吉田建&伊藤銀次!出演バンドに勝るとも劣らない「イカ天」審査員辛口コンビ  「お二人は仲が悪いんですか?」 ―― いやいや、そんなコトないんですよ!

『誰もが予想できない人気番組に!伊藤銀次が「イカ天」の審査員になったワケ』からのつづき

イカ天、個性的なレギュラー審査員

80年代の終わり頃に大ブレイクしたテレビ番組、『三宅裕司のいかすバンド天国』。軽い気持ちで出演した時は、まさかあんな人気番組になるとは、1mmも思わなかった。その人気の根源となったのは、もちろん、それまで世に出ていなかった、これまでのメジャーのシーンにはなかった、とても個性的なバンドたち。それが音楽ファン以外の視聴者をも引きつけて新たなエンタテインメントを土曜日の深夜に生み出したからだ。そして、それとともに、萩原健太さんを中心とする、出演バンドに勝るとも劣らない、個性的なレギュラー審査員のみなさんの存在も大きかったのではないかと思うね。

発声などの目線からヴォーカリスト中心にアドバイスするオペラ歌手の中島啓江さん、バンドのコンセプトを中心に審査をするタクティシャンのグーフィー森さん、そしてミュージシャンの立場で、演奏内容など音楽的立場で評する音楽プロデューサー&ベーシストの吉田建、そしていつも総論的に全体をみごとにまとめていた音楽評論家の萩原健太さん。以上4人の審査員の役割はみごとにカブることなく明確にすみ分けられていた。

5番目の審査員、伊藤銀次の持ち味とは?

さて、5番目の審査員の僕は… といえば、吉田建と同じ音楽プロデューサー&ミュージシャン。はじめて番組に参加した時、これは普通に行くと、コメント内容が建とカブってしまっておもしろくないな… ととっさに感じた。

そこでシンガーソングライターでもある僕は、自分で詩も書くので詩に重きをおいて審査することで存在感を出していこうと決めたのだった。するとそのうち、へんてこりんな和製英語の詩をつけているバンドがでてくると、司会の三宅さんは、必ずといっていいほど僕にコメントを振ってくるようになった。そこから詩に関して “辛口な審査員、伊藤銀次” が誕生したのだった。

辛口と言えば、この番組のもうひとつの呼び物として、僕と吉田建との辛口コンビ「建&銀次」が、審査コメントの最中にやりあう様子もかなり話題となったね。

「お二人は仲が悪いんですか?」

―― という質問をいまだにされることがあるのだが、実は建と僕は、このイカ天の場面が初顔合わせではなく旧知の仲。

前回『誰もが予想できない人気番組に!伊藤銀次が「イカ天」の審査員になったワケ』にも書きましたが、ふたりは共に、70年代には、「私は泣いています」のヒットでおなじみのりりィさんのバックバンド、“バイ・バイ・セッション・バンド” のメンバーだった。さらにその後、80年代に入って、僕が編曲を担当することになった沢田研二さんのバンドになんと、彼がいたり… と、継続的ではないが、以前から音楽ライフを共にしてきた仲。

きっとなにか縁があるのだろうか、こんな場面でもう一度出会って、まさかの「建&銀次」として人気者になるとは思いもよらなかったよ。このコンビが誕生した日のことは今でもはっきりおぼえている。

「建&銀次」の誕生秘話

あれは、もう名前は覚えていないが、確か、いかにも… のロックというよりはちょっとおしゃれなサウンドのバンドが出た時のこと。三宅さんからコメントを振られた僕がそのバンドを評して “ソフィスティケイト” という言葉を口にした時だった。いきなり横から建が、「お前こういうのをソフィスティケイトっていうわけ?」と、だしぬけにツッコんできた。カチンときた僕は、うかつにもとっさに「俺がしゃべってんだから、だまってろ」とリアクションしてしまったのだ。

“しまった! なんてところを生放送で見せてしまったんだ” と後悔ももう手遅れ。どうしたもんか… とうろたえているところで番組はCMに突入。するとプロデューサーがやんややんやと手を叩きながら僕たちのところへやってくるではないか。

「いやぁ、サイコーサイコー! もっとやってください!」

帰りのタクシーの中でも「やっちまった…」としょげかえっていた僕。1週間のあいだに気持ちをとりなおして翌週の収録になんとか臨んだのでした。

番組が始まって、いつものように審査員の紹介が進んでいき、吉田建のところまでくると、なんと、「建&銀次」のテロップが画面に出て、ふたりはツーショットに!!

「なんてこった! これがテレビというものなのか!!」

―― テレビの凄さをしっかり実感した瞬間でした。

それからというもの、ふたりのどちらかがコメントしている時は、かならずツーショットに。ここに「建&銀次」の誕生となったのでした。

この「建&銀次」に限らず、審査員の5人のおもしろいコメントやカラミは、打ち合わせなどしていたわけではなく、自然にできあがっていったもの。この組み合わせは偶然が生んだ奇跡的な産物と言ってもよかった。

僕たちは狙ってたわけでも、意識してたわけではなかったけれど、視聴者のみなさんには、まるで『笑点』の大喜利のように見えて、面白かったのではないかと思う。

それでは、次回は “僕の心に響いた個性的な出演バンド” についてのお話を!!

カタリベ: 伊藤銀次

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