箱根駅伝でネットをざわつかせた配達員さん、業界に影を落とす「2024年問題」とは 【コラム・明窓】

山陰中央新報デジタル

 年初の箱根駅伝で、テレビ中継の画面に映り込んだ激走ぶりがネット上をざわつかせた。選手たちがトップ争いを繰り広げるコース沿道を、重たそうな段ボールの荷物を抱えてひた走る宅配業者の配達員さん。

 交通規制で配送車両を横付けできず、目標タイムの指定時間に遅れてしまったのだろうか。想像するほかないが、その姿に「新年からご苦労さま」「いつもありがとう」と温かい声援の書き込みが相次いだ。

 「いいね」を押した多くの人も我が身に降りかかってくる切実な問題となれば、違う受け止め方をしたかもしれない。民間シンクタンクが公表した推計で、2025年に予測される国内の荷物量のうち約28%が、30年には約35%が運べなくなる可能性があるという。トラック運転手の残業規制強化によって危機的な人手不足となる、いわゆる「2024年問題」が影を落とす。宅配個数の増加や再配達が原因の一つとされ、配達員に「頑張って」では済まされまい。

 物流業界では貨客混載や業者間の共同配送も一部で始まっている。地方まで荷物を届ける取り組みに期待しつつ、私たち消費者としてできることもあろう。

 ネットの注文ボタンを押す前に、走る配達員の姿を思い起こしたい。急いで要る物か、受け取りの時間帯に家にいるのか、はたまた地元の店で買えないのか。物流業者だけではない、社会全体で抱える重たい課題である。

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