KDDIなど8者が協力、秩父市中津川地内でStarlinkを活用したドローン定期配送を開始

同取り組みは、2022年9月に土砂崩落が発生し、物流が寸断された秩父市中津川地内の地域住民への冬季期間の生活支援が目的。2022年10月25日に秩父市とゼンリンが締結した「緊急物資輸送に関する連携協定」をもとに、賛同企業6社が加わり「& プロジェクト」として連携・実施される。

ドローン定期配送の実現により、中津川地内へ食品や日用品、医薬品などを短時間で配送することが可能となるとしている。

現在、ドローンによる物資の配送先となる中津川地内へアクセスするには、一部の緊急車両などの通行のみ許可されている森林管理道金山志賀坂線を通行する必要があるが、冬季は降雪や凍結のため通行が非常に困難となるという。

また、当該地域の地形の特性上、モバイル通信が不安定な環境であるため、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を活用してauのモバイル通信環境を確保し、ドローンの遠隔自律飛行による物資の配送を実施。食品や日用品など最大約5kgの物資をドローンで複数回配送し、中津川地内の住民の冬季期間の暮らしに貢献するとしている。

ドローン定期配送の概要

  • 実施日:2023年1月26日~3月末日 1週間に1回(木曜日)のドローン配送
  • 実施エリア:埼玉県秩父市中津川地内
  • 取扱商品:食品、飲料、生活雑貨、医薬品など
  • 使用機体:AirTruck(エアロネクストと株式会社ACSLが共同開発)

関係者・体制図

全国各地でドローン物流の実証・サービス実装を行うゼンリンが、プロジェクトの全体統括を担当し、技術面・配送面のノウハウを持つ各社と共に、体制を構築した。

配送フロー

  • 住民は、電話などで事前に商品を注文
  • コープみらい・ウエルシア秩父影森店、ファミリーマート道の駅大滝温泉店が、注文商品をピックアップ
  • 各社トラックで道の駅大滝温泉まで配送
  • ちちぶ観光機構が、各社の注文品を個人ボックスごとに箱詰め
  • 注文商品をドローン離陸地点まで配送
  • 注文商品をドローンで配送
  • 中津川地内の区長が注文商品を受け取り、各世帯まで商品を配送

「&プロジェクト」の命名に込めた想い

プロジェクト名には、"決して (A)あきらめずに、(N)中津川地内の (D)ドローン配送の実現を推進し、住民生活の安全・安心の確保を支援し、地域の安堵(AND)に貢献する"という想いを込めているという。今回、このビジョンに賛同する8者が連携し取り組みをスタートすることになったとしている。

2023年1月26日に実施した記者発表会の様子

Starlinkを活用したモバイル通信とドローン配送のシステム構成

中津川地内のドローン離発着地点には、操作者などの作業者を配置できない上に、崩落地手前の地点からは中津川地内の離発着地点を目視で確認することもできないという。そのため、中津川地内までの飛行、機体の離発着、荷下ろしのすべてを遠隔操作で実施する必要がある。

そこで、同取り組みでは、以下の製品・サービスを組み合わせたシステムの構築を行った。

システム構成のイメージ
  • Starlinkの活用:
    衛星ブロードバンドの「Starlink」を活用した、「どこでも、素早く、広い範囲」にauエリアを構築するソリューション「Satellite Mobile Link」により、映像を用いたドローンの遠隔制御も可能にするauのモバイル通信環境を確保した。
  • スマートドローンツールズとAirTruckの活用:
    「スマートドローンツールズ」の運航管理システムと物流専用ドローン「AirTruck」を組み合わせることにより、遠隔制御による機体の飛行、離発着、荷下ろしを可能とした。

※スマートドローンツールズ:KDDIスマートドローンが開発した、ドローンの遠隔制御や自律飛行、映像のリアルタイム共有を可能とするシステム

今後の展望

通信不感地域におけるドローン定期配送の運用ノウハウを蓄積し、中山間地域や災害時などの通信環境が不安定な状況においても、ドローン配送を実現可能とするソリューション構築を検討していくという。これにより、全国のさまざまな地域・環境下でのドローン配送の社会実装を目指すとしている。

▶︎KDDI株式会社

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