演劇手法取り入れ防災力アップ 倉敷・真備の住民 豪雨教訓にWS

防災の課題などをテーマに演劇を披露する参加者

 西日本豪雨の被災地・倉敷市真備町地区で、演劇の手法を取り入れ防災力を高める試みが始まっている。多くの高齢者が逃げ遅れ犠牲になった災害を教訓に、掲げるテーマは「老いへの理解」と「当事者意識」。ワークショップ(WS)で学びを重ねた住民らは、昨年秋に初めての発表会を開いた。

 同町地区で高齢者の居場所作りに取り組むNPO法人「ぶどうの家わたぼうし」(同市船穂町船穂)と、老いと演劇をテーマに県内外で活動する劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」が、体験や対話を通じて地域で支え合う重要性を伝えようと企画。5回のWSで認知症の疑似体験をしたり被災時を踏まえた課題を出し合ったりして、演劇の設定を決めて昨年11月の発表会に臨んだ。

 会では小学生から高齢者までの約30人が役になり切り熱演。「立派な堤防があるので避難せん」と、家族の説得も聞かず自宅で垂直避難した高齢者の姿は、実際に被災した人の経験を基にした。米を炊き続ける認知症の高齢者を否定せず、地域で協力して米飯を生かした子ども食堂を運営する劇には、多様性を尊重するメッセージを込めた。終了後、参加者からは「知っている人の意外な面が見え、楽しく学べた」と声が上がった。

 WSは1月26日、2月2、16、23日も開催予定。定員30人。わたぼうしの津田由起子理事は「防災には地域でつながり、理解し合うことが大切で、演劇は効果的な手法になる。楽しみながら仲間を増やしていければ」と呼びかけている。

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