タリバンが女性のNGO就労を禁止「私たちは劣っている?」アフガン女性、不満の声

アフガニスタン・カンダハル市にあるMSF結核病院で働く看護師たち=2022年 © Lynzy Billing

「毎日、これが勤務最終日になるかもしれないと恐れています。職場に通うのも難しくなるばかりです」

こう嘆くのは、国境なき医師団(MSF)で働く女性のアフガニスタン人スタッフだ。昨年末、タリバン暫定政権によって女性が非政府組織(NGO)で働くことを禁じられ、医療現場でも不安が広がっている。いまのところMSFを含む医療団体はこの措置から除外されているが、今後も女性職員が働き続けられるかは正式に保証されていない。

NGOによる人道支援への依存度が高いアフガニスタンでは、医療分野のNGOに勤務する女性が不可欠だ。同国にいるMSFの医療スタッフは、半数以上を女性が占めている。

しかし前述のスタッフは、女性の自由な移動を制限するため、すでに検問所の係員があらゆる口実探しをしている、と話す。「つい先日も、病気になった妹が検査で病院へ行く途中、検問所で止められました。マフラム(男性親族)の付き添いがいないという理由で、寒い中、兄が来るまで50分くらい外で待たされたのです。私たち女性は、どこか劣った存在であるかのように扱われる……それは辛いものです」

MSF結核病院で看護師が2歳の女児の血圧を測る=2022年 © Lynzy Billing

声を上げる医療現場の女性たち

今回の禁止令は、女性たちやその家族に心理的な負担を強いているだけではない。高い失業率に加え、アフガニスタン中央銀行の資金の大部分を握る米政府や諸外国による制裁によって、この国は社会・経済の危機に陥っている。その状況をエスカレートさせるだろう。

家族7人を養うMSFの女性スタッフ、ベネシュは「男性は働けなかったり、国外に逃亡したり、亡くなったりしているため、アフガニスタンでは女性が一家の大黒柱であることが多い」と説明する。「失業すれば誰も養えなくなります。毎日、“もう働いてはいけない”と言われたらどうしようかと思い悩んでいます」

女性は一家の大黒柱。失業すれば誰も養えなくなる

MSFが支援するブースト病院の救急処置室で、診察を待つ女性たち=ヘルマンド州、2022年 © Oriane Zerah

そしてもしこの禁止令が医療従事者にも及んだら、女性患者にとって大きな打撃となる。アフガニスタンでは、男性が女性を診療することが一般的に受け入れられていない。「誰も女性を治療することができなくなります」とMSFのアフガニスタン人スタッフ、ファルザネは話す。妊産婦や赤ちゃんの死亡率が上がるなど、多くの点で女性を苦しめることにつながりかねない。

「女性の健康は家族全員の健康にも関わっています。産前・産後診療が受けられなければ、子どもたちの命も危険にさらされるのです。この禁止令で不利益を被るのは女性だけではありません。国全体にも及ぶでしょう」

「アフガニスタンの女性たちのことを忘れないでください」と言うのは、同じくアフガニスタン人女性のソラヤだ。「女性と男性の両方がいなければ、どんな社会もうまくいきません。よりよい社会にするには、私たち全員が関わる必要があるのです」

どんな社会も、男性と女性の両方が関わらなければうまくいかない

ブースト病院内にある女性患者の入院病棟で働く女性スタッフ=2022年 © Oriane Zerah

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