CL制覇、ペップとの名勝負、香川真司&南野拓実…クロップ監督の1000試合を追憶 

リヴァプールのユルゲン・クロップ監督(55歳)が、監督キャリアの節目を迎えた。21日に行われたプレミアリーグ第21節のチェルシー戦(0-0)で監督キャリア通算「1000試合」を達成したのだ。

2001年に33歳で監督業に乗り出したクロップは、マインツ、ドルトムント、そしてリヴァプールと22年の監督キャリアで通算1000試合に到達した。「自分は4部リーグのレベルの足と、1部リーグの頭脳を持っていた」と本人が語るように、監督に転身してからは自慢の頭脳を活かして現役時代よりも遥かに輝かしいキャリアを送っている。

それではクロップの「1000試合」を振り返っていこう。

[写真]=Getty Images

■1000試合の内訳

これまでクロップが率いてきたのは3クラブだけ。ドイツのマインツとドルトムント、そして現在のリヴァプールである。ドイツの2部で監督キャリアをスタートさせたクロップはマインツを率いて270試合を戦い、クラブ史上初のトップリーグ昇格まで勝ち取った。2008年からはドルトムントを率いてリーグ優勝やチャンピオンズリーグ準優勝など計319試合を指揮。

そして2015年10月にリヴァプールの監督に就任すると、チームの改革に成功。チームを30年ぶりのリーグ制覇に導くなど輝かしいタイトルをもたらし、今月21日のチェルシー戦で411試合に到達。マインツで初めてチームを率いてから21年と327日で通算1000試合を達成したのだ。1000試合の結果は「538勝240分け222敗、1898得点1081失点、勝率53.8%」となっている。

■マインツ時代(2001-2008)

270試合=109勝78分け83敗(425得点341失点) 勝率40.4%

ペップ・グアルディオラが「ヨハン・クライフに出会うまで私はサッカーについて何も知らなかったようだ」と語ったことがあるように、クロップにも恩師がいる。それがヴォルフガング・フランクである。主にドイツの下部リーグのクラブを率いたフランクは、1995~1997年、1998~2000年と2度に渡ってマインツの監督を務め、まだ現役選手だったクロップを指導。当時ドイツで主流だった“リベロ(スイーパー”のシステムを破棄し、よりモダンな4バックに変更。そしてチームが連動してプレスをかけてスペースに飛び出していくサッカーを導入した。クロップの代名詞ともなる“ゲーゲンプレス”の原点である。

またフランクは、マインツ大学のスポーツサイエンス科の学生にも協力してもらい、毎試合のように対戦相手を分析して丸裸にした。さらに当時では珍しい“メンタルコーチ”も招聘するなど、少しでもアドバンテージを得ようと詳細にこだわった。そして教え子の選手たちが指導者の道に進めるようにノウハウを授けたという。クロップの監督としての才能に気づいていたのか「ノートを取るように」と彼に勧めたこともあるという。

クロップは、過去のインタビューで「監督業に進むきっかけになった指導者はいるか?」と聞かれた際に「彼の名前はヴォルフガング・フランク。残念ながら若すぎる死を迎えた」と2013年に62歳で他界した恩師について振り返ったことがある。そして「私は彼から学んだ多くのことを監督として実践している。彼は完璧な模範だった」と多大な影響を受けたことを明かした。

2001年2月、クロップは現役引退直後に所属していたマインツの監督に抜擢されると、就任から7試合で6勝を収め、2部リーグで下位に低迷していたクラブを残留に導いた。そして2003-04シーズンにはマインツをクラブ史上初のトップリーグ昇格に導き、翌シーズンにはUEFAカップ出場権も獲得。その後、チームは降格するが7年間で270試合を指揮した。

■ドルトムント時代(2008-2015)

319試合=180勝69分け70敗(624得点331失点) 勝率56.4%

2008年、2部のマインツで再度昇格を目指したクロップだが、4位で昇格を逃すとシーズン後に退任。そして前年度にブンデスリーガで13位に終わっていたドルトムントの監督に就任する。ドルトムントでは、就任3年目の2010-11シーズンに日本代表MF香川真司やポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキを擁してブンデスリーガを制すると、翌シーズンには当時のブンデスリーガ記録となる81ポイントで連覇を達成。そして2012-13シーズンにはチャンピオンズリーグ(CL)で順調に勝ち上がったが、決勝で宿敵バイエルンに1-2で敗れて涙を呑んだ。

