老朽化進む市営住宅、解体して民間賃貸で補う 福井県福井市が借り上げ検討、新築より効率的

福井県福井市が管理する市営住宅。老朽化のため新築工事に取り組んでいる=福井市内

 福井県福井市は既存の民間賃貸住宅の部屋を借り上げ、市営住宅として貸し出す制度の導入を検討している。市内には低所得者ら向けの市営住宅16団地があるが、建物の老朽化が進んでいることや必要戸数の減少から、新築よりも初期投資が抑えられ戸数調整もしやすい借り上げ制度を進めたい考え。2023年秋にも試験運用を始め、課題などを整理して2026年度の本格運用を目指す。

 公営住宅の民間賃貸借り上げ方式は、地域の需要に応じた効率的な供給が可能になり、住戸単位での運用が進む。福井県外の自治体で取り組む例はあるが、県内では初めてという。

 市営住宅は22年4月時点で、市が直接建設した100棟以上、1881戸。取り壊し予定を含めた空き室は532戸ある。空き室は増加傾向で、現在は供給余剰となっている。また築50年以上が全体の4割を占め、古いものはエレベーターがないといった設備水準の課題もある。

 本年度改定する「市住宅基本計画」素案では、老朽化や耐震性不足により36棟を解体するとした。計画最終年の32年度の必要戸数は約1620戸を見込み、解体後は1600戸を下回るため民間賃貸で部屋を借り上げて補う。

 総務省の住宅・土地統計調査(18年)による推計で、市営住宅として活用できる家賃や広さなどの基準に合う市内の民間賃貸の空き室数は約1900戸。推計は32年度まで横ばいとなっており、借り上げ制度が空き部屋の有効活用にもつながると期待する。

 借り上げ制度では、入居者は所得などによる一般的な市営住宅の賃料を払う。実際の家賃との差額は市が補助する。戸数や運用方法、どのような条件で実施するかは今後決める。新年度に制度設計に着手し、秋から試験運用するとしている。

 市営住宅課の担当者は「3年後の本格運用に向け、先進自治体の事例を踏まえ、不動産関係者と連携して制度づくりに取り組む」と話した。

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