長崎県初「DX認定」 日本ビジネスソフトはAI活用、行政書士法人シトラスはメタバース“出勤”

 企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進される中、ソフトウエア開発などを手がける日本ビジネスソフト(佐世保市)、行政書士法人シトラス(長崎市)が、経済産業省が進める「DX認定事業者」に今月、選定された。長崎県で初の認定となる。

 DX認定制度は、国が策定した指針を踏まえデジタル化によってビジネスを変革する準備が整っている事業者を認定する制度。DX推進をPRするためにロゴマークを使用したり、金融機関による支援を受けることができるなどのメリットがある。2020年にスタートし、現在、全国で574社が認定されている。

メタバースを活用しリモートワークを実現した行政書士法人シトラスの松岡さん夫妻=長崎市千歳町

 日本ビジネスソフトは本社を含む4拠点があり、従業員数は約140人。昨年4月、DX推進に向けて技術管理室を新設した。拠点ごとの組織体制を見直し、情報を一括管理してDX化を進める体制を整えた。新型コロナウイルスの影響も背景に、ウェブ会議やグループウエアシステムを活用し、業務の効率化を図っている。
 また、新たな戦略として、各種帳票や労務管理、決裁情報、メールなどをデータベース化。その蓄積データを基に、人工知能(AI)を活用して業務の効率化や商品開発につなげるシステムを構築した。DX戦略を実現するための人材育成も進め、DXに関する認定資格の取得も推進していく。
 小原丈治社長(47)は「コロナの流行で世の中が大きく変化する中、我が社も事業を継続させるために手探りで対応してきた。ソフトウエア開発を事業主体とする企業として、責任を持って変革を進め、地域社会や地元企業のDX化を支援していきたい」と話している。

オンラインでのミーティングなどDX化が進む日本ビジネスソフト=佐世保市三川内新町(同社提供)

 シトラスは、代表行政書士の松岡いずみさん(40)と事務局長の哲司さん(40)夫妻が設立した行政書士事務所。育児の合間に行政書士の資格を取ったいずみさんが5年前、自宅の1室から始め、現在は長崎市内のビルに事務所を構え、昨年8月に法人化した。
 2人とは別に、行政書士資格を持つ女性従業員1人が勤務。仮想空間「メタバース」上のバーチャルオフィスに“出勤”し、ほぼリモートで仕事をしている。夫妻と同じく従業員も子育て中。哲司さんは「通勤時間などのロスも減り、高い能力を持つ人が働く環境が整うのも大きなメリット」と強調する。
 このほか、行政のウェブサイトから補助金に関する記述を自動で抽出するプログラムを構築したり、ウェブファクスの導入でペーパーレス化を徹底したりして、効率化と労働時間を短縮。実体験を基に、デジタル技術を駆使した業務効率化や新事業を提案する仕事も増えている。いずみさんは「いずれも少ない投資でできる。今あるシステムや技術を最大限に活用するために、こちらも生活や仕事のスタイルを変えていくことがDXの肝。取り組みを県内の事業者に伝え、広げることで県内のDX推進につながれば」と語る。


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