郵便投票訴訟 障害女性の請求棄却 岡山地裁判決「投票所に行ける」

岡山地裁

 2020年の岡山県知事選で、障害等級の違いで郵便投票を利用できなかったのは「法の下の平等」を定めた憲法に違反しているとして、脚が不自由な岡山市東区の40代女性が国に約150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、岡山地裁は25日、請求を棄却した。

 女性は、重い順に1~7の等級に分かれる下肢障害で4級と認定されている。知事選では自宅から投票所までの約1キロを歩くのが難しく、郵便投票を利用しようとしたが、対象が1、2級に限られているため断念。「選挙権の行使を侵害された」と訴えていた。

 判決理由で上田賀代裁判長は、女性が介護タクシーで通院したり、自転車で外出したりしている点を挙げて「投票所に行くことが不可能、または著しく困難ではなかった」と指摘した。

 さらに「憲法上、国は国民が選挙権が行使できない場合に必要な措置を取る責務がある」と示した上で「4級の人が投票所に行けないとはいえない」と述べ、選挙権の行使は可能と判断。郵便投票の利用に制限を設けた公選法の規定を改正しないのは「国会の立法不作為だ」とした女性の主張に対しては「4級の人を制度の対象とすることが議論されたことはなく、立法課題に取り上げる契機も認めがたい」として退けた。

 女性は「障害者の1票を軽んじる判決で納得できない」と話し、控訴の意向を示した。選挙を所管する総務省は「国の主張が認められたものと受け止めている」とのコメントを出した。

根拠明確でない

 日本障害者協議会理事で日本社会事業大の佐藤久夫名誉教授(社会福祉学)の話 判決は、4級の人は投票所に行くことができるとしたが、明確な根拠は示されていない。タクシーを使えば行けると指摘した点は郵便投票が認められている1、2級も同じではないか。全ての有権者が投票しやすいよう最大限の配慮をするべきで、国会や政府の努力を促してほしかった。

全障害者対象に

 岡山理科大の川島聡教授(障害法)の話 国連の障害者権利委員会は日本に対し、全ての障害者にとって投票の手続きや設備を適切かつ、利用しやすくするため公選法を改正するよう勧告している。判決は、4級を郵便投票の対象とすることが国会で議論されていない点に言及したが、原告のように困難を抱えている人もおり、全ての障害者に認める道筋を付けるべきだ。

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