“専業主婦の年収1,300万円”論争…専業主婦&共働き主婦のリアルな声は?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、ネットで物議を醸している“専業主婦の年収論争”について取材・議論しました。

◆専業主婦の年収"1,300万円”はあり得ない!?

先日、ある女性がTwitterでつぶやいた「専業主婦の年収は1,300万円」というツイートが大きな話題に。その試算方法は、時給1,500円で労働時間が24時間、労働日数365日で、合計が1,314万円。

その上で、このツイート主は「専業主婦叩きはおかしい」と通常対価が発生しない専業主婦を年収換算する形で擁護しました。

すると「子どもが小学生以下の主婦はもっと大変だと思う」、「各家庭の平均収入は600万円にも満たないのに年収が1,300万円になどなるはずがない」、「家庭内の話をお金に換算することがナンセンス」など賛否が寄せられ論争に発展。

こうした専業主婦の年収論争はネット上でたびたび話題になっていますが、実際はどうなのか。専業主婦の方と共働きの方に話し合ってもらい、リアルな声を聞くことに。

今回協力してもらったのは、結婚歴9年で3人の子ども(6歳、3歳、0歳)がいる30代の共働きの女性(Aさん)。さらには結婚歴22年で2人の子ども(18歳、12歳)がいる40代の専業主婦(Bさん)、結婚歴12年、子どもが2人(10歳、8歳)いる40代の専業主婦(Cさん)の3人です。

まずは"1,300万円”という金額について。Bさんは「もらいすぎ」、Aさんも「普通の庶民にはあり得ない」と現実離れしていると言いつつ、「子どものありなしで違う」、「年代でも違うと思うし、マンションか一戸建てか、大きさでも全然違う」、「(住んでいるのが)都内か地方なのかや、障害のある子どもや介護が必要な家族がいると違う」といった意見も。

総じて、ほとんどの専業主婦は年収1,300万円には当てはまらないものの、家庭環境によってはそれに見合う人もいるのではとの見解でした。

なお、子育て、家事、介護、それぞれの専門職の平均年収はベビーシッターが456万円で、家事代行が449万円。そして、介護スタッフが316万円となっており、その合計額は約1,200万円。全てをプロ並みにこなす専業主婦がいれば、1,300万円はあながち遠い数字ではないのかもしれません。

次に専業主婦の妥当な年収について聞いてみると、専業主婦の2人は「子どもも大きくなってほとんど何もしていない」、「主人も子どもも家事を結構やってくれる」など、専業主婦とはいえそれぞれの環境下によっても違いがあるようで、3人の結論としては月収15万円、年収180万円程度。1,300万円には程遠い金額となりました。

最後に、なぜこうした専業主婦の年収論争がたびたび巻き起こるのかについては、「何か不満がある、尊重されていない感じを受けるから」と周囲からのリスペクトが不足している背景があるのではないかという意見が。そして、「年収とかでマウントを取り合うのではなく、自由な好きなことをし、それを発信することが幸せな世界なんじゃないか」、「人として尊重し合える社会がいい」といった声がありました。

◆お互いにリスペクトは必要なものの…

主婦3人のリアルな意見を聞き、インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは「専業主婦と共働きの主婦、個人と個人が対立してもしょうがない話。そういう構造を作ってきた制度設計もあるし、そう意図して政策を展開してきた自民党政治もあるなかで、これは本当に論争なのかなと思った」と感想を述べます。

また、「ケアワークに対し、価値が低いものとみなされていることがそもそもの問題」と指摘し、介護や保育に関わる人たちが大事だということが分かりながらも給与が上がらないことに触れ、「そこが適正の価格になることがスタートだと思う」と能條さん。さらには「長期的な目線で見れば、被保険者の問題や専業主婦優遇政策というものは、なくしていくほうがいい」とも。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは、専業主婦に対して誰が対価を払うのかと考えると、例えば自分が妻に1,300万円を払うとした場合、2,000万円程度稼がないといけないと想定し「どうしようかな」と苦笑い。

そして、専業主婦か共働きかは「好きに選択すればいい」と言い、最終的には「全ての生きる行為にリスペクトを持とう!」と主張します。

仕事も家事も子育ても介護も全てリスペクトすべきで「『自分のほうが大変だ』と言っていると際限がない。当然制度や社会でやっていくべきことがあるが、個人ができることとしてはリスペクト」と力説します。

古井さんの意見に、能條さんは「その精神論、"主婦に感謝しよう”、"家事してくれてありがとう”で片付けてきた」と反論。リスペクトは持つべきであるものの、気持ちだけではなく、そもそも構造的な差別があることが問題と意見します。

アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは、「男性0.47時間」、「女性5.02時間」という有配偶者の家事時間の調査結果を示し、「男女でこれだけ家事に関わる時間が違う。これが果たして主体的な選択で全てこうなっているかというとそうではない」と議論を求めます。

番組Twitterの「スペース機能」に参加していた単身女性の視聴者からは「1,300万円というのは取っ掛かりでしかなく、そこで議論するのは本質的ではないと思う」、「能條さんと同じく、私も構造的・制度的な問題も含めて是正していくべきだと思う」といった意見がありました。

最後に能條さんは「今、1人目の子どもを産むときには半分ぐらいは女性が仕事を辞めているのが現状。他に選択肢があればそうするのかというところで、その選択肢を作っていけば、お互いいがみ合うみたいな構造に見えないのではないか」と話していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

© TOKYO MX