【おんなの目】 さあ、出航だ

 穏やかな日和の午後、散歩に出かけた。新年から家でゴロゴロしていたので、運動せねば、とウォーキングシューズの紐を強めに結んで歩きだした。角を曲がると、久保田さんにばったり。「おめでとうございます。今年もよろしく」とにっこり挨拶を交わす。マスク姿なので目と両頬の膨らみが少し見えるだけだが、去年の彼女より目が柔らかだ。しばらく行くと、山見さんが犬を連れて歩いていた。これまたニコニコ顔だ。久保田さんと同じ新年の挨拶を交わして、ちょっと犬に愛想した。山見さんは「遊びにいらっしゃいよ」と去年より大きな声で手を振りながら言った。スーパーの前では、秋山さんと石田さんが立ち話をしていた。マスク姿の二人を見ると、両人共、去年より全体から醸し出される雰囲気が落ち着いて包み込むように優しいのだ。

 町内会の皆さん、確かに去年より明るく清々しい顔になっている。宝船に乗った七福神を思い出した。

 ほら、向こうから歩いてくる笑みをたたえた痩身の富田さんは、寿老人。今年の富貴長寿をもたらしてくれる。「おーい」と後ろから田村さんが肩をたたく。こちらは笑門来福の布袋尊。卵を買っているのは村木さん。ショールを肩に、これはこれは愛嬌縁結びの弁財天。町内会は宝船だ。さあ、出航!

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