2015年に退任するまでドルトムントで319試合を指揮したクロップが、監督キャリア1000試合において最も負けている相手がバイエルンだ。リヴァプールに来てからのCLでの対戦を含め、これまでバイエルンとは31回対戦して「9勝6分け16敗」。2013年のCL決勝のほか、2014年のポカール決勝でもバイエルンに苦汁をなめさせられた。

とはいえ、マインツ時代の7戦(0勝1分け6敗)を除けば、バイエルン戦もほぼ互角の戦績だ。さらにリヴァプールの指揮官としては2018-19シーズンのCLベスト16で対戦し、1勝1分けで見事にドイツの雄を退けると、勢いそのまま欧州の頂点まで駆け上がっている!

■リヴァプール(2015-)

411試合=249勝93分け69敗(849得点409失点) 勝率60.6%

2015年10月、ブレンダン・ロジャーズの後任としてアンフィールドにやってきたクロップは、チームを劇的に進化させた。そして的確な補強も功を奏して着実にレベルアップを遂げると、前述通り2018-19シーズンに14年ぶりの欧州制覇を達成する。クロップは「準決勝で勝つことにおいては世界記録を持っているだろうね」と冗談を口にしたことがあるように、それまでは「決勝で勝負弱い」と指摘されてきたが、見事にファイナルでトッテナムを撃破してヨーロッパの頂点に立った。

すると翌シーズンにはプレミアリーグで圧倒的な強さを見せつける。18連勝のイングランドトップリーグ記録に並ぶと、これまたリーグ記録に並ぶシーズン32勝を達成。そして99ポイントを稼いでプレミアリーグを制覇。リヴァプールに30年ぶりのリーグタイトルをもたらしたのだ。また、グアルディオラ率いるシティとの二強時代を築いて“名勝負数え歌”を奏でることに。

ドイツ時代から数え、クロップが最も対戦している相手こそペップなのだ。監督キャリア1000試合のうち27試合がペップとの対戦で、結果はクロップの「11勝7分け9敗」。クロップにとって11勝は、ディーター・ヘッキングやエディー・ハウとの対戦と並び自己最多勝利だ。そして、4度以上の対戦経験がありながらペップに勝ち越している唯一の指揮官がクロップなのだ!

■選手起用

これまでクロップが最も起用した選手はリヴァプールのFWロベルト・フィルミーノ(31歳)だ。フィルミーノは2015年10月のクロップの初陣こそ怪我で欠場したが、第2戦で起用されると、これまで「341試合」に出場。そう考えるとフィルミーノはクロップの監督キャリアの3分の1以上の試合に出場していることになる。フィルミーノの次に多いのは1000試合目でも起用されたMF/DFジェイムズ・ミルナー(37歳)で「302試合」だ。

クロップは、過去に3名の日本人も起用している。リヴァプールでは日本代表FW南野拓実(55試合14ゴール)、そしてドルトムント時代には前述の香川真司(109試合35ゴール)、丸岡満(1試合0ゴール)を起用した。ちなみに香川真司の109試合は「クロップ起用ランキング」において47位。GKシモン・ミニョレ(100試合)、FWピエール・エメリク・オーバメヤン(93試合)、FWディオゴ・ジョッタ(93試合)よりも上位にいる。

さらにゴール数を見ると、香川真司の35ゴールは12位。ちなみに、クロップの元で最多ゴールを誇るのはリヴァプールの絶対的エースであるエジプト代表FWモハメド・サラーで173ゴール(283試合)。続いてFWサディオ・マネの120ゴール(269試合)となっており、最多出場のフィルミーノは107ゴールで3位に着ける。

日本とも結びつきのある「1000試合」を指揮したユルゲン・クロップ。果たして、どこまでこの数字を伸ばしていくのか? 世界的名将の今後に注目したい。

(記事/Footmedia)

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