「アクターズ・ショート・フィルム3」で監督初挑戦の玉木宏が主演・林遣都に感謝。「すべてを通していいあんばい。行き過ぎないリアクションで演じてくれた」

WOWOWで2月11日に放送・配信される「アクターズ・ショート・フィルム3」(午後8:00)の1作となる「COUNT 100」の監督を務めた玉木宏と、主演の林遣都が、作品への思いや撮影秘話を語った。

2021年にWOWOWが開局30周年を記念して行なったプロジェクト「アクターズ・ショート・フィルム」。その第3弾となる今回も、予算・撮影日数など同条件で5人の俳優が25分以内のショートフィルムを制作し、世界から6000本超のショートフィルムが集まる米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(SSFF & ASIA)のグランプリ、“ジョージ・ルーカス アワード”を目指す。玉木のほか、監督を高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎が務める。

「COUNT 100」は、自身もボクシングの経験がある玉木が、ボクシングを舞台に自らのメッセージを投影した作品。林が演じるのは、かつては日本ライト級チャンピオンだったプロボクサー・加護光輝。防衛に失敗し自信をなくし、2年経った現在では全く勝てなくなった光輝は、焦りと不安だけが大きく膨らんでいく。しかし、ふと受け取った1枚のチラシによって人生が大きく動き出す。

玉木は「アクターズ・ショート・フィルム」への参加には興味があったそうで、「1回目、2回目の作品を見ていて、よく知っている人たちが監督をやっていることは知っていました。それを(『2』で監督を務めた)永山瑛太くんと話している中で『いいなぁ。やってみたいなぁ』と思っていたので、お話をいただいた時は願ったりかなったりでした。監督をやりたい気持ちはずっとあったのですが、やるにあたってどういう題材にしようかな?ということは、わりと早い段階で考えました」と明かす。

ボクシングを題材に選んだ理由については、「自分が今何を伝えたいか?ということを大切に考えた時、“俳優”というのはある意味で二面性のある職業であり、言ってしまえば別の誰かがやっても成立してしまうかもしれないもので、そういう自分ではなくてもいい、“誰か”に乗っ取られる怖さみたいなものを表現できたら、面白い世界になるんじゃないか」と考えたそう。

監督・玉木の希望で主演オファーを受けた林が、「お話を聞いて、とてもうれしかったです。この企画自体は耳にしたことはありましたが、今回、玉木さんが監督と聞いて、憧れの俳優であり先輩なので二つ返事でぜひやらせていただきたいと思いました」と言うと、玉木が「連絡先は知っていましたが、こちらから打診すべきなのか? 正式にWOWOWさん側からオファーしてもらうか?と考えて、WOWOWさん側からオファーしてもらいました。でも、後から連絡はしました(笑)」と出演依頼の経緯も披露。

加えて、林が1人2役を演じ、その生活が交互に描かれているシーンに関して、玉木は「遣都くんがこの役を引き受けてくれてよかったと思うし、さすがだなと思うシーンがたくさんありました。説得力を見せてくれるというか瞳の輝き一つで全然違う人に見えて、だからこそ成立したのだと思います。後付けで『●日経過』というのは入れていますが、遣都くんの演技にすごく助けられました」と絶賛し、「すべてを通していいあんばいだったと思います。もし遣都くん以外の人が演じたら、トゥーマッチだっただろうなと感じる部分もありました。1人2役だったので、遣都くんにとっても見えない空間での演技だったと思いますが、本当にこの物語、この世界観を、行き過ぎないリアクションで演じてくれたと思います」と信頼感をにじませた。

一方、林は玉木の監督ぶりを見てきて、「また玉木組があったら、どんな役でもいいので毎回参加したいと思うくらい充実した時間でしたし、俳優さんが監督をやってみたという現場ではまったくなく、いつも経験している通りの撮影現場で、監督が中心に立っていて、皆さんがついて行くというチーム感がありました。迷いがなく、まとまって、限られた時間の中で想定以上のことが生まれていく、気持ちのいい現場でした」と回想。

玉木はテークを重ねない監督だったそうで、林は「撮影は2日間だったんですが、まずクランクインして最初のカットが冒頭のシーンで、主人公が歩いてきて、チラシを手渡されて振り返るというシーンでした。ロケでエキストラの方たちもいたのですが、一発OKだったんですよね(笑)」と話し、「さすが玉木さんだなと思いました。こういう挑戦的な企画に対しても迷いがなく、引っ張っていってもらえそうな気がして、一気に撮影の2日間が楽しみになりました。全部、答えをいただけるので、信頼しきって玉木さんが思い描いたものに近づけるように挑んでいきました」と充実した表情を見せた。

そして、玉木は「僕の主観かもしれませんが、監督が作品を残す意味というのは、今の時代を映すものなのか、 その人が伝えたい思いなのか、その両方かもしれませんが、そういう意味合いがないといけない気がして。僕が、そういう作品を見るのが好きということがあると思います。僕自身が今、考えていることが、この『COUNT 100』という作品を通して、何か伝わればいいなと思っています。冒頭の話に戻るんですけど、俳優は二面性があって、誰か違う人に演じられているかもしれない、そういう怖さや不安を作品を通して伝えることができれば意味があるものになるのではないかと」と監督として意識したことを口にする。

この経験を踏まえての、今後の監督業への期待も高まるが、「今回、何が難しかったというとセリフを考えることが難しかったんです。セリフに人格が込められると思うので、登場人物が少なければ埋め切れると思いますが、登場人物が多くなってきて、それぞれの人格をちゃんと成立させていくのは…。いろんな方向から作品を見ていかなくてはいけないと思うので、なかなかセリフを考えるのは奥が深くて難しいなと、あらためて感じたところです。なので長編は今の段階ではちょっと難しいかもしれない、という思いです」と率直な心境を述べた。

取材・撮影/黒豆直樹
ヘア&メーク/渡部幸也(riLLa)・Yukiya Watabe(riLLa)[玉木]、中西樹里[林]
スタイリング/上野健太郎[玉木]、菊池陽之介[林]

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