【連載】World Baseball Classic あの瞬間をもう一度①

今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック。第5回となる本大会には20ヵ国のスター選手が「ベースボールの世界王者」をかけた熱戦を繰り広げる。本シリーズでは2006年の初大会から撮り続けているカメラマン田口有史氏が捉えた、代表の母国を歓喜で打ち震わした歴史的な瞬間を紹介する。写真を振り返りながら、感動で泣け叫んだ瞬間、悔しさでうなりを上げた瞬間を思い出そう。

今年3月に第5回目を迎えるワールド・ベースボール・クラシック。その第1回大会は17年前の2006年。MLB選手も参加するベースボールの本当の世界一決定戦。という掛け声のもと始まった。

今回、アメリカ代表が初めてドリームチームを結成したかのように言われるが、実は第1回大会も、デレック・ジーター、ケン・グリフィー、ロジャー・クレメンスなど、錚々たるメンバーが揃っていた。しかしながら、トーナメントで果たして真の実力がトーナメントで決定できるのかなど、今にして思えば様々な部分において手探りの様子で始まった感じは否めなかった。

実際のところ、当時マリナーズ所属のイチロー選手は参加したものの、ヤンキースに所属していた松井選手は参加を見送り、一次ラウンドの行われた東京ドームもチケットの売れ行きという面では出足が遅かった。

そんな状況の中で始まった第1回ワールド・ベースボール・クラシックだったが、日本が一次リーグ、二次リーグでアメリカや韓国に敗れるなど苦しい展開をしながらも、イチロー選手の勝利への執念とリーダーシップに導かれて準決勝で韓国にリベンジ。キューバとの決勝戦の頃には日本中の注目を集めるようになった。

この写真は決勝戦の9回表。5対6と一点差に詰められた中、タイムリーヒットで川崎宗則を生還させたのち、福留孝介のレフト前ヒットで生還するイチロー選手。2塁から一気にかけてきて、キャッチャーのタッチをかいくぐって珍しくヘッドスライデンングをする姿に、イチロー選手の優勝に賭ける熱い気持ちと、野球の確かな技術を見て感動しながら撮影したのを思い出す。

見事に優勝を果たした日本代表。この頃は、撮影まわりの仕切りが混乱していたが、喜ぶイチローさんにトロフィーを抱えながら目線をもらって撮影することができた。

日本の戦いぶりと優勝による熱狂が、ワールド・ベースボール・クラシックを成功へと導き、国別対抗の世界一決定戦として、第2回大会以降へと続いていくことになった。

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田口 有史(たぐち ゆきひと)/日系アメリカ人の親戚がいたこともあり幼少の頃よりMLBに興味を持ち、中学生の頃からよりのめり込む。アスリートになれなかった為写真を始めて、MLBを撮りたくてアメリカ留学。そのままフリーランスとして活動をして30年近くMLBを撮影。全30球団毎年必ず撮影することを自身に課して1年の半分近くをアメリカで過ごす。オフィシャルフォトグラファーとして予備予選なども撮影しているので、おそらく世界で最もWorld Baseball Classicの試合を撮影している。写真:田口有史

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