変顔多彩“こわもて大根”の絵本 わびみよさん制作、倉敷で原画展

絵本「にらめっこだいこん」

 主役は、いかつい“おじさん顔”の大根。動物や子どもたちを笑わせようと多彩な変顔を繰り出す…。不思議で愉快な絵本「にらめっこだいこん」が出版された。岡山市出身の女性絵本作家わびみよさん(38)=埼玉県在住=のデビュー作だ。インパクト抜群の作品を紹介する原画展が絵本専門店「つづきの絵本屋」(倉敷市川入)で開かれている。

 畑から顔をのぞかせる大根は太い眉毛に、への字に結んだ口。戦国武将や頑固おやじを思わせるこわもてだが、チョウや子犬、子どもたちと仲良しになりたくて、にらめっこしようとする。

 墨とアクリル絵の具、色鉛筆で描く絵は、のびやかで繊細。リズミカルな文と合わせ、裏表紙に至るまで笑いが込み上げてくる。

 幼い頃から絵や読書が好きで高校時代には、岡山市内の画塾に通ったわびみよさん。広島大文学部に進学し、同大大学院を経て社会人となる中でしばらくは絵から離れていた。

 「絵本を作りたい」となんとなく思い立ったのは5年ほど前。東京の絵本塾で学び、コンテストに応募し始めた。「にらめっこだいこん」は、絵本を活用した町づくりに取り組む和歌山県有田川町の絵本コンクール(同町教委主催)で2021年、優秀賞と町民投票による有田川賞をダブル受賞。審査員を務めた出版社「ひかりのくに」の編集者の目に留まり、昨年11月に刊行(税別980円)された。すでに重版も決まっている。

 わびみよさんにとって初のトークイベントが15日、つづきの絵本屋で開かれた。同店は岡山で暮らしていた頃からなじみにしており、埼玉県に移っても帰省のたびに足を運んでいる。絵本ファンがお薦め作品を紹介し合う名物企画「えほん夜会」にも参加してきた。

 店主の都築照代さんは「絵を見ただけで『わびみよさんだ』と分かる独自の世界を持っている。デビューだけでなく、短期間での重版もすごい」と絶賛。次作の制作を進めているというわびみよさんは「故郷の風景が私の原点。作風が『岡山っぽいね』と言われるのがうれしい。つづきの絵本屋で皆さんと語り合うのも勉強になっています」と話した。

 原画展は31日まで。午前10時~午後6時。無料。サイン本を販売している。問い合わせは同店(086―476―0415)。

トークイベントで作品について語るわびみよさん(右)と都築さん

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