<社説>教員不足で学級統合 「学ぶ権利」を保障せよ

 教員不足の弊害が子どもたちに及んでいる。学級担任を確保できず、担任不在の児童生徒を他のクラスに振り分ける「学級統合」が、県内で21件あることが県教育委員会の調査で分かった。 一人一人を尊重する35人学級や、習熟度に合わせた少人数授業が一部で成立していない可能性がある。公教育で学校によって学習環境に差があってはならない。

 教員不足の要因である学校現場での働き方を抜本的に見直す必要がある。同時に文部科学省、都道府県、市町村の教育行政には、憲法が定める「ひとしく教育を受ける権利」を子どもたちに保障するという観点を持ってもらいたい。

 教員不足は県内だけでなく全国的な課題だ。文科省の2021年度調査では、21年5月1日時点で不足する教員は小中高特別支援学校合わせて2065人、1591校に上った。定数に対し0.25%不足している。

 小学校は理科などの専科教員や、学校全体の教育計画を立案する教務主任らを代替の担任に充てる例が多い。

 結果として、教育計画の停滞や学習環境の劣化が想定される。子どもの学習権を保障するには、教員が過重労働にならざるを得ず、病休者も増える。悪循環の連鎖が断ち切れないのが現状といえる。

 岸田文雄首相も26日の参院本会議で、教員不足に関する質問に「危機感をもって受け止めている」と表明した。だが鈴木俊一財務相は少子化に伴う自然減などを挙げ、教員定数合理化の方針に基づき「必要な措置を講じる」と述べるにとどめた。

 不足の要因が、教員の労働環境にあるのは間違いない。経済協力開発機構(OECD)によると、年間の授業時間数は日本の小学校が747時間(加盟国平均791時間)、中学615時間(同723時間)、高校511時間(同685時間)となっている。だが週単位の総労働時間は加盟国平均が38.3時間で、日本の中学校教諭は56時間、小学校教諭は54.4時間だ。

 日本は授業時間こそ少ないが、法定労働時間に占める授業の割合は加盟国の平均46%に対し、日本は36%しかない。日本の教員は授業以外に多くの時間を費やすのだ。

 教員養成学部を持つ大学への働きかけや採用試験の前倒しなど行政は解消策を探るが、その場しのぎでしかない。

 教員のなり手不足解消へ必要なのは、長時間労働が当たり前とされる学校の改革が最優先だ。部活動指導の地域移行や報告など提出物の簡略化といった課題は明確である。

 県教育委員会は4月の組織改編で「働き方改革推進課」設立を表明した。課題解決へ、教育行政が実効策を打ち出せるかが焦点だ。

 子どもたちの学びを阻害する教員不足は、国民的課題である。人材育成を怠れば、将来世代につけが回ってくることを肝に銘じたい。

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