バイオマス燃料用木材 一瞬で脱水 岡山大など新技術 コスト大幅減

圧搾機で木材を搾る実験(岡山大提供)

 岡山大の大原利章助教(免疫病理学)らの研究グループはバイオマス発電の燃料用木材製造で、木に含まれる水分を効率的に減らす新技術を開発した。ローラー式圧搾機を使って木から水分を押し出すことにより、一瞬で脱水が終わる。製造にかかるコストと時間を大幅に削減できるといい、再生可能エネルギーの普及につながる技術として期待される。

 開発した手法では、サトウキビに使うローラー式圧搾機(高さ1.1メートル)を一部改良して活用する。木材を細長く加工し、木の中で水分を通す導管の向きに合わせてローラーを当て、水分を一気に押し出して脱水する。

 バイオマス発電の燃料用木材は燃焼効率を高めるため、伐採直後の木で約50%ある水分量を35%以下に減らす必要がある。グループはスギを使って実験し、目標を達成できることを確認した。

 現在の製造工程では、天日干しや電気乾燥が使われている。天日干しでは長ければ1年程度の時間がかかる。電気乾燥は多くの電力が必要で、コストが高い。木材チップを上からつぶして水を抜く方法もあるが、機械が数億円と高額。ローラー式圧搾機は数百万円程度と安価で、製造時間が短い利点がある。

 医学研究者の大原助教にとっては、畑違いの分野になる。木材に含まれ、抗ウイルス効果があるリグニンを長年調べており、抽出にサトウキビの圧搾機を利用していた。偶然、研究内容を知ったバイオマス発電プラントの製造企業が呼びかけ、共同開発してきた。

 今後、実用化に向けて実証実験に入り、ローラーにかける木材の種類や厚み、大きさなどを検証していく。大原助教は「再生可能エネルギーの新たな可能性を示せた。バイオマス発電事業者と連携して実証実験し、実用化につなげたい」と話す。

 今回、木材から絞った水からリグニンが採れることも確認。抗ウイルス製品や化粧品に活用できる可能性があるという。

 研究成果は昨年10月、国際学術誌のオンライン版に掲載された。

圧搾する前(上)と後の木材の断面。圧搾後は、導管が押しつぶされ、水分が抜けている
大原利章助教

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