H&M、循環型ファッションを学べるメタバース立ち上げへ

Image credit: H&M

H&Mはこのほど、ファッションと循環型社会について学べるメタバース(仮想空間)「Loooptopia (ルーープトピア)」を立ち上げた。米オンラインゲーム運営「Roblox(ロブロックス)」に開設されたH&Mのメタバースは没入型ゲームで、参加者はリサイクル素材などの素材・模様を選んでオリジナルの衣服をつくることができる。H&Mはゲームを通して、循環型ファッションの実現に必要なリサイクル素材・衣服について伝えていきたい考えだ。

H&Mアメリカでカスタマー・アクティベーション&マーケティングの責任者を務めるリンダ・リー氏は「H&Mの洋服やアクセサリーを身に着ける人たちはバーチャル空間・デジタルな世界に費やす時間がますます増えている。今回のメタバースを通して、H&Mでは既存、そして将来の顧客とつながる新たな方法を探ることができる。今後数年にわたり、急速に拡大するバーチャル・拡張現実の流れの中に機会を探り続けていく」と語る。

「H&M Loooptopia Experience」では、社会的な相互作用やミニゲーム、スタイリングセッション、異世界、イベントなどの要素が満載の没入型3Dメタバースの世界を体験できる。プレイヤーがその世界に入り込む没入型体験を通して、数百万人がつながるプラットフォーム「ロブロックス」の中の楽しくクリエイティブな環境で、デジタルアイデンティティー(オンライン上のアイデンティティー)を体験しながら、ファッションと循環について学ぶことができるのだ。

H&Mはこれまで持続可能で循環型のビジネスを実現する過程で困難にぶつかることもあったが、素材の使用や製造過程でのイノベーションを持続的に行ってきた。そして今、その心意気をバーチャル世界の住人にも届けようとしている。

H&Mがメタバースにつくる世界の中心には、プレイヤーたちが遊ぶさまざまな空間につながる活気に溢れた広場がある。参加者はその空間でミニゲームやライブイベントなどに参加しながら、いろいろな素材を集めて4万点以上のファッションアイテムをつくることができる。

そして、自身のアバターにオリジナルの服を着せ、アクセサリーを身に付けさせ、ダンスの動きや音楽、特殊効果を付けるなどして、独自のランウェイパフォーマンスをつくることが可能だ。また、友達と洋服を交換したり、自撮りをしたり、互いの最新作を褒め合ったり、古い服をリサイクルし、希少なアイテムを手に入れ、ランウェイショーでスターになることもできるのだ。

連携するメタバーススタジオ(製作会社)「Dubit」のグローバル・ファッション・ディレクターであるジェマ・シェパード氏は、「Dubitのメタバース・グローバル・ファッション・ディレクターであり、初のメタバース・ファッション・スタイリストとして、ファッション産業のサステナビリティの重要性に焦点を当てた、驚くべきファッションの世界が創り出されたことに非常に興奮している。H&Mのメタバースが生んだ世界は、経験を通して知識を得てもらうことで、将来世代に対してファッションが安全なものであると証明するもの。拍手を送りたい」と話した。

H&Mが立ち上げたメタバースは、企業・ブランドが手がける楽しく、エンターテイメント性と教育的要素のある方法で、プレイヤーがサステナビリティというテーマに携わることができるよう設計された仮想空間の最新事例といえる。

昨年10月には、世界最大のポテト製品メーカー「マッケイン・フーズ」(カナダ)がロブロックスのメタバースゲームに参入。ゲーム「未来の農場(Farms of the Future)」の内容は、土壌の健全性を高め、生物多様性を証明し、気候変動の被害から回復する農場のレジリエンスを高めるリジェネラティブな(環境再生型)農法でジャガイモを栽培し、フライドポテト製品「Regen Fries(リジェネフライズ)」を作るというものだった。マッケイン・フーズは2030年の終わりまでに、世界中のジャガイモの栽培面積の100%をリジェネラティブな農法で行うことを掲げる。人や地球にとってより良い食料システムに転換する取り組みの一環として若い消費者への教育があると語っており、メタバースは戦略実現の手段の一つとして活用している。

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