勝田貴元、デイ1のトラブルから挽回。WRCモンテカルロで6位入賞「初戦でポイントを獲得できて嬉しい」

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加している日本人ラリードライバーの勝田貴元が、1月19日から22日に開催されたWRC世界ラリー選手権2023年シーズン開幕戦『ラリー・モンテカルロ』に臨み、コドライバーのアーロン・ジョンストンとのペアで総合6位入賞を果たした。

 昨年11月、愛知県と岐阜県で開催されたWRC最終戦『ラリージャパン』において、初の母国戦で総合3位表彰台を獲得した勝田。直後に行われたトヨタの2023年体制発表にてワークス昇格がアナウンスされ、今シーズンはセバスチャン・オジエと3台目のトヨタGRヤリス・ラリー1をシェアすることが決定。また、オジエがラリーに出場する際は4台目のGRヤリスで参戦することが伝えられた。

 今回のモンテカルロではオジエがラリーに参加することから、勝田はマニュファクチャラーズ選手権の対象から外れた4台目のトヨタGRヤリス・ラリー1での参戦となっている。

 そのモンテカルロは難関として知られる伝統のラリーだ。モナコを起点に厳寒期の南フランス山岳地帯で争われる同イベントは、基本的にはターマック(舗装路)ラリーであるが積雪路や凍結した区間を走ることも多く、それだけに非常に難易度が高い。

 2023年は比較的気温が高く、ほぼすべての日が晴天に恵まれたこともあり路面にほとんど雪がなく、大部分がドライコンディションだった。それでも一部の路面は凍結しており、コーナーのインカットによりグラベルが舗装路面に掻き出されたり、凍結防止剤の塩が大量に撒かれていて非常に滑りやすくなっているセクションも見られた。

 勝田にとって最高峰ラリーカーでのモンテカルロ出場は今回で4回目。ハイブリッドシステムを搭載したラリー1カーでは2度目の挑戦となった。19日(木)の日没後に行なわれた競技初日のSS1で勝田はいきなり4番手タイムを記録し、幸先の良いスタートを切る。

 しかし、直後に行われたSS2ではタイトコーナーで急旋回するために不可欠なハンドブレーキにトラブルが発生。連続するヘアピンコーナーをその状態で走ったため、40秒以上のタイムを失い総合9番手に順位を下げることとなった。

 初日からポジションを落としてしまった勝田だが、トラブルが解消した翌日のデイ2に競争力を発揮。6本のステージのうち4本で4番手タイムを刻む力走をみせ総合7番手まで順位を挽回してみせた。

総合6位でフィニッシュした勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ

■最終ステージで岩壁にクルマがヒット

 21日(土)のデイ3はややペースが落ちたがそれでも総合6番手に順位を上げ、迎えた最終日のデイ4は3本目のSS17で今大会最高位となる2番手タイムを記録。その時点で、総合5番手につけるオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)とのギャップは0.1秒となった。

 勝田は逆転を期し集中力を高めて最終ステージに臨む。しかし、クルマのコントロールを失い左リヤを岩壁に接触させてしまう。これにより大幅にタイムを失ってしまったが幸いにもフィニッシュまで辿り着くとができ、また総合7番手につけていたダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)に対し大きなリードを築いていたため、ポジションを維持して開幕戦を総合6位で走破。ドライバーズ選手権ポイントを獲得した。

●勝田貴元

「このラリーを走りきり、シーズンの初戦でポイントを獲得することができてうれしいです。例年と比べると今年のラリー・モンテカルロは路面のコンディションが安定していましたし、金曜日のステージのようにグリップレベルが高いステージではクルマに自信を持ち、リラックスして走れるようになったと感じました」

「土曜日はコーナーのインカットが多く、路面に多くのダートが出ていたので、僕にとってはかなりトリッキーに感じました。リスクを冒さなければならないところで、少し安全方向に振った走りをしていたかもしれません。そこはまだ改善しなければならない部分ですが、多くを学ぶことができました」

「日曜日は最後のステージでプッシュしたかったのですが、何かが起きて岩壁に当たってしまいました。幸いにも完走することはできたので、もし次回同じような状況になったら、最後まで攻め続けたいと思います」

●ユホ・ハンニネン(インストラクター)

「貴元にとって過去最高のラリー・モンテカルロになったことは間違いない。コンディションは今までのモンテカルロほどは難しくなかったが、ターマックラリーで過去一番の走りを、このクルマでできたのは良かった。彼はクルマの挙動にも満足しているようなので、それは今後のラリーに向けていい兆候だ」

「次のターマックラリーである(第4戦)クロアチアもコーナーのインカットが多く、ダートが路面に出やすいなど今回と同じようなコンディションになる可能性が高いので、セットアップやペースノート、私が彼のグラベルクルーとして作成したマーキングなど、今週末に収集したすべての情報をクロアチア前に分析することが、より良い戦いをするために役立つと思う」

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