“国宝”所有数1位は京都ではない? “天然記念物”が一番多い都道府県は? 意外と知らない「文化財」ランキング

昨年12月5日、国の有形文化財に登録されている髙野醤油味噌醸造店(新潟県)で火災が起きた。幸いけが人はなかったが、「文化財の火災」は歴史的に見ても少なくない。

1949年1月26日に法隆寺(奈良県)の金堂で火災が発生。貴重な仏画が焼失したことを教訓に、消防庁と文化庁は1月26日を「文化財防火デー」と定め、毎年防災訓練などを行っている。

今年も全国各地の文化財所在地で、消防訓練が実施された。東京でも重要文化財に指定されている聖徳記念絵画館で消火訓練が行われた。

消防総監、総務省消防庁長官らが視察する中、自衛消防隊等や四谷消防団の約60人が訓練に参加。 絵画館1階の茶室から出火したという想定で、まず自衛消防隊が来館者の避難誘導や初期消火活動を展開した上で、119番通報を行った。通報を受けて駆けつけた消防隊は、まず人命救助活動を優先。屋上に取り残された車椅子と介助者をはしご車によって救出した。

訓練の様子。はしご車が屋上に取り残された人を救助する中、地上でも人命救助が行われている(1月26日弁護士JP編集部)

最後に、記念館に向けてホースで一斉に放水し、消火活動を行った。その際、上空には消防ヘリコプター「ちどり」も通過した。

一斉放水の様子。上空を消防ヘリコプター「ちどり」が通過する(1月26日弁護士JP編集部)

訓練後、前田一浩消防庁長官は、消防隊員らに向け「実戦さながらに訓練に取り組む姿を見て、地域をあげて文化財を火災から守ろうとする気概がひしひしと感じられ大変心強く思った。聖徳記念絵画館をはじめとする文化財は、長い年月の間大事に守り伝えられてきた貴重な国民の財産。万が一災害が発生してしまった際には、訓練の成果を十分に発揮できるよう、より一層文化財防火に取り組んでほしい」と話した。

そもそも文化財とは?

文化財保護法に基づき、美術工芸品、建造物(国宝、重要文化財など)のほかにも、歴史的な街並み・景観、天然記念物と呼ばれる動植物や鉱物、さらには芸能など“無形”のものも指定される「文化財」。個人や法人が所有・管理しているものも多く存在している。

文化財の所有者は国・県指定の区分に応じて助成金制度や、相続税や固定資産税などの税制上の優遇措置を受けることができる一方で、維持管理や保存修理を行う必要があり、「文化財防火デー」はそれら所有者に向けての注意喚起の意味も担っている。

“文化財”保有数ランキング

ところで、国が指定する「文化財」が多い都道府県というと、どこを想像するだろうか。

多くの歴史的建造物の残る京都・奈良。天然記念物なら、独自の生態系が育まれる北海道や鹿児島の奄美群島などがイメージされるかもしれない。

実際は、文化財の保有数に限れば、東京都が一番多い。現在、国内で文化財として指定されているものは、記念物や保存技術の保持者等も含め3万1千件以上。そのうち10%近い2834件を東京都が保有している。

内訳としては美術工芸品がとびぬけて多く、国宝だけで286件、重要文化財も含めれば2546件におよぶ。さらに、そのうち国宝89件と重要文化財648件は「東京都国立博物館」一か所に収蔵されているというから驚きだ(※民間からの委託品は除く)。

東京都国立博物館HP(https://www.tnm.jp/)より

保有数第2位は、京都府。世界遺産にも指定されている元離宮二条城など建造物の他に、寺社に伝わる「掛け軸」や「びょうぶ絵」なども多い。続く保有数第3位は、奈良県。国宝の建造物は全国最多の64件を有する。「文化財防火デー」のきっかけにもなった聖徳太子ゆかりの「法隆寺」や、聖武天皇によって建立された「東大寺」など日本を代表する“名建築”が軒を連ねる。

“文化的景観”が評価された熊本県、“民俗有形文化財”が多い県は…

阿蘇の風景(KIMURA SOUGO/PIXTA)

地域風土と人々の生活により、形成された景観地である「重要文化的景観」が一番多いのは熊本県だ。日本最大の活火山である「阿蘇山」周辺にある、多くのカルデラを利用した各地域の文化が評価された。

衣食住、年中行事などの風俗慣習、民俗芸能に用いられる衣服など、伝承された有形の“もの”を保護する「重要有形民俗文化財」が多いのは新潟県である。世界有数の豪雪地帯である十日町市の「積雪期用具」、杉のくりぬき材を用いて作られ、地びき網漁として使われた「木造和船どぶね(はなきり)」などがある。

「史跡名勝天然記念物」が多いのは史跡の多い奈良県だが、「天然記念物」に限ると、実は宮崎県が多い。

青島の鬼の洗濯岩(yyama/PIXTA)

周囲1.5kmほどの青島の亜熱帯性植物群落や、「鬼の洗濯岩」とも呼ばれる「隆起海床」と「奇形波蝕痕」、都井岬の「ソテツ自生地」などが指定されている。

文化財を持っていない都道府県はない

ちなみに宮崎県は、徳島県と並び「国宝」を所有していない県である。しかし、「文化財」をひとつも保有していない県はない。

文化庁がインターネットで公開している「国指定文化財等データベース」(URL入れるorリンク)では、文化財の分類別や都道府県別に文化財を調べることができるほか、位置情報を利用して現在地に近い文化財も探すことができる。

案外、身近に存在している文化財。自分の住む街や、地元にはどんなものがあるのか、「文化財防火デー」を機会に調べてみてはいかがだろうか。

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