J初参戦!『FC大阪』を彩るマスコットや宿敵、「49歳」「引退から復帰」異色の注目選手

2022年度のJFLで奈良クラブに次ぐ2位となり、悲願のJリーグ参入を決めることに成功した『FC大阪』。

アマチュアリーグであるJFLに所属していたころも数多くの取り組みを行ってきたクラブであり、同じ大阪府に2つのビッグクラブがあるという立場から独特の立ち位置を持っている。

歴史

設立されたのは1996年。もともとは広告代理店の草サッカーチームであったが、2007年に大阪府リーグ1部を優勝するなど急速に成長した。

2012年に関西サッカーリーグへと昇格し、2014年には奈良クラブに次ぐ2位に。さらに全国社会人サッカー選手権大会で優勝を果たすと、全国地域サッカーリーグ決勝大会でも2位でJFL昇格を勝ち取った。

なお、2021年2月のJFL開幕前にはクラブ発足以来代表取締役社長を務めていた疋田晴巳氏が急死するという悲劇を経験し、現社長の近藤祐輔氏が突如その後を継ぐこととなった。

スタジアムには今も疋田晴巳前社長のフラッグが出され、J3昇格決定時の記念撮影でも顔写真とTシャツが掲げられた。チームを成長させた恩人への感謝が表されている。

『勝負弱い』と言われたJFLでの8年

JFLでは2015年から2022年のシーズンまで8年間を過ごすことになった。成績は8位、5位、4位、2位、8位、8位、7位、そして2位という推移だ。

下位に沈むシーズンは一つもなかったものの、アグレッシブなプレッシングや運動量が求められるサッカーを志向していたこともあり、JFLでは「夏に著しく調子を落としてしまう」という性格を持っていたことで有名であった。

JFLでは特に真夏でも昼間の気温が高い時間に試合を行わなければならず、選手も他の仕事をしている者もおり、コンディションの維持は非常に難しい。その結果序盤戦のパフォーマンスを維持することができず、順位を落としていた。

しかしながら2022年はようやくそれを克服。プレースタイルの変化や試合のコントロールなどを含めて対策を施し、敗戦の数も8年間で最も少ない「5」に抑えた。

監督を務めたのは、関西サッカーリーグから昇格初年度にかつてガンバ大阪や京都パープルサンガ、ヴィッセル神戸でプレーした森岡茂氏(2015年)、そしてUEFAプロライセンスを所有する和田治雄氏(2016年から2019年まで)、さらにJ昇格を勝ち取った塚原真也氏(2020~2022年)。

塚原真也氏はプロサッカー選手としてのキャリアはないものの、20代前半からアミティエSC京都で指導者として活動し、2016年からはヴィッセル神戸の普及部やU-15に所属した経験を持っている。

ただ、Jリーグで監督を務めるために必要なS級ライセンスを保有していないため、2023シーズンを前に退任。志垣良新監督に後を託し、強化部ダイレクターに転身している。

スタジアム

かつては大阪市のスタジアムを使用していたが、2018年に東大阪市をホームタウンとしてからは3つの会場で運営されてきた。

基本的にはホームタウンから離れた豊中市にある服部緑地陸上競技場を使って試合を行い、2020年から指定管理者となった花園ラグビー場の第2グラウンドでの開催も増加した。

そして2022年には6月の鈴鹿ポイントゲッターズ戦で花園ラグビー場の第1グラウンドを使用し、カズ効果もあって1万2000人を超えるサポーターを集めることに成功。

さらにJリーグ参入までのハードルが観客数の基準のみとなった2022年の最終節MIOびわこ滋賀戦で急遽花園第1グラウンドを再び使用し、さらに1万2813人というクラブ記録の観客数を動員した。

J3リーグを戦う今シーズンは、未定となっている2試合を除き、全ての試合を花園ラグビー場第1グラウンドで行うことが決定している。FC大阪の代表取締役社長を務める近藤祐輔氏は、新体制発表会で「1試合あたり8000人の観客動員を目指している」と話していた。

