<社説>電気料金値上げ 特殊事情踏まえた支援を

 物価高が続く中、4月からの電気料金値上げへの危機感が県内で広がっている。 値上げ後の県内の電気料金は全国で最も高い水準になる見込みだ。産業を支え、社会活動に不可欠な電気の価格が上がれば、生活・経済の全般に負担が及ぶ。企業活動のコストがかさみ、さらなる物価上昇を招いていく。

 上京中の玉城デニー知事は27日に、負担緩和のさらなる支援を関係省庁に要請する。沖縄は広大な海域に点在する島々に電気を安定供給するユニバーサルサービスを維持する必要があり、どうしても発電コストが高くなる側面がある。政府は沖縄の特殊事情を踏まえ、県民生活への影響を最小限に抑える支援を講じてもらいたい。

 沖縄電力が申請中の電気料金は、標準家庭が現行から3473円(39.3%)増の1万2320円となっている。事業者向けも平均で50.02%の値上げを見込む。

 国は電気料金抑制のため、2月分から約2割を値引きする負担軽減策を導入した。それでも県の試算では、4月以降の値上げに伴う県内の産業全体への影響額は、国の軽減分を差し引いても月額54億円、9月までの半年間で320億円程度の上昇となる。

 民間シンクタンクの南西地域産業活性化センターも、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料の価格が10%上昇し、ガス代や電気料金などの負担が増した場合の影響を計測している。その結果、沖縄の産業全体の物価上昇率の平均値は0.51%で、全国の1.6倍の上昇だった。

 サービス業が中心の沖縄は資源価格の高騰によるコストの吸収が難しく、物価上昇に反映されやすいというのが要因だ。加えて製品を県外からの移入に頼るため、流通コストの上乗せなどでさらに物価上昇を招きやすい。

 電気料金は各方面に波及する。水道・工業用水を市町村に供給する県企業局は次年度の動力費(主に電気料金)が前年度の約1.5倍になると見込み、赤字決算に陥る可能性が出ている。連動して水道料金も上がれば、ダブルパンチで生活を圧迫する。

 1人当たり県民所得が全国最下位の沖縄で電気料金は全国で最も高く、さらなる値上げとなれば、家計の負担は一層重くなる。高齢者や生活困窮者への影響は深刻だ。

 一方で、国の財政支援に頼るだけでは根本の問題は変わらない。化石燃料の輸入に依存した構造を転換し、沖縄の高い発電コストを下げる「エネルギー地産」の実現に本腰を入れて取り組むことだ。

 原子力発電の導入は投資効果が見合わないだけでなく、そもそも県民の合意形成が図れない。再生可能エネルギーの主力化という方向性ははっきりしている。

 先進的な技術革新を促す研究支援、省エネ製品の開発・普及の促進など、県として取り組む施策は多くある。

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