「次代の子どもたちに残せたら。その始まりに」跡継ぎ不足や過疎化…地域の課題解消へ自慢できる静岡の“宝物”とは【現場から、】

地方の優れた商品を国内外に発信する、「にっぽんの宝物プロジェクト」。静岡県の代表を決める予選会が開かれました。知恵や文化を守ろうとする参加者の「宝物」とは?

「静岡の宝物グランプリ」。このプロジェクトは、後継ぎ不足や過疎化など多くの課題を抱える地方の事業者に対し、自慢できる「宝物」を国内外に発信する機会を設けようと2009年から始まりました。静岡県内では2回目の開催です。

審査員が最初に訪れたのは、丸子の「丁子屋」(静岡市駿河区)。創業427年、とろろ汁のお店です。

<丁子屋 14代目 柴山広行さん>

「浮世絵の中の旅人になった気分でタイムスリップしてもらって、とろろ汁を楽しんでいただきたい」

審査員は観光業界や飲食店業界などの幹部たち。商品のほか、志をもって作り上げる「人」や「ストーリー」も評価の対象です。

<丁子屋 14代目 柴山広行さん>

「よくかき混ぜて、音を立てて食べること。それが一番おいしい」

伝統の味に、ご満悦な審査員たちですが…

<『にっぽんの宝物』羽根拓也総合プロデューサー>

「シンプルにこれというのもわかるんだけれども、トッピングでも構いませんので、お好みでこういうのを選んでいただけますよ、というのがあってもいいかな」

<審査員>

「お客さんとして来るのとは全然違うので難しいところだなと思います」

静岡県掛川市の「キウイフルーツカントリーJapan」。東京ドーム3つ分の広大な敷地で80種類のキウイを栽培しています。

<審査員>

「1本の木から(キウイの実は)どれくらいとれるんですか?」

<キウイフルーツカントリーJapan 平野耕志代表>

「種類ごとに違うんですけど、100個から200個くらい。この中でキャンプやバーベキューができる場所になっています。出た煙がキウイの病害虫予防になっております」

農園では、ヒツジの力を借りて草刈りをするなど、SDGsに力を入れています。ハーブの収穫体験をしながら、茶畑と農園を見下ろせる高台に到着。キウイとハーブのオープンサンドを頬張りました。

<審査員>

「パンよりかは野菜がたくさん摂れてもっとキウイを上に乗せていっぱい食べたい」

「静岡でキウイというのが出てこない。もう少しなんでキウイなのかというところがあってもいいのかな」

<キウイフルーツカントリーJapan 平野耕志代表>

「きれいな茶園の風景なんですけど、ところどころに耕作放棄地とか後継ぎの農家がいない方々の園地が広がっている地域が非常に多いです。ここが一つの拠点となって課題解決になる提案できることができたらな」

最後の審査は静岡県藤枝市の竹林で行われました。「放置竹林」が増え、動物の居場所がなくなったり、土砂崩れの原因になったりと課題があります。こうした竹害と獣害を同時に解決しようと、竹を活かす団体「竹部(ばんぶ)」は、メンマとイノシシの肉を煮込んだ商品を開発しました。

<『にっぽんの宝物』羽根拓也総合プロデューサー>

「歯ごたえがいいな」

<審査員>

「子どもの教育にもすごくいいと思いますし、様々な体験ができるようなスペースになっていくと思う」

「ジビエが好きな方は手に取るかもしれないけど、ジビエを食べたことがない人は…どういうところを狙っているかが狭いので、広げた方がいい」

<竹部 松澤圭子代表>

「商品がきっかけでこういった活動・場所を知ってもらいたいと思っていたので、すごく手ごたえを感じました」

翌日のプレゼンテーション審査。2つの部門でグランプリを決めます。素材・加工部門では、そば粉を使ったバゲットがグランプリに。島田市の八房梅を使った梅干しなどが準グランプリを受賞し、全国大会への切符を掴みとりました。そして…

<丁子屋 14代目 柴山広行さん>

「次代の子どもたちに東海道という楽しい舞台を残せたらいいな、その始まりが丁子屋、とろろ汁からだったらうれしいな」

<竹部 松澤圭子代表>

「竹害も獣害も見方を変えれば宝物。『メンマ亥のイチバン』をよろしくお願いします」

<キウイフルーツカントリーJapan 平野耕志代表>

「畑を栽培する場所から人々が楽しむ畑へ変えていくことで、地域の農家も畑の価値観を再認識し、農業の活性化につながります」

12分という限られた時間の中で思いをぶつけました。

<審査員>

「体験部門グランプリ…掛川サステナブルファームステイ」

遊びながら自然や農業を学べる体験型農園が評価され、キウイフルーツカントリーJapanがグランプリに選ばれました。

<キウイフルーツカントリーJapan 平野耕志代表>

「他の事業者とコラボして、より優れたものを作る。これがこれからの課題かなと思います」

静岡代表となった「宝物」。2月、全国へと舞台を変え、さらなる輝きを放ちます。

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