酪農に新たなビジネスモデルを「ミルクデザイン」(北海道)

今回紹介するのは、酪農の新たなビジネスモデルを目指す、ミルクデザインの山田尚大社長。北広島市出身。北大大学院を修了し、横浜市のIT企業に勤めていた。

子どもが生まれたことを機に、食に関心を持つようになった。そこで出会ったのが、グラスフェッドミルクだ。グラスフェッドミルクとは、牧草だけで育てられた牛から搾る牛乳のこと。市販の牛乳と比べて、ビタミンEやベータカロテンが多く含まれている。

西興部村の萩原牧場。60ヘクタールもの広大な牧場で飼育するのは、わずか30頭。

今の酪農は、乳量を増やすため、穀物飼料を与えるのが一般的で、牧草だけで育つ牛は圧倒的に少数派。「ストレスフリー」の牛たちは、とても穏やかだ。

萩原さんは「この牛乳はこれまで消費者に届いていなかった。ミルクデザインができたことで今それができるようになってきて、単純にうれしい」と話す。萩原牧場のグラスフェッドミルクが消費者に届かない理由は、流通の仕組みにある。一般的な流通に乗せると、ほかの牧場の牛乳と一緒に加工されるため、独自で6次化に取り組む余裕のない酪農家は商品にできない。

そこで山田さんが考えたのが、牧場近くに「少量多品種」の製造ラインを持つ小規模な専用工房を作るというアイデアだ。ミルクデザインの工房は、120平方メートルととてもコンパクト。ソフトクリームの素のほか、牛乳・バター・チーズを作っている。今後、ヨーグルトやアイスクリームも商品化する計画だ。

山田さんは「このモデルを真似したような小規模な乳製品工房が、北海道や全国に点々とできるということが、最終的には乳製品を豊かにしていくことにつながると思う」と話す。
北海道が誇る牛乳。新たな仕組みをつくることで、消費者や酪農家の選択肢が広がり、食がより豊かになりそうだ。
(2023年1月28日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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