長崎県産の「酒」×「魚」で消費拡大へ 団体の枠超え連携しアピール

県庁1階に展示されている県産酒

 近年、全国の鑑評会で好成績を残している長崎県産酒。品質が向上する一方、健康志向の高まりや嗜好(しこう)の多様化、さらには「県内にいいお酒があるのによく知られていない」(県物産ブランド推進課)などの理由で県内消費は伸び悩んでいる。県は訴求力を高めるため、特産の魚やかまぼこと組み合わせた形での発信を始めた。これまでばらばらにアピールしてきた長崎のおいしさを掛け合わせ、さらなる消費拡大を目指す。
 同課によると、県内には酒蔵が29社あり、日本酒や焼酎、クラフトビールなどを製造している。昨年5月の全国新酒鑑評会(酒類総合研究所など主催)では、県内で日本酒を製造する14社の中で6社の銘柄が入賞し、うち3銘柄が最高賞の金賞を受賞。同9月の福岡国税局(本県と福岡、佐賀両県を管轄)の酒類鑑評会では、「吟醸酒」「純米酒」「本格焼酎」の3部門の金賞に本県の12銘柄が選ばれた。
 県酒造組合の山内昭人会長(玄海酒造社長)は「日本酒だけでなく、長崎の焼酎も受け入れられるようになってきた。世代交代した酒蔵では、大学や修業先の酒蔵から戻った後継者が専門知識を持ち帰り、品質向上にもつながっているケースもあるようだ」と話す。
 ただ、県内の酒類消費量は全国同様、減少が続く。国税庁のデータによると、2020年度の県内消費は7万4232キロリットルで10年前から1万キロリットル超減。県内消費のうち、県産の割合は日本酒が2割弱、焼酎はさらに少ないという。

 県産酒を県内で味わってもらう機会を増やすため、県酒造組合、県漁連、長崎蒲鉾水産加工業協同組合が連携し、消費拡大の糸口を探る動きも始まっている。
 21年に初めて勉強会を実施。県漁連が魚料理、長崎蒲鉾水産加工業協同組合がかまぼこ料理を提案し、県酒造組合が各料理に合う酒を分類した。「ペアリングシート」としてまとめ、翌年は飲食店も交えたマッチング会を開催。「団体の枠を超えた今までにない取り組み」(県水産加工流通課)で、そこで新たな取引も生まれているという。
 同課によると、マアジ、イサキ、養殖トラフグ、養殖クロマグロなど本県には全国一の生産量を誇る魚種が豊富にある。だが、全国的に魚の消費量は減少傾向にあり、こちらも急務の課題。県は「おいしさ」の相乗効果を狙い、県内の飲食店で県産酒と県産魚・かまぼこ料理を一緒に提供する「なが推し」セットキャンペーンを展開している(現在は57店舗参加)。
 山内会長は「(酒蔵と飲食店など)新しいつながりも生かして魅力を発信し、多くの人に長崎の味を楽しんでほしい」と期待する。
 県は、県産酒を常時3種類以上扱う飲食店「長崎県産酒取扱店舗」に約700店舗、県産魚を積極的に扱う飲食店「長崎県の魚愛用店」に約200店舗をそれぞれ認定している。県は双方の認定店(一部は重複)にも働きかけ、「なが推し」の取り組みをさらに広げていきたい考えだ。


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