「レイシャル・プロファイリング」問題から考える…適切な職務質問のあり方とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、警察官の“適切な職務質問のあり方”について、視聴者を交えて議論しました。

◆レイシャル・プロファイリングとは?

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは、"レイシャル・プロファイリング” です。

警察庁は、人種など外見を理由に職務質問をするレイシャル・プロファイリングについて初めて調査した結果を公表。2021年、4都府県警で不適切な言動が6件あったと明らかにしました。

事例としては、「外国人が車を運転しているのは珍しい」や「外国人と思い込んで在留カードの提示を求めた」などがあり、いずれも警察官側に差別的な意図はなかったが相手に不快感を抱かせたとして、担当者は「今後も適切に職務質問を行うよう指導していく」としています。

また、在日アメリカ大使館は、2021年12月、「レイシャル・プロファイリングと疑われる職務質問が日本で複数報告された」とTwitterで警告。これを受け警察庁は、職務質問の方法を指示する文書を、都道府県警に出すなどの事態となりました。

レイシャル・プロファイリングの具体的な被害事例としては、母親が日本人・父親がバハマ人というドレッドヘアの英語講師の男性は2021年1月、「ドレッドヘアの人は薬物を持っていることが経験上多い」という理由で職務質問を受け、以降、何も悪くないのに警察官が通るたびに身構えてしまうといいます。

その他にも約30年前にカメルーンから来日した漫画家の星野ルネさんは、警察官とすれ違うとほぼ必ず止められるそうで、「職質の基準を明確にしてほしい。1人を摘発するのに何十、何百の尊厳を傷つければ日本社会にもマイナスでは」と話しています。

◆必要なのは警察官の教育、そしてボディカメラも有用か

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、この解決法について「究極的には治安をもっと良くするしかない」と話します。

「外国人の犯罪率が高い」と言われることがありますが、「それは実態とかけ離れている」と指摘。2020年版の犯罪白書には「2019(令和元)年における刑法犯検挙人数(19万2,607人)に占める外国人の比率は5.0%であった(警察庁の統計による)」とあります。

難しいのは、刑法犯以外の事案。例えば、不法在留外国人など特別法犯に入る外国人は罪を犯しているわけで、そうした人たちに対してどう職務質問をするかと言えば「結局は外国人ということだけで声をかけるしかない」と大空さん。しかし、今回の問題はそうしたもの以外であり、「外国人だからということが理由になってはいけない」と訴えます。

大空さんは「もう少し価値観を別のところに置く、基準をしっかりと作った上で職務質問をしていくということをやらない限り、治安は良くならない」と主張します。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、「職務質問は、どうしても見た目というか、その他に何も情報がないなかで声をかけるので、見た目を全く無視して行うのは完全に無理だと思う」と、この問題の根深さに頭を悩ませます。

能條曰く、最近は職務質問された際に、自衛のためにその模様を撮影した動画がSNSで投稿されているケースがあるそう。そうした動画のなかには、警察官が高圧的だったり、いきなりタメ口で声をかけていたりするものもあると言い、「マイクロアグレッション(小さな攻撃性)みたいなものを含んだ言動をすることもあると思うので、(警察官も)人権教育からやることは必要だろう」と能條さん。

映像という意味では「警察官がボディカメラをつけるのもひとつの手段」と大空さんは提案。アメリカの警察官はボディカメラを装着しており、そうすることで警察官の対応が確認でき、なおかつ良い事例と悪い事例のデータ収集に繋がり「これはダメなんだなという意識が、現場の警察官にも働くだろう」とメリットを語ります。

この大空さんの提案に、XY世代のテレビプロデューサー・結城豊弘さんも「それは素晴らしい話」と頷きつつ、警察官も治安を良くするために一生懸命に尽力しているわけで、「今までやってきた経験もある」と擁護。

例えば、ある元刑事は職務質問をする基準として必ず足もとを見ていたそうで、経験からなるプロなりのチェックポイントがあり「プロはプロでそういう目線で見ている」と話します。一方で、能條さんが言うように、職務質問で声をかける際の言葉遣いや態度の悪さなどには懸念を示します。

◆職務質問を行っていく上で、今やるべきことは?

そもそも職務質問とは、警察官職務執行法(第2条)によると「異常な挙動、周囲の事情から合理的に判断して、何らかの犯罪を疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問できる」とあります。そして、2017年上半期の実績を見ると、検挙件数は10万4,675件。容疑者特定の手がかりとなったのは職務質問が18.4%で、これは取り調べや防犯カメラよりも大きい数字となっています。

これまでの議論を聞き、キャスターの田中陽南は「職務質問で、声をかけた理由を言うことをルール化すれば、『外国人だから』と言う警察官はいないと思う。理由の提示がひとつの解決策になるのかなと思う」と率直な感想を述べていましたが、番組Twitterには「クォーターですが、『日本語話せますか?』と止められ、荷物や財布まで調べられたことが何度もある」という声もありました。

グローバル化の波をどう受け止めるかも大きな問題とされるなか、能條さんは「(警察官は)いかにも日本人らしい人以外は、日本語が話せない、日本で生まれ育ったわけではないであろうという、なんとなくの感覚が染み付いてしまっている」と危惧。そして、「そこを変えていく、認識としてそうでないこともあることを理解していることが大事」と主張します。

他にも番組Twitterには「職務質問を抑制してしまったら犯罪を防ぐというのは難しいと思う」というツイートなども寄せられるなか、当番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは「(職務質問を)受ける側の意識も変わらないといけない」との声も。「任意聴取は任意に断れると解釈する人もいるが、僕は警官が任意に質問できる権利だと解釈している。職務質問も治安維持のための活動であり、治安維持の恩恵を受ける権利の代わりに警察官に協力する義務があると考えている」といった声や、「気になるのは、事件があった際にメディアで犯人が外国籍だと国籍を言うこと。それによって"外国人=犯罪”という意識が染み付いていると思う」と、メディアの伝え方に対する意見も。

メディアに携わる結城さんは、「メディアの意識も変えないといけないと思うが、やはり能條さんの言う通り、警察官の教育もしっかりとしなければいけないと思う」と言及。

大空さんは、「メディアの問題は難しい」と熟考しつつ、「ただ、この話はすごく大事で、ある種のスティグマを作っているということになる。偏見は極力減らしていく努力が必要」と述べる一方で、先のツイートにあった「職務質問自体が抑制的になってはいけないというのはまさにその通り」と職務質問の必要性を改めて訴え、今すべきこととして「警察官の教育」を提示します。

「教育をし、個人の価値観で判断していく。そして、それによって犯罪が減っていくというのが理想の姿。警察官も25万人もいて、上の世代と下の世代では価値観にも大きな開きがある。そこを埋めていくことも必要」と話していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

© TOKYO MX