「ステルス2」と「パラダイム」の性能をマトリックス図で比較

話題の「ステルス2」と「パラダイム」全7モデルのヘッド性能をマッピング

1月の発表から、ゴルフ界を大いににぎわせているテーラーメイド「ステルス2」とキャロウェイ「パラダイム」シリーズ。ドライバーは計7モデルがそろい、メーカーの垣根を越えて自分に合う最適な一本を見つけたいゴルファーは多いだろう。そこで今回は、レッスンスクール「ゴルフテック」三田貴史コーチが作成したマトリックス図とともに、各シリーズの傾向や各モデルの特性について解説する。(※可変ウエイトモデルはニュートラルの状態に設定)

「ステルス2」はシリーズ内で違いが明確 「パラダイム」は高打ち出し低スピンに

縦軸は「バックスピン量」で、上に行くほどスピン量が多くなり、下に行くほど少なくなる。横軸は「球のつかまり」で、左に行くほどつかまりが良く、右に行くほど抑えられた性能となる。比較の参考として、2022年モデルのテーラーメイド「ステルス ドライバー」とキャロウェイ「ローグ ST MAX ドライバー」を加えた。

まず三田コーチは、「ステルス2」シリーズの傾向について「全体的に左右慣性モーメントの値が向上しており、ボールが上がりやすく打点ブレによる曲がり幅が少なくなった印象です。前作よりも3モデルの特性がきれいに分かれているのでヘッド選びが簡単になったと思います」と分析する。図を見ても、3機種がそれぞれつかまりやすさとスピン量の特性が異なる位置に配置されており、シリーズ内で差別化が図られていることがうかがえる。

一方の「パラダイム」シリーズは、前作「ローグ ST」シリーズと比較した上で「全体的に重心の位置が低くなっているので、よりスピンレスな球が打ちやすくなっています。それでいて前作同等、またはそれ以上の慣性モーメント(以下MOI)を持たせているので、左右の曲がりにも強い印象です」と三田コーチ。重心位置を低くすることで打ち出し角が高くなると同時に、高MOIで曲がり幅を抑える作りとなっている。

カーボン素材の使用量増加による影響は?

2023年モデルは、両シリーズともヘッドにおけるカーボン素材の容量が増加し、金属の使用量が減少。生まれた余剰重量をヘッド周辺に最適配分することでMOIを最大化している。この傾向について三田コーチは「ボールフライトに影響する点としては、MOIの値が増えたことにより打点ブレによる左右の曲がりが抑えられ、ボールも上がりやすくなった。またフェースの設計がリニューアルされ、広範囲での初速感が得られやすくなった印象です」と解説する。

「ステルス2」を前作「ステルス」と比較

ボールが上がりやすく扱いやすくなったという「ステルス2」シリーズ

「ステルス2 ドライバー」は、前作の「ステルス ドライバー」と比べると、マトリックス図ではバックスピン量が多い位置に配置されている。ヘッドの特性については「打点ブレに強くなり、ボールが上がりやすくなった」と三田コーチ。前作よりもスピン量が入るためにハード過ぎることはなく、扱えるゴルファーの幅は広そうだ。

「ステルス2 HD ドライバー」は、前作「ステルス HD ドライバー」と比べてライ角が2度アップの58度に設定されている。この新設計については「同社のワールドモデルではあまり見られなかった重心角の大きいアップライト設計で、高MOIヘッドでもボールのつかまりが非常に良く、球も上がりやすくなっています。“つかまらない・上がりにくい”という面で敷居が高いと感じていたゴルファーにもマッチしやすいと思います」と評価。また、シリーズ3モデルの中で唯一ネックが0.25インチ短い設計となっており「前作よりも明らかにつかまりやすく、打ち出しで右に抜けにくくなってます」と補足した。

ともに低スピン設計の「ステルス2 プラス ドライバー」と前作「ステルス プラス ドライバー」を比べると、今作はスピンが入りやすい性能にシフトした。「バックスピン量に関しては前作よりも若干入るようになったと思いますが、それより『ステルス2 HD』と真逆の位置付けになったという印象が強い。重心角もフラットで、打ち出し方向は左に行きにくい設計です」と解説した。

「パラダイム」を「ローグ ST」と比較

よりスピンレスなボールが打ちやすくなった「パラダイム」シリーズ

スタンダードの「パラダイム ドライバー」は、前作の「ローグ ST MAX ドライバー」と比べると、図の中で「バックスピン量が少なく、つかまりすぎない」位置に配置されている。これについて三田コーチは「前作よりもフェース上での重心位置がトウ側に寄ったため、ドローの打ちやすさという点では前作に軍配。今作は移動式のウエイトが付いているので、ドローポジションに調整すると前作のようなつかまり感が得られやすくなると思います」と説明した。

「パラダイム X ドライバー」のライ角は60度と、前作「ローグ ST MAX D ドライバー」と同じくアップライトになっている。フェース上での重心位置は、ヒール側にあった前作と比べて今作はセンター寄りになっているという。「重心の位置で見た場合、シリーズの中で『X』が一番スタンダード。ドローの“D”がネーミングに付かなくなったように、左に曲がるというより、より真っすぐ打たせたいという意図が強くうかがえます」と話した。重心がトウ側からセンターに寄ると、ギア効果によってボールがつかまりやすくなる。

全7モデルの中で最もつかまりやすいと位置づけられたのは、軽量設計の「パラダイム MAX FAST ドライバー」。クラブの総重量はSフレックスで約280gとなっており、「ヘッド重量が軽いので振りやすく気持ち良くつかまってくれる」とのこと。前作の「ローグ ST MAX FAST ドライバー」と比べて低重心になっているため、低スピンの弾道が打ちやすくなっている。

最もバックスピン量が少ない位置に配置されたのは、ヘッド体積450ccと小ぶりの「パラダイム トリプルダイヤモンド ドライバー」。三田コーチは「前作の低スピンモデル『ローグ ST MAX LS ドライバー』との比較では左右MOI値が少ないため、曲がりにくさ・直進性では前作ですが、今作のほうが重心は低くスピンレスの弾道が打ちやすいです」と分析した。また、「ローグ ST トリプルダイヤモンド ドライバー」と比べると「MOIの値は増えていますが、重心位置は下がっているため、より低スピンで曲がらないヘッドと言えます。またヘッドの操作性、コントロール性が高いところも今作の特徴」だという。

最適なモデルを見つけるには?

三田コーチによると、今回の7モデルはいずれも直進性が高く曲がりにくいヘッド性能だという。ステルス2シリーズの中から選ぶ際には、「ボールが上がりやすく扱いやすくなったが、各モデルによって打ち出し方向が異なるので注意してほしい」とのこと。試打する際には打ち出し方向に注目し、自分の持ち球との相性をチェックすると良いだろう。一方、パラダイムシリーズについては「スピンレスになり、つかまりやすいというより、ニュートラルでしっかりたたいていける印象です」と説明した。

その中から最適な一本を選ぶには、「プレーヤーに適した打ち出し角度やバックスピン量と各モデルの特性を合わせて、最適な弾道を探ってみるといいかと思います」と指南した。最新ドライバーを検討する際は、まず自分のスイングをしっかりと把握することが大切。その上で、今回のマトリックス図をクラブ選びの参考として役立ててほしい。

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