東京電力も値上げ申請−−原発再稼働による値上げ抑制効果はどの程度あるのか?

最近、オール電化の家庭で電気料金が10万円を超えた、といった電気代の高騰による高額な電気代の請求に悲鳴をあげる投稿がSNSで話題となっています。

そんななか、1月23日(月)に東京電力が、また1月26日(木)に北海道電力が、それぞれ経産省に電気料金の引き上げを申請しました。昨年12月5日(月)の記事に掲載したように、東北電力、中国電力、四国電力、沖縄電力、北陸電力の5社に続き、7社目となります。

東京電力が開示した資料を読み解いてみました。


東京電力、11年ぶりの値上げ申請

東京電力は、家庭向けの電気料金(規制料金および自由料金)を対象として、2023年6月1日(木)より料金見直しを行います。国の認可をもとに価格を設定する、「規制料金プラン」については平均29.31%の値上げとなります。また、2016年に始まった電力自由化により、電力会社が自由に設定できる「自由料金プラン」においても、平均5.28%の値上げを実施する、としています。

資料の中には、規制部門の料金見直しで標準的な使用量の家庭の電気料金は28.6%の値上げで、値上げ前(旧料金)9,126円が値上げ後(新料金)11,737円になるとしています。東京電力が料金の値上げを申請するのは、東日本大震災直後の2012年以来となりますが、当時は旧料金6,973円に対し新料金7,332円と5.1%の値上がりでした。今回の値上げ率の大きさが異常な事がわかります。

では、なぜこのような大きな値上げになるのでしょうか?

まずウクライナ情勢等を背景に、LNGや原油、石炭などの燃料価格の高騰や円安が継続している事です。また、電力の自由化で発電部門と小売部門が取引する卸電力取引市場価格も急激に高騰した事などが要因です。

燃料価格の高騰に伴い、東京電力は2022年9月分以降、規制料金は燃料費調整の上限に到達しており、2023年2月分は仮に上限がないとした場合と比べると約7円/kWh乖離しており、この水準が続くと東京電力エナジーパートナー(東電EP)の負担額は2023年度で約2,500億円となる見込みです。

画像:東京電力「規制料金値上げ申請等の概要について(抜粋版)」より引用

国会で議論される原子力発電所の再稼働

料金値上げの発表と同時に2023年3月期の業績予想も公開し、連結最終損益は3,170億円の赤字に転落、東電EPは燃料費調整単価の上限到達等の影響から経常赤字が5,020億円を見込むとしています。東電EPは純資産も急減しており、この状況が継続すると資金調達に支障が生じるおそれがあり、電気料金の値上げを実施させて頂くとしています。

東京電力が今回値上げ申請をすることで見直した総原価を前回(2012年〜2014年)と今回(2023年〜2025年)と比較すると、石炭CIF($/t)が145.9から381.8に上昇し、LNGCIF($/t)が860.5から1090.8に上昇、為替が78.5から140.1に円安が進行し、年平均で6,135億円増加するとしています。この指標は2022年8月から10月の平均値を参照しており、直近よりは原料安、円高となっているものの、依然として規制料金への転嫁上限を上回る状況です。

また、原子力の利用率も原価算定の前提として、柏崎刈羽原子力発電所については2023年10月から順次稼働するものと仮定して算出しています。再稼働時期について、現時点で具体的な決定ではないものの、同社は柏崎刈羽原子力7号機は2023年10月に、6号機は 2025年4月にそれぞれ再稼働すると仮置きした運転計画を織り込んでおり、 再稼働が実現すれば年間で3,900億円程度の値上げ抑制が可能としています。

先週1月23日(月)から通常国会が開会され、岸田首相は施政方針演説の中で最重要課題と位置づけた子ども・子育て政策に加え、原子力発電所の活用拡大や防衛力強化を推進すると発言しました。今国会において原発の運転期間を60年超に延ばすため、原子炉等規制法などの改正案が提出されました。また、2022年に岸田首相は次世代革新炉の開発・建設なども指示を出しています。

2011年の東日本大震災によって、原発再稼働への賛否はあると感じます。しかし、このまま電気料金が上昇していくと、企業がベースアップをしても景気浮揚は望めないと思います。

今一度、原発再稼働の議論をする時期だと切実に感じています。

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