マスコット

FC大阪のマスコットはこの数年で大きな変化があった。まず誕生したのは「コイ坊」である。

JFL昇格前に作られた彼は大阪の都心にある大川に住む鯉をモチーフにしたキャラクターで、立身出世を表す「滝登り」や「コイ=恋」という由来の一説にあやかったものだった。

しかしながらコイ坊は2018年限りでの引退が発表され、その後新たなキャラクターとして「リーナ&ガーディアン・ティグレ」が誕生する。

女の子の「リーナ」とトラをモチーフにしたキャラクターの「ガーディアン・ティグレ」。当時スポンサーであったアスラフィルムの協力により生まれたが、彼らはマスコットではなく「オフィシャルキャラクター」であった。

そして新たなマスコットとして2020年末に生まれたのが「えふしくん」だ。

水の妖精がモチーフとなっているえふしくんは、それからすぐに現実世界で形となって登場し、FC大阪のプロモーション活動でフル稼働。試合でもファンと交流を行い、急速に存在感を高めていった。

また、東大阪市のマスコットキャラクターである「トライくん」ともベストパートナーのような存在で、試合ではよくともにイベントを盛り上げていた。

ライバル関係

FC大阪は大阪府のクラブということでガンバ大阪やセレッソ大阪との関係が想像でき、またティアモ枚方との試合も「河内ダービー」と呼ばれるが、それほど激しい対立はない。

最もライバルとして挙げられるのは、近隣の県で戦っている奈良クラブだ。

この両クラブは関西サッカーリーグからJFLに昇格したタイミングも、そしてJFLからJリーグに昇格したタイミングも同じである。

しかも関西サッカーリーグも、全国地域リーグ決勝大会も、JFLも、奈良クラブが1位、FC大阪が2位という関係であった。

FC大阪と奈良クラブの試合は「阪奈ダービー」、あるいは奈良と大阪の間にある山岳をモチーフにした「生駒山ダービー」と呼ばれており、両クラブにとって最も大事な試合となる。

注目選手

FC大阪のアグレッシブな戦術を実現している選手といえるのが、ウイングでプレーする久保吏久斗だ。

京都産業大学から2019年にMIOびわこ滋賀へ加入し、そして2021年からFC大阪に移籍。165cmと小柄な体格ながら、圧倒的な運動量と爆発的な加速、そして闘争心溢れるプレーでゴールに迫る。

2022年はシーズンで2得点ながらもチーム全体に与える影響力は非常に大きく、JFLのベストイレブンに選ばれている。

また、関西2部に所属していた2012年からずっとFC大阪に所属し続けているDF岩本知幸もユニークな存在。チームを知り尽くした33歳のベテランCBだ。

さらに、かつてJリーグで「引退」した経験を持つ齋藤隆成も面白い選手だ。京都サンガFCや水戸ホーリーホックなどでプレーし、2018年に藤枝MYFCで現役を離れた。

しかしその後大阪府リーグのルート11に所属し、2019年夏にFC大阪で現役復帰。それから4年半で再びJリーグの舞台に戻ってきたという変わり種のサイドバックである。

そして、メディアで大きな話題を集めているのが選手兼通訳兼アシスタントコーチという3刀流でチームに所属する村木伸二。なんと今年49歳になる年齢だ。

南米でサッカーをしていた経験を生かして外国人選手をサポートする一方、トレーニングではともに汗を流す。もし今季Jリーグに出場できれば、三浦知良に次ぐ最年長記録となるのだ。

J3の開幕戦

そんなFC大阪のJ3リーグ開幕戦は3月4日、鹿児島ユナイテッドFCとのアウェイゲームとなる。

花園ラグビー場第1グラウンドで戦う初のホームゲームは、3月18日(土)の14時から、いわてグルージャ盛岡との試合でキックオフだ。

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新たにJリーグに加わったチームがどのような戦いを見せるのか、サッカーファンが大きな関心を寄せているはずだ。

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