〝太陽光の直接受益者〟三浦瑠麗を政策立案に関与させた官邸の大罪|山口敬之【WEB連載第23回】 1月20日、三浦瑠麗氏は「今般、私の夫である三浦清志の会社が東京地方検察庁による捜索を受けたという一部報道は事実です。私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないことではございますが、捜査に全面的に協力する所存です」とコメントを発表。本当に「まったく」「関与」していないのか?(サムネイルは「三浦瑠麗チャンネル」より)

自然環境を破壊する上海電力メガソーラー

太陽光発電については、中国製太陽光パネルを巡るウイグル人権問題や、使用後のパネルの処理など、根本的な問題がいくつも提起されている。そもそも日本の豊かな森林や里山の木々を大量伐採してハゲ山にする山間地のメガソーラー発電は、それ自体が悪質な環境破壊である。

私は昨年11月、「Hanadaプラス」の第20回連載記事「岩国メガソーラーで見えた親中ネットワーク」のなかで、上海電力日本によるメガソーラー事業がいかに日本の豊かな里山の自然環境を破壊し、地元住民の飲み水や農業を汚染しているかを詳報した。

岩国メガソーラーで見えた親中ネットワーク|山口敬之【WEB連載第20回】 | Hanadaプラス

美しい水田耕作を支えていた清流が枯渇し、岩国の地元の方々が飲み水としていた井戸や湧水は白濁しヒ素が検出された。しかし、この岩国でのメガソーラー建設工事が始まった2019年11月時点では、太陽光発電は林地開発許可制度の対象となっていなかった。

このため、ゴルフ場予定地として林地開発許可を取った土地を上海電力日本が買収してメガソーラーに転用。どのような薬剤を散布し、どのような工事を行っているのかを行政や市民が監視・管理することが出来ず泣き寝入りとなってきた。

太陽光発電事業による環境破壊が全国規模で問題になるなか、2019年 4 月、中央環境審議会は環境大臣に対して、大規模な太陽光発電事業も環境影響評価法に基づく環境アセスメントの対象事業とすべきとの答申がなされ、国レベルでの議論が始まった。

そして2020年4月からメガソーラー設置工事も環境アセスメントの対象となった。

メガソーラービジネスを強力に後押し

ところが、日本の豊かな里山を守る取り組みに真っ向から反対の立場で論陣を張り、太陽光ビジネス関係者の利益を最大化するよう様々な主張を行ったのが、〝国際政治学者〟の三浦瑠麗である。

2020年10月に始まった官邸の成長戦略会議に「有識者」として参加している三浦瑠麗は2020年12月、太陽光発電の事業者を有利にする数々の提言を行った。

国のエネルギーの半数近く(45%)を太陽光とすべきと主張した上で、「固定価格買取制度の下限設定」とか「太陽光ビジネス事業者に対する様々なペナルティの撤廃」など、露骨に夫の会社の主たる事業であるメガソーラービジネスを強力に後押しした。

成長戦略会議は、日本の今後の成長戦略を計画・立案する政府の最強の会議体のひとつだ。ここで決められた方針は国家予算の策定に大きな影響を与え、会議の提言を実現するために必要な法整備も行われる。

そして成長戦略会議の議論中でもエネルギー政策は柱のひとつである。

国のエネルギー政策のあり方を議論する極めて重要な会議の8人の有識者のうちの1人である三浦瑠麗。今回、強制捜査を受けた夫・三浦清志の会社「トライベイキャピタル」と、三浦瑠麗が代表を務める「山猫総合研究所」の所在地は同じで、シェアオフィスという形態をとりながら実態としては2つの法人は一体化していると指摘する関係者もいる。

また三浦清志が代表理事を務めていた一般社団法人「エネルギー安全保障研究所」(2021年6月閉鎖)には三浦瑠麗の実妹が理事を務めるなど、太陽光ビジネスは「三浦家のファミリービジネス」といっても過言ではない。

そんな三浦瑠麗が「山猫総合研究所」の名で、太陽光発電を強力に推進する様々な提言を行ったのである。

太陽光発電によって巨額の利益を得ている人間の妻が、国の重要な会議で太陽光発電事業者を有利にするような提言をする。これはもはや品性下劣とか厚顔無恥とかいう倫理の問題ではすまない。

個人の利益・利得のために国の政策や予算を捻じ曲げようとしたとも言えるのであって、厳正な調査と処罰が必要である。そして、こうした太陽光発電の直接的受益者にエネルギー政策に関して発言させる機会を与え続けてきた政府の罪も極めて深い。

これまでの三浦瑠麗の発言や提言のなかに、三浦瑠麗個人や三浦清志のビジネスを利するようなものがどのくらいあったのか、それが予算や法律の制定、行政業務に影響を与えたケースを洗い出し国民に示すのが、政府の最低限の責務である。

異様な提言と自民党山口県連からのカネ

2020年12月の三浦瑠麗の提言は、夫を含む太陽光ビジネスの事業者を有利にする具体的な提案のオンパレードだが、そのなかにひとつ異様な提言がある。

10.ゴルフ場跡地利用における環境アセスの簡易化

根拠法令等「環境影響評価法」
一度開発されたゴルフ場の跡地を利用した太陽光発電の事業計画に関しては、環境アセスメントを免除または簡易化すべき。太陽光発電とゴルフ場設備の差異に絞った簡易な環境アセスメントの実施や手続きの免除/省略を認めるべき。

三浦瑠麗は、ゴルフ場跡地をメガソーラーに転用する場合、環境アセスメントを免除すべきと主張したのである。

三浦の主張に従えば、ゴルフ場として林地開発許可を取った後に太陽光事業に転用された岩国メガソーラーは環境アセスメントを免除されることになる。

太陽光発電事業者が事業用地として狙いをつけているのは、ゴルフ場に限らない。耕作放棄地や廃業したリゾート開発予定地、人里離れた公有林・民有林など、まとまった広さを確保できる土地であればどこでも構わない。

それなのに三浦瑠麗はなぜゴルフ場に絞って「環境アセスメントを免除すべき」という提言を行ったのか。岩国メガソーラーの事業者である上海電力日本や関連事業者からの請託を受けて、極めて具体的な提言を行った可能性がないか、徹底的に調べる必要がある。

この視点から、私はある政治資金の流れに注目している。

三浦瑠麗は2017年、自民党本部と自民党山口県連から合わせて62万7580円のカネを受領している。なかでも山口県連からの受け取ったのは講師料名目で54万円と突出して多い。

2017年といえば、上海電力日本が山口県岩国市でのメガソーラー事業参入を具体的に検討し始めた時期だ。

そして2020年10月、林芳正に極めて近く、衆議院鞍替えの立役者である柳居俊学(山口県議会議長)が、岩国メガソーラーの施工業者である戸田建設幹部を地元選出の岸信夫前防衛大臣に無理矢理引き合わせたことがわかっている(詳細は月刊『Hanada』2023年3月号を参照)。

一方、三浦瑠麗は自身が司会を務めるインターネット番組で対談するなど、林芳正との個人的な交友関係を隠していない。

林芳正、柳居俊学、三浦瑠麗……。

岩国メガソーラーを推進する親中派の政治家と〝国際政治学者〟が、上海電力日本の岩国メガソーラーという個別案件を有利にするために官邸の成長戦略会議の議論を捻じ曲げようとし、そこに金銭が動いていたのだとすれば、これは立派な疑獄事件となる。

(文中敬称略)

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山口敬之

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