懸垂式vs跨座式、人気なのはどっち!? 初めての「モノレールサミット」江の島で開催【レポート】

来場者との記念撮影に応じる南田さん、岡安さん、吉川さん=写真左から=(筆者撮影)

全国6社のモノレールを中心に、東北から九州まで20社を超す地方鉄道がそれぞれの魅力を発信する、第1回「モノレールサミット」が2023年1月21、22日に神奈川県藤沢市の湘南モノレール湘南江の島駅ビルで開かれ、多くの鉄道・モノレールファンでにぎわいました。

2021年7月に開業50周年を迎えた湘南モノレールが、アニバーサリーイベントとして企画。参加各社がブース出展したほか、ステージイベントでは鉄道タレントとしておなじみのホリプロマネージャーの南田裕介さん、ダーリンハニー・吉川正洋さんらが、一般鉄道とはひと味違うモノレールの魅力を語り尽くしました。

1年越しのリベンジ企画

湘南モノレール半世紀の歴史をアピールする催しは本来、2022年2月を予定していましたが、コロナの感染拡大を受けて直前に中止。1年越しのリベンジ企画に待ちかねたファンも多かったようです。

イベントには全国モノレール事業者連絡会議のほか、国際観光都市・鎌倉ならではの鎌倉農泊協議会と民泊仲介の不動産会社、それにテレビ番組制作会社が協力、藤沢市と藤沢市観光協会が後援しました。

出展は湘南モノレールのほか、順不同で多摩都市モノレール、東京モノレール、北九州モノレール、大阪モノレール、千葉都市モノレール。一般鉄道は、地元・神奈川を走る大手私鉄・京浜急行電鉄を例外に、岩手県のIGRいわて銀河鉄道、長野県のしなの鉄道とアルピコ交通(旧松本電気鉄道)、鳥取県の若桜鉄道、熊本県のくま川鉄道など各地の地方鉄道が顔をそろえました。

湘南モノレールの話では、CS(衛星放送)の鉄道番組で取り上げられたのをきっかけに、地域を越えた鉄道ネットワークが誕生。経済活動が再開しつつある中、出展各社は首都圏から旅行者や鉄道ファンを呼び込もうと、創意工夫したPRを繰り広げました。

東京と大阪で延伸構想

延伸構想のある多摩都市モノレール(写真:あやともしゅん / PIXTA)

会場で何社かに話を聞きました。延伸プロジェクトが進行するのが、東京都の多摩都市モノレールと大阪府の大阪モノレール。

多摩都市モノレールは本コラムでも紹介させていただいた通り、起終点・上北台(東大和市)から武蔵村山市を縦貫して箱根ケ崎(瑞穂町)に至る約7.0キロの延伸計画が動き出したところです。

誘客策では「たまモノ」のキャッチフレーズで、沿線の名所やグルメ店を紹介。車窓に美しい景観が広がるのが、湘南モノレールとの共通点かもしれません。

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大阪モノレールは、門真市から瓜生堂(仮称、東大阪市)まで約8.9キロの南進計画が進行中。開業目標は2029年。実現すればOsaka Metro長堀鶴見緑地線、JR学研都市線、近鉄けいはんな線、近鉄奈良線に接続します。

大阪モノレール 3000系車両(写真:いってき / PIXTA)

沿線で鉄道ファンにお勧めなのが、摂津市の「新幹線公園」。東海道新幹線の初代・0系車両の先頭車と、貨物列車けん引機のEF15を公開展示。春は鉄道トンネルならぬ、桜のトンネルが見ものです。

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白銀のトロッコ電車、四季を通じたグルメ列車

一般鉄道の話題もいくつか。富山県の黒部峡谷鉄道は、レール幅762ミリのナローゲージをトロッコ電車が走る、観光鉄道として日本と世界から鉄道ファンが訪れます。

降雪期は運休しますが、冬季の乗車を楽しんでもらおうと企画したのが「冬の黒部峡谷プレミアムツアー」。富山地方鉄道からの乗り継ぎ駅・宇奈月駅に集合後、低速電気バス「EMU」やトロッコ列車に乗車します。列車は、黒部川を渡る最初の橋りょう(新山彦橋)まで約600メートル区間を運行。白銀の渓谷美はインスタ映え確実です。

岐阜県の第三セクター鉄道・明知鉄道は、「走る田園博物館」がキャッチフレーズ。春の「おばあちゃんのお弁当列車」、春から秋の「寒天列車」、秋の「きのこ列車」、秋から春の「升酒列車」、冬から春の「じねんじょ列車」と、四季を通じたグルメ列車で観光客を呼び込みます。

跨座式、懸垂式、どっちが人気?

イベントステージは1階。2階との階段部分で来場者が観覧しました。写真の妄想鉄道以外では、鉄道写真家・中井精也さんの特別講演会も人気を集めました(筆者撮影)

ラストは異色の出展者。ブース名「妄想鉄道」で、その正体は南田さん、吉川さんのほか、岡安章介さん(ななめ45°)、田中匡史さん(鉄道番組ディレクター)という鉄道タレント4人。ブースでは来場者と記念撮影、スペシャルトークショーではモノレールのあれこれを語り倒しました。

軌間や動力の違いを除けば2本のレールを鉄製車輪が走る、ほぼ一択の一般鉄道に対し、モノレールは軌道上を走る跨座(こざ)式と、ぶら下がりの懸垂式に分かれます。

ここまでは入り口。跨座式はメーカーや開発者ごとにアルヴェーグ式やロッキード式、懸垂式はランゲン式やサフェージュ式などに細分化され、そこまでこだわるのが本物のモノレールファンという次第です。

ちなみに、湘南モノレールは〝希少種〟の懸垂式で、同じ方式では千葉都市モノレールの15.2キロという営業距離が、世界最長のレコードホルダー。来場者への手上げアンケートでは、地上が視界良好のせいか、さらには会場が湘南モノレールのせいか、懸垂式への人気が高かったようです。

妄想鉄道が真価を発揮する新路線では、西麻布と六本木のテレビ朝日を結ぶ新路線のアイディアが。「仕事の移動に便利」という超プライベートなルートですが、「建設費の高い地下鉄は無理でも、モノレールなら何とか」と、若干苦し紛れの提案は会場の笑いを誘いました。

「今後も継続開催を」(湘南モノレール)

プラレールでアピールした湘南モノレールブース。下を走るのは、本物は湘南江の島駅で接続する江ノ島電鉄(江ノ島駅)。懸垂式プラレールはないため、モノレールは残念ながら跨座式(筆者撮影)

モノレールサミットは今回が初回。次回は未定ですが、「できれば2回目以降も」と湘南モノレールは話します。会場は若干混雑も目立ったことから、ファンからは「次回はもっと広い会場で」の声も聞かれました。

記事:上里夏生

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