シニア世代や投資初心者が不要な金融商品やサービスを見抜くためのポイントとは?

金融消費や金融サービスにはさまざまな種類があり、その特性やリスクとリターンもバラバラです。それらの中から、自身にあったものを選ぶには、どうすればいいのでしょうか?

そこで、CFPでシニア投資コンサルタント・西崎努 氏の著書『60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用』(アスコム)より、一部を抜粋・編集して不要な金融商品やサービスを見抜くポイントについて解説します。


不要な金融商品、金融サービスを見抜く5つのポイント

投資にはさまざまなスタンスや戦略があります。超短期でハイリスク&ハイリターンを狙うのも、本人の理解のうえで無理のない投資資金であればいいと思います。

しかし、シニア世代をはじめ多くの投資初心者が基本とすべきは分散投資、そして許容できるリスクに沿った適切なリターンです。 欲張って高いリターンを目指すのが間違いのもと。必ずといっていいほど、株式相場が調整するタイミングで大切な資金を減らすことになります。

投資に「一攫千金の夢」やスリルを求めてはいけません。ほとんどの人にとって投資は、「たいしてすることがない、退屈なくらいがちょうどいい」ということを忘れないでください。

もうひとつ、シニア世代をはじめ当社に問い合わせがあるご相談者様で、意外によく見られるのが、投資に対する自分の考えと実際に買っている金融商品がまったくズレてしまっているケースです。

「安定的な運用をしたい」といいながら、リスクの高い株式を中心とした資産配分になっていたり、運用コストが高い商品ばかりを買っている方がいます。なぜそうなっているのかお聞きすると「優良な銘柄に分散投資しているから」「高配当銘柄への投資で配当を継続して受けとれるから」「おすすめされた商品なので」などの理由が大半です。

本人の金融リテラシーが十分でないところに、金融機関は自分たちが売りたいもの、相場の状況に応じて売りやすいものを勧めているから、こうなるのです。そして、相場の状況が急変すると大きな損失に見舞われるケースが後を絶ちません。

自分の目標より高いリターンを求めるということは、その分のリスクを負うことです。高いリスクをとってでも資産を大きく増やしたいのか、それともリスクを抑えて安定的に増やしたいのか。どちらかしかなく、低いリスクで大きなリターンは基本的にありえません。

安定して増やしたいのであれば高望みをするのではなく、自分が取れるリスクの範囲内のリターンを目指すべきです。もちろんそのリターンが期待している収入を満たさない可能性もありますが、「もしうまくいくなら大きく儲けたい」という期待に賭けるのは、典型的な失敗パターンです。

金融機関の営業担当者も、相場が好調なときは「期待できます」などといって株式型の投資信託を勧めながら、相場が変わって値下がりしたら今度は「長期投資なので様子を見ましょう」と話をすり替えてきたりしますが、間違ったことは言っていません。

シニア世代のみなさんも投資初心者のみなさんも、そうした話のカラクリを見抜けるようになっていただきたいと思います。

シニア世代や初心者が警戒すべき金融商品・金融サービスの見抜き方についていま一度、確認しておきたいと思います。結論からいうと次の5つがポイントです。
1.リスクや失敗時の話より、良い話ばかりをする
2.コストの説明が曖昧で、運用中の費用がはっきりしない
3.過去実績の良い結果が、将来も続くかのように提案してくる
4.仕組みが複雑で何度聞いても理解できず、売買の判断がつかない
5.ライフプランや将来の資金計画を考慮せず、商品提案をする

それでは今回は、1について見ていきましょう。

リスクや失敗時の話より、良い話ばかりをする

営業員「今は銀行にお金を預けておいても金利なんて雀の涙ですよね。物価はどんどん上がるし、年金の先行きはわからないし、心配じゃないですか?」

投資家「そうだよね。運用の話はよく聞くけど、何かいい投資はないかな…」

営業員「今の時代、資産運用は必須ですよ。株式投資だとリスクが高いですが、長期分散投資でバランスの良い運用をしておけば、リスクを抑えて安定したリターンが期待できます。プロに運用も任せておけば手間もかかりませんし」

投資家「安定した運用ならいいね。そんなに増えなくてもいいから減らない投資のほうがいいよ。でもそんなにうまくいくの?」

投資にうまいだけの話はありえない

日々商品の販売に力を入れている営業員は、人の心に入り込むのが上手です。詐欺ではないので、「確実に儲かる」「あなただけに特別」「●%は固い」などのような断定的な言葉は使いません。しかし「損をしないで儲けたい」という投資家の心理を巧妙に突いてきます。

投資とはそもそも何らかの投資対象に資金を投じ、利息などの収益(インカムゲイン)と売却時の値上がり益(キャピタルゲイン)のトータルでプラスを目指すものです。

そして、投資では「元本保証」はありえませんし、「損をしないで儲けることができる」ように捉えられる表現は好ましくありません。お客様が許容できるリスクを適切に説明し、良い話よりもむしろ、どういったときに損をすることが想定されるのか、悪い話を重点的に話すべきです。

もちろん提案するからには良い投資だと考えているはずですから、商品自体がおすすめという結論になるのは当然です。ですが、「あなたにとって」良い投資といえるかは別の話です。

リスクとリターンは比例する

投資における大原則は、「リスクとリターンは比例する」ということです。

ここでいう「リスク」とは「危険」という意味ではありません。投資の世界で「リスク」とは、投資対象の市場価格が変動すること、価格の変動率を指します。「リスクが高い」とは「価格が大きく変動する」ことであり、「リスクが低い」とは「価格の変動が小さい」ということです。 価格の変動が小さいほど、期待リターンからの変動も小さくなるため、安定した運用ということになります。

【画像】運用目的別の資産配分例(イメージ)

したがって、価格が大きく変動するものはリターンと損失がそれぞれ大きくなる可能性があり(ハイリスク・ハイリターン)、価格がそれほど変動しないものはリターンも損失もそこそこにとどまる(ローリスク・ローリターン)、ということです。

さらにいうと、リスクとリターンは「正確に比例する」わけではありません。 基本的には投資商品の「期待リターン<想定リスク」となり、常に損失が出る可能性もあれば、想定以上に利益が出る可能性もあります。

リスクよりもリターンのほうが高い商品は「お買い得」ですが、オープンな市場では極めてイレギュラーです。 人気のあるIPO(新規公開株)などは、利益が出る可能性が非常に高いといえますが、誰でも自由に購入できるわけではなく、抽選であったり支店の営業員からの配分でしか購入ができなかったりします。

例えば、期待リターンが年3%の金融商品と、同じく年10%の金融商品があったとき、多くの人は10%の金融商品のほうに注目しがちです。しかし、期待リターン10%の金融商品には一方で20%の価格変動のリスクがあり、期待リターン3%の金融商品は、5%の価格変動のリスクだとしたらどうでしょう。

安定した運用を考え、しかも長期的な運用を行うなら、期待リターン3%で予想リスク5%の投資対象のほうが、予定通りに投資目的を達成しやすいでしょう。

もしかすると年10%のリターンが続く結果になる可能性もゼロではないですが、それは一時的なラッキーであり、ギャンブルのようなものです。

「リスクとリターンは一時的に乖離すること(特にリターンがリスクを上回る場合)もあるが、結局は一定のところに落ち着く」 という想定をぜひ頭に入れておいてください。

60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用

著者:西崎努
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