NHK解説委員に初の沖縄出身者  西銘記者「基地は暮らしの問題。全国に伝えたい」

 NHK沖縄放送局の西銘むつみ記者(53)がこのほど、県出身者で初めてNHKの解説委員に就いた。地方局から解説委員に選出されるのは珍しく、NHKのニュース番組などで解説に当たっている。西銘記者は「沖縄の記者として、全国の視聴者に伝わるように沖縄戦や基地問題を発信したい」と意欲を見せている。

 NHKの解説委員は、ニュースの意味や背景を分かりやすく伝える役割を担う。それぞれに専門分野があり、西銘さんは沖縄に関する報道のスペシャリストとしてニュースを読み解き伝える。

 那覇市出身で、1992年にNHKに入局。記者として沖縄放送局や東京の首都圏放送センターで取材に当たった。沖縄戦や戦後処理問題をライフワークとし、2015年に制作したNHKスペシャル「沖縄戦全記録」は日本新聞協会賞とギャラクシー奨励賞を受賞した。

 約30年にわたる沖縄関連報道の経験が評価され、昨年7月、解説委員に抜てきされた。西銘さんは「全国に沖縄のことを広く伝えてほしいという期待が込められていると思う。沖縄の問題に関心がない人にも共感を得る取材や伝え方を模索したい」と語る。

 これまでも沖縄放送局の記者として沖縄戦や米軍基地の問題を全国の視聴者に向けてたびたび報じてきたが、そのたびに感じたのは沖縄と県外との「温度差」だったという。「米軍基地問題は本土では政治の問題と捉えられているが、沖縄の人々にとっては身近な暮らしの問題だ。日常的に基地に接していない全国の視聴者に沖縄のことを伝える難しさはあるが、暮らしの問題だという視点を大切にして伝えたい」と話す。

 基地問題のほか、沖縄戦の継承や経済格差の是正など報じたいテーマは数多くある。「見てくれた人が考えるきっかけをつくりたい。沖縄を足がかりに、事実を積み上げながら伝え続けることに意味がある」と話した。

 (赤嶺玲子)

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