F1オーナー、F1売却報道に懸念を示したFIA会長に激怒「容認できない越権行為」と厳重抗議

 サウジアラビアの公共投資ファンドが昨年、F1の商業権を所有するリバティ・メディアに対してF1事業の買収を持ちかけ、200億ドル(約2兆6000億円)を超える額を提示したという報道に対して、FIA会長モハメド・ビン・スライエムが行った発言に関し、リバティが抗議を行ったことが明らかになった。ビン・スライエム会長の発言はリバティの権利に干渉するものであり、F1の価値を下げる可能性もあるとして、リバティ側は怒りを示している。

 先週『Bloomberg』は、サウジアラビアの公共投資ファンドが昨年、リバティ・メディアに対してF1事業の買収を持ちかけ、負債分を含めて200億ドルを超える額を提示したと伝えた。リバティはオファーを断り、サウジアラビアの公共投資ファンドに対して、F1事業は売却の対象ではないと言明したという。

 23日、ビン・スライエム会長はTwitterを通して、200億ドルは価格として高騰しすぎであると示唆し、そのような形で買収がなされれば、最終的にはチケット料金の値上がりにつながりかねないとの懸念を示した。

モハメド・ビン・スライエムFIA会長

「F1の買収提案において200億ドルという膨脹した額が提示されたと言われているが、モータースポーツを庇護する立場であり、非営利団体でもあるFIAは、この額に懸念を抱かざるを得ない」とビン・スライエム会長。

「F1の買収を検討する企業には、ただ膨大な金額を積むというのではなく、良識を持ち、F1にとってよりよい結果となるよう努め、明確で持続可能な計画を伴って来るように助言したい」

「プロモーターにとってF1の開催権料や他の商業的コストの上昇という意味で将来的にどういった影響が及ぶか、また、ファンにとって不都合な事態にならないか、我々には注意深く見ている責任がある」

 この発言にF1上層部は憤り、法務部からFIAに対して、ビン・スライエム会長のコメントへの抗議文を送付したことが明らかになった。この手紙はF1チームにも配布された。F1は、100年にわたる契約の下で、選手権の商業権を独占的に利用する権利を有していると主張したうえで、以下のように述べている。

「FIAは、これらの権利の所有、管理、および/または利用を害するようなことは一切行わないという明確な約束をしている」とF1が送った書面には記されている。

「FIA会長の公式ソーシャルメディアアカウントからなされたこれらのコメントは、容認できない方法で、それらの権利に干渉していると、我々は考える」

「F1事業の購入者候補はFIAと協議することが義務付けられているという示唆は、誤りである」

「(FIA会長のコメントは)FIAの権限の範囲を超えたものである。個人あるいは組織が、上場企業またはその子会社の価値についてコメントする、特に内部情報を有していると主張または示唆することは、そうすることにより、当該企業の株主および投資家に大きな損害を与える危険性があり、規制上の重大な結果にさらされる可能性があることも言うまでもない」

「これらのコメントがリバティ・メディア・コーポレーションの価値を損なうレベルであれば、FIAはその結果として責任を負うことになる可能性がある」

F1のロゴ

 つまり、リバティ・メディアは、この抗議文によって、FIAはF1の規制の部分にしか権限を持たず、商業面の問題にはタッチできない契約になっていると強調し、もしビン・スライエム会長の発言によってF1の価値が下がるようなことがあれば、FIAはその責任を負うべきであると、警告したことになる。

『Sky Sports News』によると、FIAおよびF1に対して直接取材を試みたものの、コメントを得られなかったということだ。

2022年F1第2戦サウジアラビアGP スタートシーン

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