LMDh参入の余波でLMP2とLMP3がバトルに? 回転数制限による性能調整が大きく影響/デイトナ24時間

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のLMP2クラスに参戦するドライバーたちが、第1戦デイトナ24時間を前にした公式テスト『ロア・ビフォア・ザ・ロレックス』でのマシンの性能低下の程度に、懸念を表明している。

 新たなトップカテゴリー、GTPクラスを走るLMDhマシンとの間に充分なペース差を確保することを目的にLMP2車両に実施された措置により、LMP2はより遅いLMP3カテゴリーの後塵を拝すのではないかと複数のLMP2クラス参戦者が指摘しているのである。

 全車がオレカ07・ギブソンのパッケージで構成されるLMP2カテゴリーは、12月に発表された一連の性能調整を受けている。

 この主な変更点は、35mmのエアリストリクター装着と、より低いエンジン回転域の使用からなるパワーダウン、昨シーズンから10kg増加した重量、より少ないダウンフォースで走ることになるエアロの調整といったところである。

 オレカ07は昨年より50馬力ほどパワーダウンしているものと複数のパドック関係者が推測しているが、IMSAはそのダウン幅を公式に発表していない。

 ドライバーたちは、LMP2とLMP3がデイトナ・インターナショナル・スピードウェイのインフィールド・セクションで同じようなパフォーマンスを発揮していると指摘する。1速から5速で昨年より700回転、6速では200回転低いレブリミットが、その主な理由として広く指摘されている。

 なお、昨年の予選でのLMP2最速ラップは1分37秒4、2023年第1戦の予選クラスポールタイムは1分40秒5となっている。

 このふたつのラップタイムをマークしているPR1/マティアセン・モータースポーツのドライバーであるベン・キーティングは「僕らにとって一番大きいのはエンジン回転数の低下(制限)だと思う」と語った。

「以前は、GTやLMP3マシンに比べて、素晴らしい加速があったんだ。回転域の低下により、シフトチェンジの際にパワーがないため、コーナーから鋭く立ち上がることができなくなる」

「普通ならターン3と“キンク”の間、あるいはターン5からターン6に入る前にGTカーをパスすることができる。でも今は、あの加速がないから難しいんだ」

「ターン6を立ち上がってバンクを抜けるまで、すべてのクルマがそれ(パワーのなさ)を解決するために待たなければならないような気がする。同等のドライバーを擁しているにもかかわらず、誰かに追いつくには充分な加速がないわけだからね」

 キーティングは、トップカテゴリーとLMP2のギャップは充分なものだと考えており、「これまでよりも大きい」と表現している。

「時間が経てばGTPマシンはより速くなるだろうし、いつかは僕らもパワーを取り戻したいところだよね」と彼は付け加えた。

「24時間にわたってトラフィックがあるデイトナでは、回転数の件はかなり致命的なものになる」

ベン・キーティングがドライブするPR1/マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07

 12月、性能が調整されたオレカをデイトナでのシリーズ公認テストで走らせたLMP2王者のジョン・ファラノは、性能変更によってLMP2とLMP3が接近していると感じている。

「特に、(LMP2の)ブロンズドライバーがセカンドスティント用タイヤで、(LMP3の)プロがニュータイヤでコースに出てきた場合、コーナーでの争いになる」とファラノは語っている。

「とはいえ、LMP2やLMP3ドライバーにはより大きなリスクがもたらされる。多くのLMP3ドライバーと話したが、彼らも懸念している。LMP3をこれ以上遅くすることはできない。GTクラスの中に入ってしまうからね」

「僕は批判をしているわけではないが、IMSAの立場を考えても、そこに懸念があると思うんだ。もしかしたら、彼らはほんの少し(LMP2の)スピードを落としすぎたのかもしれない」

「パワーの削減という観点では、あと1秒でもタイムを稼げるものがあれば、それは本当に助かると思う。クルマのことは心配していない。ただ、ブロンズドライバーとプロドライバーの間のリスクを心配しているんだ」

 ハイクラス・レーシングのアンデルス・フィヨルドバッハは、インフィールドでラップダウンをパスしようとする速いLMP2ドライバーの中には、より大きなリスクを負う可能性のある者もいると付け加えた。

「彼らをパスするためには、どうしてもブレーキングで頑張る必要がある」とフィヨルドバッハは言う。

「これは、いつかはうまくいかなくなる。僕の知る限り、どのチームもブレーキ温度には苦労している。それは、多くのことに影響するんだ」

 LMP3クラスでAWAチームのデュケインD08・ニッサンに乗るウェイン・ボイドによると、LMP2クラスのペースダウンは、LMP3ドライバーの経験値にも影響を及ぼすという。

「速いドライバーがLMP2に乗っていれば、分かりやすいから悪くないんだ」と、2020年のヨーロッピアン・ル・マン・シリーズLMP3チャンピオンであるボイドは語った。

「ただ、ブロンズドライバーが(LMP2に)乗っていて、プロがLMP3に乗っていたとしたら、タイム差はものすごく小さい。テストでは実際にLMP2と一緒になって、僕は彼を抜いたんだけど、彼は決して抜き返せなかった」

「インフィールドで引き離すことができれば、ストレート(オーバル)に入ってもバス・ストップ(ル・マン・シケイン)の手前で追いつけるほどには(LMP2は)速くないんだ。レースは面白くなりそうだね」

デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのインフィールドをゆくLMP3クラスのAWA38号車デュケインD08・ニッサン

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