「話してよかったと思えますように」 銃乱射事件の被害者と加害者両親の対話が始まる 「対峙」本編映像

2023年2月10日より劇場公開される、高校銃乱射事件の被害者家族と加害者家族による緊迫の対話を描く映画「対峙」から、銃乱射事件の被害者両親と加害者両親という4人による”人生のすべてをかけた対話”のはじまりを捉えたシーンの本編映像が公開された。

映像の舞台となるのは、アメリカのある田舎町に建つ小さな教会。少しだけ早く到着したのは、この会合に参加するジェイとゲイルの夫妻で、少し遅れてリチャードとリンダが到着する。会合実現のために仲介をしてきたカウンセラーは、4人に「ついにみなさんが同じ席に。今日ここを出る時に、話してよかったと思えますように」などと言葉をかけ、部屋を後にする。4人はぎこちなく会話を始めるが、明らかに回りくどく、核心からはほど遠いものだった。しかし、リチャードの「息子を守るためだった」という言葉に、ジェイとゲイルの表情が凍りつく。

ここまでのシーンにおいて、この会合の目的は一切語られることはなく、見る者はここから始まる4人の会話のみを通じて、その目的や4人の関係、過去と現在、事件によって人生がズタズタになった4人のことなどについて、少しずつ知っていくことになる。

「対峙」は、ほぼ全編に渡って主要キャスト4人による密室の会話劇が繰り広げられる作品。アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が発生。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、被害者の両親であるペリー夫妻は、いまだ息子の死を受け入れられずにいた。夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室で、立会人はなし。ペリー夫人の「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける。

監督を務めるのは、映画「キャビン」などで知られる俳優出身のフラン・クランツ。本作が初監督・初脚本作品となる。ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などのリード・バーニー、「へレディタリー/継承」などのアン・ダウド、「ハリー・ポッター」シリーズなどのジェイソン・アイザックス、「グーニーズ」などのマーサ・プリンプトンが出演している。英国アカデミー賞をはじめ各国の映画賞でノミネートされ、釜山国際映画祭フラッシュフォワード部門観客賞などを受賞している。

一足先に本作を鑑賞した著名人のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■白石 和彌(映画監督)
映画を見て数日経つが、紡ぐ言葉が見つからない。
とにかく凄まじいものを見た。
映画が何のために存在するのか、その一端を教えてくれた気がします。
多くの悲しみと憎悪の溢れる世の中に、静かな光を差し込む映画です。

■奥田 瑛二(俳優/映画監督)
自身が生きてきた経験や準備された言葉では言い表すことができず
自問自答を繰り返している。
大切な人の手を握りしめることしかできない。

■瀬々 敬久(映画監督)
シンプルは力強い。
対話のみで加害者と被害者の心の葛藤を描き切った。
人生の残酷と生きることの美しさ。
何度となく出てくる「赦し」という言葉の重さ。
本物の映画だ。

■坂上 香(ドキュメンタリー映画監督)
埋めようのない喪失を味わった2組の夫婦が、問いかける。
その先を、私たちはどう生き続けることができるのか?

■デーブ・スペクター(放送プロデューサー)
教会の密室、6年の経過を経て許すか許さないかのサスペンス。
彼らが望む「完結」は得られるのか、最後まで目が離せない。

■岸 善幸(映画監督/ディレクター)
罪と罰と、許し。突きつけられる問いに向きあい続けた親たち。
事件の後も生きなければならない彼らの心に触れてほしい。

■香山 リカ(精神科医)
人間の心はとてももろい。でも、とても深い。そして、何度でも再生する。
心の専門家であるはずの私も魂を揺さぶられた。

■吉田 恵輔(映画監督)
他者への想像力。少し広がるだけでも世界は暖かい。
しかし簡単に出来ないのが人間。もどかしさが痛く切ない。

■浜田 敬子(ジャーナリスト)
どんなに憎んでいても、赦せなくても、向き合わなければ知ることすらできない。
対峙することの苦しさと、それでもその先にしか一筋の光がないことを知らしめてくれる作品。

■宮本 亞門(演出家)
映像は一見、何の問題もない暮らしから始まる。
だが4人の親によって子供たちの様子が炙り出される。
社会や個人、加害者や被害者の気持ち、残された者、親や子とは?
誰もが持ちうる混乱、疑惑、不安、恐れを炙り出す。
実にシンプルだ、シンプルゆえに語られてこなかったことを語る彼らの言葉が心に響く。
不安が人を自己的にさせ、分断を生みだす今、対峙し話し合うことは可能か否か?
これは演劇であり映画であり新たなドキュメンタリー、この時代が産んだ秀作だ。

■上西 充子(法政大学教授)
耳を傾ける者がいて初めて、胸のうちに押し込められた思いは言葉となって姿をあらわす。

■森 達也(映画監督/作家)
まさしく密室劇。対峙するのは加害者の家族と被害者の遺族。言葉をぶつけ、憎悪や絶望に身を焦がし、そして慰め合う。言葉にすればひりひり。罪と罰とは何か。ここに今の世界の多くの問題が凝縮されている。

■猿渡 由紀(L.A.在住映画ジャーナリスト)
現代のアメリカで多発する学校での乱射事件を限りなく近い距離から人間的に見つめる感動の傑作。
4人の役者の演技に大絶賛を送りたい。

■名越 康文(精神科医)
赦しだけが魂の救いだとしても、どうして凍てつく心の扉を、開けることなどできるだろうか。
その絶望的な問いに真正面から挑んだ映画がここに出現した。
この作品を通じて、あらゆる意味での人間の勇気を、我々は知ることになるだろう。

【作品情報】
対峙
2023年2月10日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:トランスフォーマー
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