写真美術館ICPでポートフォリオ展 NYで明日より開催

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

(c) Kasumi Abe

写真とビジュアル作品に特化したニューヨークの美術館、ICP(International Center of Photography 、国際写真センター)で、明日より2つの新たな展覧会がスタートする。

「Face to Face」展は、現代アメリカのポートレート撮影界では外せない3人の著名フォトグラファー、ブリジット・ラコンブ(Brigitte Lacombe)氏、タシタ・ディーン(Tacita Dean)氏、キャサリン・オピエ(Catherine Opie)氏による作品が並ぶ。

パティ・スミスやレオナルド・ディカプリオの撮影風景なども。(c) Kasumi Abe

オーガナイズは、作家のヘレン・モールスワース(Helen Molesworth)氏が担当した。

ヘレン・モールスワース氏。(c) Kasumi Abe

もう1つの「Between Friends」展では、アンディ・ウォーホルが撮影した友人の小説家、トルーマン・カポーティの写真など、20万点に及ぶICPのコレクションの中から厳選された作品が展示されている。

(c) Kasumi Abe

ポートレート撮影と言えば、スマホが浸透した昨今、撮る方も撮られる方も、その難しさを感じている人は多いのではないだろうか。

筆者は新人だった頃、日本でプロ・ミュージシャンインタビューをしていた。撮影もその多くは、私が担当していた。その時代に使っていたのはフィルムカメラ。デジタルと違って、出来上がりは焼き上がるまでわからない。相手は東京からやって来たミュージシャンで再撮なんてできないから、当然失敗は許されない。慣れないもんだからもたもたしたり、念には念を入れ多すぎるほど撮影して時間がかかったりで、誰もが知るミュージシャンをイライラさせてしまったことがある。

また旅先の街角で素敵な人を見かけたとき、写真に収めたい!と思っても、相手が見知らぬ自分にレンズを向けられどう思うか不安で躊躇したり、恐る恐るレンズを向けたことも。せっかく撮影した千載一遇のベストショットを誤ってデリートしてしまったのも忘れられない記憶。そんな数々の失敗を経て今に至るのだが、その葛藤は今も続く。

実は今日の取材も撮影ありだった。被写体は不動産ブローカーのセールスの方でノリが良く見た目も絵になるので救われたが、それでも未だ簡単なこととは思えない。毎回試行錯誤しながら、自分にとってのベストショットを手探りする日々。

フォトグラファーが撮りたいイメージと被写体が撮られたいイメージに乖離があったりするし、私自身もそうだがレンズを向けられると急に表情が強張ってしまうことがある。良い表情をもらうには、何よりフォトグラファーと被写体との信頼関係が大切だ。

相手との距離感を乗り越え、プロのフォトグラファーはどのように被写体に向かっているのか。この展覧会で、自分の目で確かめてみてほしい。

(c) Kasumi Abe
ICPが創設され半世紀。2020年に以前のミッドタウン地区から現在のダウンタウンに移った。(c) Kasumi Abe

この特別企画展は、5月1日まで。

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