人口減地域で「地方創生の核」に “県立高校の魅力化” 県教委、市町、学校が連携

空き店舗でカフェを開き、地域住民らにケーキなどを提供する高校生=島原市内

 深刻な人口減少に陥っている長崎県。子どもの減少に伴い公立小中学校の統廃合が進む中、県立高校の在り方も離島半島地域を中心に課題となっている。大石賢吾知事は2023年度の県政最重要テーマに「子ども施策」を掲げ、県立高の魅力化を主な取り組みの一つとする。県教委は各市町と連携し、県立高を「持続的な地方創生の核」として生かす体制づくりを進めている。
 「高校がなくなれば地域の衰退につながる。どうやって学校と行政、地域、民間が一緒に子どもたちの教育や支援ができるかを考えていかなければ」
 1月17日、南島原市役所の一室。松本政博市長の発言には危機感がにじんだ。中﨑謙司県教育長や地元県立高の校長らと顔を合わせたキックオフミーティングには、教育担当ではない市総務部長や市地域振興部長らも参加。各校の現状や地域の課題などについて意見を交わし、高校と地域を共に活性化する方針を確認した。
 高校をより魅力的にして入学者を増やす。そうすれば地元に定住する世帯数が安定し、関係人口の維持や増加につながる。生徒は多様な触れ合いを通じて自分の可能性に気づき、地域の担い手として成長する-。県教委はこうして地域が活性化する好循環を生み出そうと、22年度から離島半島の市町を中心に、地元の首長や教育長、校長らとの協議の場を持っている。

県立高校魅力化のイメージ

 その背景には、学校の存続が危ぶまれるほどの深刻な少子化がある。
 県教委の県立学校改革推進室によると、県内の現在の中学3年生は約1万2千人だが、21年に本県で生まれた赤ちゃんは8862人で戦後初めて9千人を割った。つまり、15年後には中学3年生が約3千人減少し、県立高に限れば約53学級(1学級40人)分が減る計算となる。
 22年度の全日制の定員に対する生徒の充足率は81.5%にとどまり、全54校のうち定員を満たしたのは9校にすぎない。半島地域に絞って見ると、全19校が定員割れし充足率は67.3%。離島地域は全13校中12校が定員に達せず、充足率も61.8%に低迷した。

 県教委には21年度から10年間の第三期県立高校改革基本方針がある。それによると、全日制の1学年2学級以下の小規模校は、入学者数が定員を大きく下回れば、学校ごとに市町、地元関係者らと活性化協議会を設ける。初年度は西海市の西彼杵高、対馬市の上対馬高と豊玉高、佐世保市の宇久高の4校に設置。それぞれ中学生向けの情報発信などに力を入れている。
 この協議開始から3年目以降も、定員の半数割れが2年続けば、統廃合を検討する。ただ県教委担当者は「再編ありきの数の議論ではなく、生徒にとって何がいいのか、高校がどうあるべきか、市町と一緒に考えていきたい」としている。

県教委、南島原市、地元高校の関係者が意見を交わしたキックオフミーティング=同市内

 島原市内の県立高5校は22年度、共に活動する「共創プロジェクト」を始動。昨年10月と12月に、アーケードの空き店舗で5校の生徒がカフェやマルシェ(市場)を開いた。カフェの運営とケーキ作りは島原農業高、看板や小物製作は島原工業高、コーヒーカップやケーキ皿製作は島原特別支援学校、PR動画の作成は島原高、情報発信や特典のアイデアは島原商業高-とそれぞれの特色を生かした。市が周知などに協力し、地元住民でにぎわった。
 市担当者は「初めての取り組みだが、商店街の真ん中で地域住民と交流しながら各校の魅力を発信することは地域活性化につながる」と手応えをつかみ、引き続き各校との連携に意欲を示す。県教委担当者は「市や高校と協力する一つの形になった。今後もっと磨きをかけていきたい」としている。

© 株式会社長崎新聞社