
黒川温泉(熊本県南小国町満願寺)の中心街にある地蔵堂の天井絵が、約70年ぶりに修復される。地元の小中学生が木の板に描いた121枚で、切り絵作家の室原うきさん(73)=同町赤馬場=が、約1年かけてきれいに復元する計画だ。
絵は縦横30センチ。武将や動物、草木などが描かれている。案内板は「昭和初期に黒川の子どもたちが奉納した」と紹介しているが、「大正2年、初秋」と記した絵も見つかった。大半が色あせており、同温泉自治会(松崎郁洋会長)が室原さんに修復を依頼した。
室原さんは、奉納した古老の話を聞き、1枚1枚の絵に残された名前や年代などを調査。絵の状態を見極めながら、「割と鮮明な作品は忠実に復元し、そうでないものは小国杉の板にアクリルカラーで書き直したい」と話す。
地蔵堂は、肥後細川藩の修行者が安置した後、温泉が湧き出たと伝わる地蔵を祭っている。住民は例年5月に「地蔵祭り」を開いてきた。室原さんは「今回、今の子どもたちの絵も新たに加えたい。黒川温泉に欠かせない大切なお堂に、その時代、時代の子どもたちの絵をつないでいければ」と構想を練っている。(花木弘)
