新型コロナ感染での偏見と後遺症が心理的負担と労働機能障害に影響、広島大学などが調査

広島大学大学院、広島市立舟入市民病院、三次中央病院、広島県感染症・疾病管理センターの研究グループは、新型コロナウイルス感染症から回復した患者を対象とした研究により、新型コロナウイルス感染症罹患後に、感染に対する偏見と後遺症によって心理的負担と労働機能障害の危険性が高まることを明らかにした。

新型コロナウイルス感染症の回復後に、疲労、息切れ、頭痛、味覚障害などの持続的な後遺症が生じたり、軽症でも回復後に仕事、社会生活、家庭生活に機能障害を生じたりする危険性が指摘されている。一方、感染に対する偏見も、回復した患者にとって深刻な問題であり、不安、抑うつなどの精神面での問題と関連しているとされる。

そこで今回、広島県の新型コロナウイルス感染症対応病院2施設において、新型コロナウイルス感染症患者309名を対象として調査(2020年4月~2021年11月)を行った。

その結果、62.5%の参加者が一つ以上の後遺症を経験し、心理的負担は対象者の36.9%に、労働機能障害は対象者の37.9%に見られた。感染に対する偏見は対象者の32.7%が経験したと回答。後遺症は心理的負担と労働機能障害両方に関連しており、同様に感染に対する偏見も心理的負担と労働機能障害両方に関連していた。さらに、後遺症が労働機能障害に与える影響は心理的負担を介していることが示唆された。

新型コロナウイルス感染症患者が増える中、感染症からの回復後に心理的負担を経験したり、機能障害に悩まされたりする人も増えているとみられる。これらの心理的負担や労働機能障害の発症を予防もしくは軽減するためには、感染に対する偏見の払拭や心理的サポートが重要としている。

論文情報:

【Scientific Reports】The role of discrimination in the relation between COVID-19 sequelae, psychological distress, and work impairment in COVID-19 survivors

© 大学ジャーナルオンライン