確定申告、初めての【青色申告】で引っかかるポイントを税理士が解説

2022年は、副業をスタートさせた会社員の方も多かったようです。生活環境が変わって新しい挑戦、素晴らしいです! なのに「なんか青色の方がイイって聞いたから手続きしたのに、まだ何もできていなくて」ですって? なんて……嘆かわしい!

青色申告をするための手続きの時に「帳簿をちゃんとつけます」って宣言したじゃありませんか。そんなことも知らずに青色を名乗るなんて100年早い……は言い過ぎですね、難しいですもんね、ごめんなさい。

まだまだネットで叩かれるのが怖い、48歳の若手芸人で本物の税理士である税理士りーなが、初めて青色申告する方が引っかかりやすいポイントを解説していきます。


「青色申告」って何?

まず、収入に対してかかる税金として、国税である「所得税」と地方税である「住民税」の2つがあります。給与収入のみの方は自分で何も手続きしなくても、年末調整の時に会社が所得税や住民税の手続きをしておいてくれますが、給与以外の収入がある方は収入があった年の翌年3月15日までに「所得税の確定申告」という手続きをして、納付が必要なら税金の納付をしなければなりません。

そして、この確定申告の中で収入の種類「区分」がいくつかあって、副業で得られた収入は、下記3つの要件をクリアすれば「事業所得」という区分で申告をすることになります。

・継続的に行なっている事業といえる
・開業届を出している
・複式簿記で帳簿をつけている

1つでもクリアしなければ、一時的な「その他の収入」とされて「雑所得」と区分されます。この違いについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、必要な方はご覧ください。

3つの要件を満たして「事業所得」といえるようになれば、次は「あなたは何色?」と聞かれます。答えは「青」か「白」の2択です。「私は青!」「私は白!」と、風邪薬のCMのようにどちらかキッパリと答えてください。

よくわからずに自己流で申告されている方は、これがハッキリと答えられない方がいます。そのような方は、たいてい「白」です。青と白の違いは何か−−それは「帳簿をちゃんとつける優良事業主(青)」か「ざっくり帳簿のフツーの事業主(白)」かの違いです。

「私は青色です!」という届け(青色申告承認申請書)を期限内に税務署に提出して、帳簿をつけてキッチリ管理することを誓った事業主の方は「優良事業主」として、税金の優遇が受けられるという制度なのです。事前に提出が必要な届けについて、詳細は国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」をご確認ください。

青色申告で受けられる税の優遇措置

以前の記事でも解説しましたが、税の優遇措置の内容は下記になります。

・青色申告特別控除(55〜65万円引いてもらえる)
・マイナスの3年間繰越控除(赤字分を儲かったときに引ける)
・青色事業専従者給与(家族への給料)
・貸倒引当金(未回収の売掛金に備えてリスクを経費計上)
・少額減価償却資産(30万円未満の資産を経費に)

つまり、起業や副業をして儲けが出て税金を納めることになる方は、青色申告にして儲けから65万円の控除を引いてもらうと、税金がグッと安くなるということになります。「青色の方がお得らしいよ」というのは、これが理由です。

しかし、いざ青色の申請書を出して「私は優良な事業主です」と名乗れるようになっても、帳簿のことや申告の手続きがわかっていなければどうしようもありません。

まず、前提条件として必要な「複式簿記の帳簿」ですが、会計ソフトを使ってつけるのがオススメです。最近の会計ソフトは会計の知識がない一般の方でも簡単に入力ができるように工夫されていて、毎月千円程度で利用ができます。年払いだと1万円程度のものもあります。もちろん、会計ソフトの利用料や購入費は経費として計上できますよ。

簿記の知識があり、かつExcelなど表計算ソフトをしっかり活用できる方なら、自分で集計フォームを作っても記帳できるかもしれません。しかし、複式簿記の帳簿をちゃんとつけようと思うと、かなり複雑な造りの集計表になります。しっかりと簿記の知識で「損益計算書」と「貸借対照表」という2つの集計表を完成させなければ、青色申告の65万円控除を受けることができないのです。

自分で集計しようと頑張ってみたが、結局「貸借対照表」がうまく作れず、65万円控除を諦めて10万円しか控除が受けられなかったという「嘆かわしい!」話を聞いたことが何度もあります。「損益」は集計できても資産の状況を示す「貸借対照表が合わない」という方が、結構多いのです。初めての方でしたら、なおさらですよね。

