“持病の悪化が要因か” 長崎県内 コロナ死者、月別最多 専門家「治療薬の有効活用を」

 新型コロナウイルスに感染して死亡した人が今月だけで140人台に達した。オミクロン株への置き換わりで重症化率は下がったとされるが、昨年1月の流行第6波以降、桁違いに感染者が増え、死者数も増え続けている。専門家に第8波の現状や感染症法上の分類が「5類」になった場合の課題などを聞いた。
 1月に死亡が発表された147人(29日時点)は全員が50代以上。90歳以上が63人で全体の42.9%、80代が36%と続き、70代を合わせると96.6%を占める。
 長崎大学病院感染症医療人育成センター長の古本朗嗣教授(臨床感染症学)は「純粋な新型コロナウイルス感染症による肺炎より、感染を契機に合併した慢性疾患(慢性心不全、慢性腎不全など)の悪化や誤嚥(ごえん)性肺炎などの合併が死亡に関連している」と現状を説明する。さらに高齢者の場合、「人工呼吸器や人工透析などの集中治療を希望しない、または実施困難な人も多く、症状緩和を主体とした治療になることも(死亡の)一因と考えられる」と話す。
 昨年9月の全数把握の簡略化をきっかけに陽性でも届け出ない人が増えている点については「リスクがあるのにもかかわらず、医療機関を受診しなければ、早期の診断、治療が行われず重症化する懸念がある」と危惧する。
 政府は5月8日に新型コロナウイルスを現在の2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げる方針。専門家の多くは理解を示すが、若年者に比べ重症化リスクが高い高齢者を「どうやって守っていくか、対策が必要」との声も聞かれる。
 県医師会の森崎正幸会長はワクチンや治療薬が開発され、重症化予防に効果が出ている点を評価しつつ、「治療薬を予防的な投与にも使えるようにするなど、もっと有効活用ができないか」と述べる。インフルエンザの治療薬タミフルは予防にも活用されているという。

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