つのる危機感、罪悪感も…岸田文雄首相に拉致被害者の地村保志さんが早期救出訴え 故安倍晋三さん以来の首相面会

地村保志さん(中央左)と面会する岸田文雄首相。左端は福井県小浜市の松崎晃治市長、右端は松野博一官房長官=1月24日午後、首相官邸

 北朝鮮による拉致被害者、地村保志さん(67)=福井県小浜市=と救う会福井は1月24日、岸田文雄首相と官邸で面会し、拉致問題の早期解決を求める要望書と署名を手渡した。地村さんは自身の帰国から20年が経過しながら、残る被害者の救出が実現していないことに危機感を示し「被害者本人も高齢化しており、今でないと生存のまま救出できない」と訴えた。岸田首相は「政権の最重要課題だ」と解決へ決意を示した。

 地村さんが首相に面会するのは、2019年3月の故安倍晋三元首相以来。救う会福井顧問の松崎晃治小浜市長、同会会長の森本信二さんらが同席した。

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 要望は▽首脳会談など日朝直接交渉による全面解決▽特定失踪者などの真相究明▽若年層への拉致問題教育-の3項目。松崎市長が要望書、地村さんが県内で集めた約5900筆の署名を手渡した。

 地村さんは「世界情勢が複雑で北朝鮮との対話は難しいとは思うが、解決に向け交渉を」と要望。岸田首相は「拉致問題は重要な人権問題であると世界と共有し、政府としても最重要課題として取り組む。条件を付けずに金正恩(キムジョンウン)党総書記と向き合う決意。あらゆるチャンスをものにするべく努力する」とした。面会には、拉致問題担当相を兼務する松野博一官房長官も同席した。

 地村さんは面会後に報道陣の取材に応じ「安定した暮らしをするに従い、帰国できない人たちへの罪悪感のようなものを感じる」と話した。北朝鮮によるミサイル発射や、防衛力強化を巡る国内の議論に関連し「拉致問題が置き去りにされないか」と懸念を語った。

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