地震「長周期」も緊急速報 マンション高層階、安全確保へ

気象庁=東京都港区

 気象庁は2月から、緊急地震速報の発表対象に、超高層ビルや石油タンクを揺らす「長周期地震動」を加える。短周期の「震度」に反映されないゆっくりとした大きな揺れが予想された場合もいち早く知らせ、その影響を受けやすい14~15階建て以上のマンションやオフィスビルなどの安全確保につなげる。首都圏などで進むビルの高層化を踏まえた取り組みだ。

 大規模地震の際に発生する長周期地震動は、あまり弱まらずに伝わる性質があり、遠方にも被害や影響を及ぼす。軟弱な地盤で増幅し、長時間継続する場合もある。

 東日本大震災で大阪市内の震度は3だったが、震源から700キロ以上離れた同市住之江区の大阪府咲洲庁舎(高さ256メートル、55階建て)では約10分間も揺れが継続。エレベーターの停止や閉じ込め、内装材の破損などが相次ぎ、長周期地震動の問題が注目された。

 対策として気象庁は2013年、震度とは別に長周期地震動の階級(1~4)を設定。その観測結果をウェブサイトで公表するなど危険性を周知してきたが、新たに緊急地震速報に活用し、居住者らに安全確保を促すことにした。

 運用は今年2月1日正午に開始。地震の発生直後に長周期の揺れも即座に計算し、階級3以上が見込まれる地域に対して緊急速報を発表する。ただ、地震時に提供する情報が増えると混乱を招く恐れもあるため、速報の中では「長周期」と表現せず、これまでの緊急速報と同様に「強い揺れ」への警戒を促す内容にとどめるという。

 気象庁の解析では、00年以降で長周期の階級3以上に相当した地震は33回あった。今後は緊急速報の対象となるが、その頻度は「年に1~2回程度」と同庁地震津波防災推進室の担当者。「長周期による緊急地震速報の際に取るべき行動はこれまでの速報時と変わらない。慌てずに身の安全を守ってほしい」と呼びかけている。

© 株式会社神奈川新聞社