青色申告をした際の節税効果は、引いてもらう65万円に15〜55%(所得税:5〜45% + 住民税:10%)をかけた97,500円から357,500円の税額が抑えられることになります。金額が変わるのは所得税率に幅があるためで、所得税率は累進課税といって課税される所得金額=儲けによって決まります。会計ソフトの利用料をケチってしまい、控除を受け損ねたら、それこそ本当に「嘆かわしい!」ですね。

帳簿を作る準備

帳簿は開業日以降のスタートで、なるべく取引があった日付順に書き始めます。

まず、収入は自分が発行した領収証や請求書または売上帳など、ご自身の事業形態に応じた方法で売上の金額を正しく把握して入力(記帳)します。よく「入金はまだなので処理は来年で良いですか?」とご質問をいただきますが、なんて……嘆かわしい! 売上を計上するのは入金のタイミングではなく、「販売して商品を引き渡した」または「サービスを完了した」タイミングで計上してください。

入金のタイミングで帳簿に書くと、「受け取りは来年でいいです」なんて言って、売上の金額を操作できてしまいますよね。利益の操作ができるような帳簿の付け方は、税務署のチェックが入った時に怒られるポイントになりますから、絶対にしないでください。

また、入金時で帳簿をつける「現金主義」という記帳の仕方もありますが、その方法をとると青色控除の金額が65万円から10万円まで減ってしまいます。しっかりと控除を受けるためにも、正しい収入の計上方法を理解して適用してください。

「1万円の商品(サービス)を年末に提供して入金は年明け」という場合は「売掛金1万円/売上1万円」という仕訳を作成して、「現金はまだ受け取っていないけれど、近々1万円が入ってくる予定」というのを「売掛金(うりかけきん)」という科目で表します。簿記の勉強をしたことがない方は耳慣れないかもしれませんが、知っておくと帳簿を作る時にスムーズです。

次に、支出は領収証やレシートをかき集めて、それをもとに「日付、科目、金額、取引先や内容」の入力を進めていきます。科目は「消耗品費」「通信費」「旅費交通費」のように、どのような用途で使ったかを記します。

最近の会計ソフトは、レシートをスキャナで読み取って仕訳に起こしてくれるサービスなどもあります。ただし自動で記帳したとしても間違っていることもありますので、必ず自分の目でチェックして、間違っている時は正しく訂正してください。

領収証でなければダメだと思い込んでいる方も多いようですが、レシートでもOKです。日付、取引先、内容、金額が明記されているものを代用することができますので、スーパーなどのレジで「領収証ください」と、ややこしいこと言ってレジの渋滞を作らないでくださいね。

これらレシートや領収証類の入力まで1年分全て完了すれば、1年間の帳簿作成ができることになります。会計ソフトを使っていれば、ワンタッチで「青色決算書」という集計表を作成することができます。

この青色決算書は、前述の「損益計算書」と「貸借対照表」の他に、減価償却の明細表(10万円以上の資産に関する詳細)や、毎月の売上・仕入高の推移などを記載する4ページの書類です。帳簿のみならず、この事業に関する詳細の集計表をちゃんと作って提出するから「優良な事業主」なのです!

作成する青色決算書のフォームは、国税庁のウェブページをご覧ください。国税庁のe-Taxで入力をすれば、質問に答える感覚で入力を進めながら、この青色決算書を作成することができます。

せっかくバッチリ青色の決算書を作って「ちゃんとしてます」アピールしても、その申告書を紙に印刷して提出しては、控除額が10万円も減って55万円控除になってしまいます。税務署としても「頼むから紙で出さないで電子データで出してよ〜」ということなのでしょうね。ぜひ、e-Taxで電子申告して65万円控除をゲットしてください。

e-Taxで確定申告書を作成する場合は、国税庁「確定申告書等作成コーナー」から、作成の流れについては前回の記事をご覧ください。


初めての確定申告をする時に「青色申告」で提出しようとすると、気をつけなければならない点が多く、難しいと感じて心折れてしまう方もいます。1年目は時間がかかるかもしれませんが、1度正しく申告できてしまえば、毎年同様に申告書を作成することができます。

わからない点は、税務署に相談したり、会計ソフトやサポートを活用するなど、一つずつ確実にクリアしていきましょう。私も確定申告に関するセミナーやサロンなどを開催していますが、まさに税理士の専門分野なので、税理士に相談するのも一つです。正しく申告できず、受けられるはずの控除が受けられなくなるなんて「嘆かわしい!」ので、早めに申告しましょう。

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