看護師が遠隔死亡診断を支援 厚労省から認定

遠隔での死亡診断を支援する看護師として厚生労働省から認定された高野誠さん

 和歌山県上富田町生馬の「たかの訪問看護センター」代表の高野誠さん(45)が、情報通信技術(ICT)を利用した遠隔での死亡診断を支援する看護師として、厚生労働省から認定された。へき地など医療資源が限られた地域の課題解消につなげたいという。

 死亡診断は通常、医師が直接行う。近年は自宅で最期を迎えることを望む人が増えているが、医師数や医療機器に限りがある中山間地域や離島などでは、やむを得ず住み慣れた自宅を離れて医療施設に入院するケースも少なくない。

 そんな中、厚労省は2017年に「ICTを利用した死亡診断等ガイドライン」を策定。一定の条件を満たす場合、パソコンやスマートフォンを使って看護師らが遠隔から死亡診断を行い、死亡診断書を交付できる制度を創設した。

 在宅での「みとり」の可能性を広げようと活動している高野さんは昨年10月から、ガイドラインに基づく研修を受けた。研修会は大阪府監察医事務所(大阪市)などであり、検視の現場に立ち会うなど死亡診断の実習を受け、このほど修了証が交付された。

 高野さんによると、遠隔での死亡診断については複雑な手順が必要で、まだまだ全国的にも例が少ない。「現場から声を挙げていって運用しやすい制度にしていきたい」と話す。

 高野さんは長年勤めた総合病院を退職し、20年に訪問看護センターを設立した。昨年には、末期がんなど医療依存度の高い患者を支援する施設「在宅ホスピス」を併設。患者やその家族らが安心して療養生活を送れるよう努めている。

 「この地でも、自宅で亡くなってから医師が来るまでに時間がかかったり、やむを得ず遠方の病院に入院せざるを得なかったりするケースがある。コロナ禍で病院の面会も制限される中で、『みとり』のハードルを少しでも下げることができたら」と話している。

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