1人だけ異次元...“ベンジャミン劇場” 9人抜きで1位、復路3位に大貢献 郡市町対抗駅伝

宇都宮Aの選手をかわして先頭に出る壬生8区のベンジャミン(左)=29日午後1時25分、壬生町

 29日に行われた第64回栃木県郡市町対抗駅伝競走大会で、壬生町地域おこし協力隊員を務めるケニア出身のガンドゥ・ベンジャミン選手(31)が地元を走る8区の8.83キロで圧倒的なスピードを披露。初出場ながら9人抜きで復路10位から1位に浮上し、25分25秒の区間記録で壬生の復路3位に大きく貢献した。日大4年だった10年前の箱根駅伝2区で12人抜きした実力は健在。「とても楽しかった」と涼しい表情で汗を拭った。

 1人だけ異次元の走りだった。トップから1分31秒差でたすきを受け取るといきなりエンジン全開。「最初から1位まで上がるつもりだった」。スタート直後に続けて2人を抜き去り“ベンジャミン劇場”の幕が上がった。

 毎日約35キロを走り込む。地元では誰もが知る存在だ。沿道に詰めかけた町民からの「頑張れ」の声には走りながら笑顔で手を振って応えた。「すごい応援だったし、すごいサポートになった」とペースを落とさず1人、また1人と寒風を切り裂くように抜き去った。

 残り1キロ過ぎ、宇都宮Aの平山大雅(ひらやまたいが)(筑波大)を外側から追い抜き先頭に。平山は「まだ余裕と思って後ろを向いたら、もう背後にぴたりと付いていて驚いた」と苦笑い。中継所に飛び込んで町民の祝福に包まれたベンジャミンは「箱根駅伝を思い出しました」。自身10年ぶりのたすきリレー。仲間、町民との絆に喜びをかみしめた。

 2020年8月の協力隊員採用後、ランニング指導などで町内の競技力向上の一翼を担ってきた。昨年12月からは、自ら主宰して走りながら英会話を学べる教室を開始。子供たちに走り方、関節の動かし方を教えつつ英語でコミュニケーションを図るなど触れ合う場を増やしている。

 新年度以降も隊員として活動を継続する見込み。地元の応援に心を動かされ郡市町駅伝への思いも強くなった。「今回の走りは70%。悪くはなかった。もっと練習して来年は100%の走りをしたい」。身も心も弾むようなトップレベルのスピードを、これからも野州路で見せていく。

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