嘩を売られたが、次第に打ち解け合うようになる。そこに仲間のトンダ(高橋一也)とトモ(前田耕陽)を加えた4人はロックという共通の夢で強く結びついていく。

楽器を買うために「毎日郷土提言賞」に “大人はツッパリに理解を” というテーマの論文で応募し、見事に準提言賞を獲得。しかしその直後ミネさが交通事故で死亡。残った3人は追悼コンサートを開く。

舞台となった松本の山や川に囲まれた風景が、自分の育った東北の地方都市と似ていて、東京に憧れる登場人物の心情にも共感した。そしてラストシーン、ミネさの誕生日を祝い、3人がロウソクを1本ずつ吹き消し、最後の1本を3人で吹き消して暗転。思い出の場面が映し出されるエンドクレジットには涙、涙。(バックに流れる「LONELY…」(作詞:大津あきら、作・編曲:Mark Davis)も良い。

オープニングに流れる「CROSSIN' HEART」(作詞:大津あきら、作・編曲:Mark Davis)は映画公開時点ではプロモーション用の非売品レコードのみの制作。同年8月に男闘呼組のデビューシングル「DAYBREAK」のカップリング曲(4種類のうちのTYPE2)として、「ロックよ静かに流れよ-Crossin' Heart-」のタイトルで発売された。

同時上映は少年御三家(男闘呼組、光GENJI、少年忍者)出演『少年武道館』。ちなみにグループ名 “男闘呼組” の名付け親は、ジャニーズ事務所・中村繁之なのだとか。

―― と言うことで、80年代「冬公開アイドル映画」10選、いかがでしたでしょうか。この時期、松田聖子や薬師丸ひろ子の映画はありませんでしたが、大物アイドルのデビュー作が結構あって豪華なラインナップだったかと思います。次回は春休み? 1学期? 2学期? またお会いできることを楽しみにしております。

カタリベ: 高橋みき夫

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